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3話
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連れて行かれたのは人気の少ない家だった。
周りを騎士に囲まれ、その威圧感が少し苦しい。
相手は王族だ。
平民がその顔を見ることは許可がなければ許されない。
部屋に入ると頭を下げて王女様を迎える。
相手が何をしたいのかがわからない。
でも大方の予想はつく。
勇者のことだろう。
だけど私になんの話があるのか?
今だってまだ十分に気持ちの整理もできていないのに‥‥。
「顔をあげなさい。特別にこの私と話し、顔を見る栄誉を与えるわ。」
傲慢さが滲み出た耳触りの悪い声が聞こえる。
「ありがとうございます。」
王女様は予想通り綺麗だった。
でも人を品定めするような視線に人を見下す傲慢な態度。
王女様への印象ははっきり言うと意地の悪い、悪女のようだった。
真っ赤な唇にきつい視線、まるでアレンの好みとは逆ね。
「それで、お話とはなんでしょうか?」
「勇者アレンのことよ。」
「はぁ‥‥。」
「彼に近づかないでちょうだい。彼は私の婚約者ですわ!」
「こ‥‥こんやく‥‥。」
「アレンが魔王討伐の褒美に望んだの。お父様‥‥陛下の承諾も得ているわ。ずっと思い合っていた人とようやく結ばれるのっ!!あなたアレンの過去の女なのでしょう?」
「‥‥っ?!」
「いつまでも未練がましくしがみついていないでよ。王国中が私たちを祝福しているわ。それに水を刺すようなことはしないでよね?ああ、でもあんまりにもあなたが哀れだからこれは手切れ金だと思って受け取りなさい。そして二度とアレンの前に姿を現さないで!!」
そう言って投げ渡された麻袋は重く音を立てて地面に落ちた。
「手切れ金など‥‥必要ありません!!どうか最後にアレンに会わせてくださいませんか?!どうしても‥‥どうしても彼と最後に話がしたい!!」
「ふふふっ、わかっていないのね。これはお願いじゃなくて命令よ。あなたがアレンに会うことは二度とない。もしアレンの前に姿を現してごらんなさい。一生後悔することになるわよ?アハハハッ!!そういえばあなた、村に家族がいたわねぇ?妹さんはお元気かしら?」
ぞくり。
寒気がして背筋が震えた。
先ほどまでのにこやかだった表情は消え、冷たく突き放し瞳には嗜虐の色が浮かんでいた。
それに命令に従わなければ家族が‥‥。
「命令には従います。この国を出ます。だからお願いします!!家族はどうか‥‥巻き込まないでくださいっ!!」
「ふふっ、ええいいわよ。あなたが約束を違えない限り危害は加えないわ。でも肝に銘じておきなさい。約束が破られた時‥‥あなたが失うのは大切な家族よ。さあ今すぐに出ていきなさい!この国から。ではごきげんよう。もう二度と会うことはないでしょうね?」
王女様が出て行ってから放心したように動けなかった。
けれど王女様についていた騎士が私を急かす。
なんの準備もなく追い出されてしまった‥‥。
騎士にそのまま国境まで送り届けられ、私が確かに国境を越えこの国から出ていくまでその監視のような視線が途切れることはなかった。
周りを騎士に囲まれ、その威圧感が少し苦しい。
相手は王族だ。
平民がその顔を見ることは許可がなければ許されない。
部屋に入ると頭を下げて王女様を迎える。
相手が何をしたいのかがわからない。
でも大方の予想はつく。
勇者のことだろう。
だけど私になんの話があるのか?
今だってまだ十分に気持ちの整理もできていないのに‥‥。
「顔をあげなさい。特別にこの私と話し、顔を見る栄誉を与えるわ。」
傲慢さが滲み出た耳触りの悪い声が聞こえる。
「ありがとうございます。」
王女様は予想通り綺麗だった。
でも人を品定めするような視線に人を見下す傲慢な態度。
王女様への印象ははっきり言うと意地の悪い、悪女のようだった。
真っ赤な唇にきつい視線、まるでアレンの好みとは逆ね。
「それで、お話とはなんでしょうか?」
「勇者アレンのことよ。」
「はぁ‥‥。」
「彼に近づかないでちょうだい。彼は私の婚約者ですわ!」
「こ‥‥こんやく‥‥。」
「アレンが魔王討伐の褒美に望んだの。お父様‥‥陛下の承諾も得ているわ。ずっと思い合っていた人とようやく結ばれるのっ!!あなたアレンの過去の女なのでしょう?」
「‥‥っ?!」
「いつまでも未練がましくしがみついていないでよ。王国中が私たちを祝福しているわ。それに水を刺すようなことはしないでよね?ああ、でもあんまりにもあなたが哀れだからこれは手切れ金だと思って受け取りなさい。そして二度とアレンの前に姿を現さないで!!」
そう言って投げ渡された麻袋は重く音を立てて地面に落ちた。
「手切れ金など‥‥必要ありません!!どうか最後にアレンに会わせてくださいませんか?!どうしても‥‥どうしても彼と最後に話がしたい!!」
「ふふふっ、わかっていないのね。これはお願いじゃなくて命令よ。あなたがアレンに会うことは二度とない。もしアレンの前に姿を現してごらんなさい。一生後悔することになるわよ?アハハハッ!!そういえばあなた、村に家族がいたわねぇ?妹さんはお元気かしら?」
ぞくり。
寒気がして背筋が震えた。
先ほどまでのにこやかだった表情は消え、冷たく突き放し瞳には嗜虐の色が浮かんでいた。
それに命令に従わなければ家族が‥‥。
「命令には従います。この国を出ます。だからお願いします!!家族はどうか‥‥巻き込まないでくださいっ!!」
「ふふっ、ええいいわよ。あなたが約束を違えない限り危害は加えないわ。でも肝に銘じておきなさい。約束が破られた時‥‥あなたが失うのは大切な家族よ。さあ今すぐに出ていきなさい!この国から。ではごきげんよう。もう二度と会うことはないでしょうね?」
王女様が出て行ってから放心したように動けなかった。
けれど王女様についていた騎士が私を急かす。
なんの準備もなく追い出されてしまった‥‥。
騎士にそのまま国境まで送り届けられ、私が確かに国境を越えこの国から出ていくまでその監視のような視線が途切れることはなかった。
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