魔女の喫茶店

たからだから

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――死の使いと魔術師編――

真夏の海

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 ミアとギルは自宅で準備を済ませ、エミリアが来るのを待っていた。
 ミアは髪の毛をつむじ辺りで高く結っては、ソファーに座りコーヒーを飲んでいた。ギルは青い半袖のYシャツに、白のジーンズを履いてはテレビを見ていた。
 海に行く当日、ミアの自宅に集合して魔法車マジッカーで行こうという事になった。ノーマジから魔法車マジッカーは見えない為、不自然にならない様にしなければとミアは考える。
 窓から見える空は、晴天だった。
「……俺、海行くの久しぶりだなあ」
「そうなの? って、言っても私1回しか言った事ないのよね」
「え、マジ?」
「……大マジよ」
 ミアはプールには行ったことはあるものの、海に行ったのは学生時代の1回だけである。その1回で溺れ、海には入れなくなってしまった。
 驚きの表情で此方を見てくるギルにコーヒーカップを手にしたまま、小さく笑う。

 インターホンの音が部屋に鳴り響くと、ミアは杖でドアを開けようとした。普段ならしないが相手が分かっているのだから、と気にせず杖を振った。
「ミアー! お待たせー!」
「じゃあ、荷物車に詰めて」
「は~い」
「ミアちゃんの荷物も持って行くよ」
「あら、ありがと」
 手に持っていた筈の荷物をギルの手に優しく取られると、少し驚きながらも礼を言う。そして、エミリアの荷物も持っているのだから男らしい部分があると感心する。
 ギルは特に、女性には優しい印象であり彼が女性から人気が高い事も納得出来る。だが、それは絶対に言わない。

 3人は駐車場へ向かうと魔法車マジッカーのトランクへ荷物を詰め込む。
 魔法車マジッカーは空へ走る時だけ見えず、地面に触れている時はノーマジにも見える。見た目は丸みあるダークブラウンの可愛らしい車だが、浮かした瞬間見えなくなる。
 見えなくなる瞬間はあまり見られたくない為、目眩しの呪文でいつも誤魔化しているのだ。
「……よし、全部乗せたよ~」 
「じゃあ、乗って。……エミリア、道案内は頼んだわよ?」
「エミリアちゃんに任せなさい!」
 自信満々に胸を叩く姿にミアは小さく笑うと、運転席に乗り込んだ。助手席には道案内担当のエミリア。後部座席には緩い笑みを浮かべたギルが座っている。
 ミラーで確認したミアは魔法車マジッカーを空に走らせた。



 ――――
 ――――――


 ミアの自宅から魔法車マジッカーで約、45分程走らせた場所にあるのはイルビアで1番綺麗な海、ウォー・ブランビーチだ。
 ターコイズブルーに輝く海と真っ白な砂浜の奥はなだらかな丘になっていて、丘でピクニック気分を味わえたりする。
 浜辺の端には波で削られたのか、凹凸おうとつが激しい断崖がある。
「わ! やっぱり人多い!」
「夏休みだもの」
「……噂通り綺麗なとこだね~」
 魔法車マジッカーからも分かる程の海の綺麗な輝きに、それぞれ自然と笑みが零れる。ミアは駐車場を見付けると空から空いた場所を探す。
「……空いてるかしら?」
「……んー、あ! ミア! あそこ空いてる!」
 エミリアの指さす方を目を細めて確認すると、確かに空いていた。ミアは降下しながら杖を使わず目眩しの呪文を掛ける。ノーマジからは普通車が車を停めている様に見えていた。


「んー! 海の匂いだー!」
「あ、ちょっと! 迷子にならないでよ?」
「ミアちゃん、場所適当に決めて良い?」
「ええ、任せたわ。……先に着替えて来るわね」
「は~い」
 トランクから荷物を取り出したギルが浜辺に向かうと、広い浜辺と海を見渡しながら目を輝かせるエミリアに思わず笑ってしまう。まるで、小さな子供の様だった。
「ほら、エミリア着替えに行くわよ」
「あ、待ってー!」
 更衣室がある場所へ足を進めるミアの背中を慌てて追い掛けて行くと、運良く部屋が1つ空いておりそこに2人で入る。
「……ミア頭良い」
「何が?」
「服の下に着てるの頭良いー! その手があったね!」
「……わりと皆やってるわよ?」
 今まで素直に着替えていたのか、とミアは苦笑いを浮かべながら学生時代着替えるのが遅い理由が分かり、納得した。
 ミアは服だけを脱ぐと、エミリアは手に持っていた小さな鞄から水着を取り出し着替えていた。その間にミアは結った髪の毛を整え直していた。
「よし! 着替えたよ!」
 笑顔のエミリアが着る水着は買い物をしていた時に買っていた物だ。実際に着ているのを見ると、とても可愛らしくエミリアに似合っているとミアは微笑む。

 更衣室から出ると浜辺に足を進めて行く。そんな2人の履くビーチサンダルは色違いだ。エミリアは水着の色に合わせて、白の厚底ビーチサンダル。
 ミアは黒の水着な為黒の同じ厚底ビーチサンダルだった。
「……あ、いたいた」
「ギルくーん!」
 ギルは背後から聞こえる声に振り向くと、思わずミアを凝視してしまう。
 白い肌に黒い水着はハイネック部分がクロスになっている、大人の雰囲気漂う水着だった。
「……? 何そんなに見てきて……」
「……似合ってるなあ、って」
「……それはどうも」
 ミアは素直に褒められると頬を赤らめ顔を逸らすと、その姿にギルもエミリアも笑う。真正面から褒められると恥ずかしくなってしまうミアは、褒められるのは嬉しいが苦手でもあるのだ。

 どうやらギルもジーンズの下に水着を着ていたのか、上半身は裸で青色の水着はとても似合っていた。1番ギルの視線を集めているのは、細身なのに綺麗に割れた腹筋だろう。
「……ギルくんって筋トレとかしてるの?」
「ん~、暇な時にね」
「聞いた!? 暇な時に筋トレしたらこんなに割れるんだってよ!?」
「……エミリア興奮し過ぎだから」
 苦笑いを浮かべながらもギルは自宅では、時々筋トレをしているのを見ていた。何の為にしているのかと聞いたが、何となくと言われたのを思い出す。

「そうそう! ここのビーチってね海がすっごい、綺麗でしょ? だからシュノーケリング出来るんだって!」
「……私泳げないから一緒に出来ないわよ?」
「ん~、それなら俺に掴まって潜る?……深い所は行かないし、そこは安心して?」
「……信用するわよ?」
「大丈夫、俺に任せて~」
 自信に満ち溢れた笑みで見つめてくるギルをミアは少し、不安そうな顔で見つめ返した。



 ――――
 ――――――



「……ぜ、絶対手、離さないでよ!」
「離さないよ~」
「……え、待って! そこから深いんじゃないの!?」
「まだ大丈夫だよ~」
 エミリアは向かい合って海に入っていく2人を見つめながら、小さく笑う。慌てるミアと緩い笑みのまま話すギルの光景は、エミリアにとって面白いものでもあった。
 普段怖がる事の無いミアの姿はとても貴重で、可愛いとエミリアは微笑む。
 3人はシュノーケリング用のマスクを装着しており、エミリアは先に水に顔をつけては泳いでいた。

「ミアちゃん、手を握ったまま水に顔をつけてみて?」
 ミアは小さく頷きながらシュノーケルを口にくわえ、顔を水につけると、ゆっくりと手を引かれ思わず目を強く瞑ってしまう。まるで安心しろ、とでも言うように優しく手を握り返されると体を預けるように足を地面から浮かしては、静かに瞼を開ける。
「……!」
 目の前に広がる光景にミアは驚く。
 まるで宝石のような輝きと色に、海の中はこんなにも綺麗なのかと感動を覚える。人馴れした様なカラフルな魚達、濁りのない綺麗な水は太陽の光で輝いている。
 ギルを見れば優しく笑っており、ミアも小さく笑い返しては海の中をじっくりと見ていた。
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