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第一章 癒しの矢
9 薬草採取の約束
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ギルドに入れたのだから、難易度の高い依頼を受けたい。村にも仕送りをしなければいけないし、稼がなくては!
マイルズと共にボンドのギルドハウスに入ると、昨日と変わらず歓迎ムードで、大勢に声をかけられた。もみくちゃにされて依頼どころではない、と早々にギルドハウスを後にする。
「どうする?」
「どうするって……。金がないから働かないと」
「マイルズが囮になれ! その間に俺が良さそうな依頼を選ぶから」
「逆のがいいんだけど」
「つべこべ言わずにさっさと入れ」
渋るマイルズの背を押して、中に入らせた。しばらくして様子を見る。マイルズはギルド員に肩を組まれて、骨付き肉を口に入れられていた。朝から重いな。
俺は気配を消して、依頼が貼ってあるボードを眺める。当然だが、宿屋の一階で受けられる依頼より、報酬が跳ね上がっていた。それだけ厳しいのだろう。
Bランクで受けられる中で、魔物討伐の依頼を選んで手に取った。
「カイさんおはようございます」
声をかけられ隣に目を向ける。リオが人好きする笑顔でこちらを見上げていた。
「ああ、おはよう」
「依頼を受けるんですか?」
「金がないから働かないと。リオは?」
「僕はルーカスさんと護衛依頼に行ってきます」
また一緒に戦えたらと思っていたから、少し残念だ。
「気をつけてな」
「はい、カイさんも!」
リオは頭を下げると、扉の前に立っていたルーカスさんに向かって駆けていく。ルーカスさんと目が合って頭を下げた。ルーカスさんは目を細めて片手を上げる。二人が出ていくのを見送った。
ルーカスさんは入団試験の時のプレッシャーで、少し苦手意識があった。表情も豊かではなく、感情が読みにくい。でもリオが話しかけて、口元を緩めるのを見た。話してみれば、印象が変わるのかもしれない。
手に持っている依頼を受付に持って行き、手続きをしてもらう。
こっそり外に出ると、すぐにマイルズが転がるように飛び出してきた。
「大丈夫か?」
「みんな容赦がない。朝飯食べたって言ったのに、めちゃくちゃ食べさせられた」
「動けるか? 魔物の討伐だぞ」
「近いのか?」
「近いな。街を出てすぐの平原で群れを作っている、イノウリって猪に似た魔物を倒せって」
マイルズは大きな息を吐き出して、頬を両手で叩く。
「戦いながら消化させる!」
「頑張れ」
話しているうちに道具屋の前に着いていた。オープンの札が掛かっている。
「寄ってもいいか? シーナにボンドに入ったって報告したい」
「いいよ」
ドアベルを鳴らして店に入る。
「いらっしゃいませ。あっ、カイくんとマイルズくんいらっしゃい。二人ともボンドに入れたんだってね。おめでとう」
シーナは顔を輝かせ、自分のことのように喜んでくれた。
「昨日のことなのに、情報早いな」
「だってここはボンドが治めている道具屋だよ。買い物に来たボンドの人たちが、みんなカイくんとマイルズくんの話をするから」
「そうなんだ。シーナちゃんもボンドのサブメンバーだって言ってたよね?」
「うん、私は戦えないけど、治癒術で怪我を治したり、常備薬を作ったりしてお手伝いをしてるよ」
「シーナとも一緒に依頼を受けたりしたかったけど、難しいのか?」
普段は道具屋を営んでいるし、サブメンバーの役割がいまいち分からない。
「私は入団試験を受けていないから、ボンドの依頼は受けられないんだ。宿屋の一階にある依頼なら大丈夫なんだけど」
「試験受けてないのに、紋章が入ってんの?」
「ボンドに協力しているお店の人は、紋章を入れてるよ。私とマナは治癒術が使えるし、薬草に詳しいから。隣のアレンも入ってるけど、アレンは剣の腕は立つし、素材の目利きもできる。でもアレンは試験を受けていないけど、スカウトされて正式なメンバーになったよ」
「それってすごいことなの?」
「私が知る限りでは、スカウトはアレンだけ。昔からボンドに協力している武器屋だし、信頼関係を築いていたからだね。アレンは武器屋を継いだら、サブメンバーに戻るって言ってたけど」
剣が使えて武器も作れて、素材の良し悪しも分かって便利な収納ボックスも開発する。スペック高すぎだろ、アレン。
「あっ、そうだ。私が依頼を出すこともあるよ。薬草を取りについてきて欲しいって。いつもチアが受けてくれるけど、カイくんとマイルズくんも都合が合えばどうかな?」
「行きたい! シーナも行くんだろ?」
「うん、紛らわしい毒草とかもあるから、薬草を取るのは私が教えるよ。薬草採取の他に、護衛をお願いしてるの」
シーナの護衛なんて、いつでもやりたいに決まっている。
「次はいつ行くんだ?」
「一週間後だよ」
「その依頼ってもう出してるの?」
「まだだよ。いつも当日の朝に出してるの。チアがそうしてって言うから。私からチアにカイくんとマイルズくんも一緒に行くって言っておくよ」
シーナと話していると居心地が良すぎて魔物討伐のことを忘れかけていた。「そろそろ行こう」とマイルズに言われてハッとする。
いってらっしゃい、とシーナが花の咲いたような笑顔で手を振り見送ってくれた。それだけで弓の精度が上がったような気がするから、シーナはすごい。
マイルズと共にボンドのギルドハウスに入ると、昨日と変わらず歓迎ムードで、大勢に声をかけられた。もみくちゃにされて依頼どころではない、と早々にギルドハウスを後にする。
「どうする?」
「どうするって……。金がないから働かないと」
「マイルズが囮になれ! その間に俺が良さそうな依頼を選ぶから」
「逆のがいいんだけど」
「つべこべ言わずにさっさと入れ」
渋るマイルズの背を押して、中に入らせた。しばらくして様子を見る。マイルズはギルド員に肩を組まれて、骨付き肉を口に入れられていた。朝から重いな。
俺は気配を消して、依頼が貼ってあるボードを眺める。当然だが、宿屋の一階で受けられる依頼より、報酬が跳ね上がっていた。それだけ厳しいのだろう。
Bランクで受けられる中で、魔物討伐の依頼を選んで手に取った。
「カイさんおはようございます」
声をかけられ隣に目を向ける。リオが人好きする笑顔でこちらを見上げていた。
「ああ、おはよう」
「依頼を受けるんですか?」
「金がないから働かないと。リオは?」
「僕はルーカスさんと護衛依頼に行ってきます」
また一緒に戦えたらと思っていたから、少し残念だ。
「気をつけてな」
「はい、カイさんも!」
リオは頭を下げると、扉の前に立っていたルーカスさんに向かって駆けていく。ルーカスさんと目が合って頭を下げた。ルーカスさんは目を細めて片手を上げる。二人が出ていくのを見送った。
ルーカスさんは入団試験の時のプレッシャーで、少し苦手意識があった。表情も豊かではなく、感情が読みにくい。でもリオが話しかけて、口元を緩めるのを見た。話してみれば、印象が変わるのかもしれない。
手に持っている依頼を受付に持って行き、手続きをしてもらう。
こっそり外に出ると、すぐにマイルズが転がるように飛び出してきた。
「大丈夫か?」
「みんな容赦がない。朝飯食べたって言ったのに、めちゃくちゃ食べさせられた」
「動けるか? 魔物の討伐だぞ」
「近いのか?」
「近いな。街を出てすぐの平原で群れを作っている、イノウリって猪に似た魔物を倒せって」
マイルズは大きな息を吐き出して、頬を両手で叩く。
「戦いながら消化させる!」
「頑張れ」
話しているうちに道具屋の前に着いていた。オープンの札が掛かっている。
「寄ってもいいか? シーナにボンドに入ったって報告したい」
「いいよ」
ドアベルを鳴らして店に入る。
「いらっしゃいませ。あっ、カイくんとマイルズくんいらっしゃい。二人ともボンドに入れたんだってね。おめでとう」
シーナは顔を輝かせ、自分のことのように喜んでくれた。
「昨日のことなのに、情報早いな」
「だってここはボンドが治めている道具屋だよ。買い物に来たボンドの人たちが、みんなカイくんとマイルズくんの話をするから」
「そうなんだ。シーナちゃんもボンドのサブメンバーだって言ってたよね?」
「うん、私は戦えないけど、治癒術で怪我を治したり、常備薬を作ったりしてお手伝いをしてるよ」
「シーナとも一緒に依頼を受けたりしたかったけど、難しいのか?」
普段は道具屋を営んでいるし、サブメンバーの役割がいまいち分からない。
「私は入団試験を受けていないから、ボンドの依頼は受けられないんだ。宿屋の一階にある依頼なら大丈夫なんだけど」
「試験受けてないのに、紋章が入ってんの?」
「ボンドに協力しているお店の人は、紋章を入れてるよ。私とマナは治癒術が使えるし、薬草に詳しいから。隣のアレンも入ってるけど、アレンは剣の腕は立つし、素材の目利きもできる。でもアレンは試験を受けていないけど、スカウトされて正式なメンバーになったよ」
「それってすごいことなの?」
「私が知る限りでは、スカウトはアレンだけ。昔からボンドに協力している武器屋だし、信頼関係を築いていたからだね。アレンは武器屋を継いだら、サブメンバーに戻るって言ってたけど」
剣が使えて武器も作れて、素材の良し悪しも分かって便利な収納ボックスも開発する。スペック高すぎだろ、アレン。
「あっ、そうだ。私が依頼を出すこともあるよ。薬草を取りについてきて欲しいって。いつもチアが受けてくれるけど、カイくんとマイルズくんも都合が合えばどうかな?」
「行きたい! シーナも行くんだろ?」
「うん、紛らわしい毒草とかもあるから、薬草を取るのは私が教えるよ。薬草採取の他に、護衛をお願いしてるの」
シーナの護衛なんて、いつでもやりたいに決まっている。
「次はいつ行くんだ?」
「一週間後だよ」
「その依頼ってもう出してるの?」
「まだだよ。いつも当日の朝に出してるの。チアがそうしてって言うから。私からチアにカイくんとマイルズくんも一緒に行くって言っておくよ」
シーナと話していると居心地が良すぎて魔物討伐のことを忘れかけていた。「そろそろ行こう」とマイルズに言われてハッとする。
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