死神に呪われし少女

詩音

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偽りの少女

久しぶりの外出

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 死神が聞き出した情報で自分にとって一番いいことがわかった。だが、それを悟られてしまうと行動を移す可能性がある。そのため嫌だけど、今は我慢してみんなを遊びに誘った。心配されないようにするため腕の傷を隠すため夏だが、長袖を着ている
 翔は大翔と会って早々すぐにゲーセンに走っていった。年が変わってもあの二人はあの日から変わらずにいた。
「まったくあの二人は。翔って漢字がついてるだけであそこまで同じになるもんかな。でもまさか翔からでなく奈々から誘ってくるなんてね。こういうの久しぶりでうれしい。」
「翔が来たんだから私も頑張ろうと思って。あとあの時はごめん」
 翔が消えたとしても二人の中には残る思い出。それを残すことが一つのやることだった。自分の中には残らない功績だけど他の人に残ればここにいた事実が証明できる。身勝手な行動だけど。それでもみんなの中に翔を残していたかった。
 それと記憶がなくなったらまた普通の生活に戻る。その時の自分がどこまで覚えているのかわからない。もしかしたら高校の思い出全てがなくなっているかもしれない。だから今できることは終わらせようと思った。それの一つとして六花に謝る。一年前呪われた自分だったとしても自分がやったこと。本当ならもう会うことはないようなことをした。でも、六花は私を待っててくれた。私がどんなに過去を消そうとしている自分だとしても謝りたい気持ちくらいはあった。
「別に気にしてないよ。だって奈々だもん。私もごめん。誰よりもつらい人が奈々なのわかっていたのに。でも、そんなあなたから逃げてしまったの」
 どう言葉で表現すればいいのかわからなくなった。きっとこれなら、こんなにやさしい人なら私の記憶が完全になくなってもまた仲良くしてると思う。やっぱり一人で過ごし時間よりこうやって話すほうが楽しいな。守るためにしなほうがいいのはわかるけど、やっぱりみんなといると楽しいな。
(それで、また誰かを不幸にするんだ)
 !!今の声死神?でも姿が全くない。六花にも聞こえてないようだけど、どこに。
(いつだってそうだ。人の優しさにあらがえず、一年耐えても再会したらまた同じ方向に)
 誰、誰なの。私にしゃべりかけているのは。
「奈々大丈夫?」
「え、なでもないよ」
 六花の声が聞こえるとさっきの声はなくなった。死神とは違う声な気がする。でも知っている声な気がした。
「っま。一年の穴埋めでしますか。とりあえずあのバカ二人のもとに行こうか」
 バカ一人と大バカの翔のもとに向かった。
「ったく一年間ブランクあるのになんでこうお前強いんだよ」
 二人はホッケーをしていた。点は圧倒的に翔のほうが上。
「なめんな。こっちはお前らと遊んだ日も最近の出来事なんだよ」
 翔は私たちと違い一年の時が止まった感覚だ。多分成長していないのを考えてもきっと死んだ直前の姿で蘇ったと考えられる。
(一人になりたいんでしょ?)
 またさっきの声がする。
(そうやって他人を守るために自己犠牲しているの楽しい?)
 聞こえてくる言葉一つ一つがむかつく。
「だれなの!!」
「どうしたんだよ。まさか一年ぶりの外でもう疲れたの?それとも長袖のせい?」
 また六花の声のおかげでさっきの声は聞こえなくなった。私の声が通ったということは死神の作るような空間を作っているわけではないようだ。
「奈々がいいなら。2対2やろうや。奈々はまだ調子悪そうだし無理させるわけにいかねーし翔とな」
 兄妹タッグといえばいいのに。でも、翔とかなるべく目的が気付かれないようにしないと。今の翔は表情一つで隠していることすらもばれそうだし。
「頼むぜ奈々」
「うん。必ず勝とうね翔」
 翔は死なないんだし、別にいいよね。呪いって生きてる人だけだよね。
(兄には甘い妹さん)
 なんなのこの声。私が何かいい方向に考えると悪いように言ってくる。無視しよ。声が聞こえても考えないように。
「奈々いくよー」
 六花は優しく私のほうに飛ばしてきた。試合やってるんでしょ?私が手を抜く必要なはないよね。
「六花あまいよ!!」
 こんな純粋に心から笑ったのはいつぶりだろう。悪くない。私から呪いが消えたらいいのにな。
「えーい!!」
 私の打ったパッドは二人の間の穴に入った。
「ばっか。なーに奈々からとられてるんだよ」
 つい本気で打ってしまった。体力のない私はその一発でもうへとへとだ。
「奈々はチャンスの時だけ。俺はチャンスをつくる」
 体力のない私をカバーすように私の範囲は片側のゴールの穴がないところだけにした。これなら当てるだけでもいい。
「ほとんど二対一だし負けてらんないよ」
 二本目からはバンバン打っている。動体視力すら衰えていて反応できない。
「行くぞ奈々!!」
 ジャストで止めて私にパスをした。翔のおかげで見えるそして打てる。
「はぁー!!」
 思いっきり打った。けど今回は大翔君にとられた。
「いった。こいつはガチのブランクあるのに何でこんなに強く打てるんだよ」
 一応パソコンは触っていたし腕だけならなんとかなる。
「待てよ。なぁ翔。お前死んでたら体力って」
「もちろんそんな概念ねーぞ疲れたって感覚があっても別に走れる」
「じゃー勝てねーじゃねーかよ。まさか、反射神経えぐいのも?」
「なんかゆっくり見えるんだよな」
 身体能力が全体的に上がっている。死んだ翔すごい。
(永遠に過去を消すことはお前にはできない)
 まただ。無視するんだ。
(お前は臆病だ)
 無視無視無視!!
(きれいごと言って強気になったふりして)
 聞き耳を立てるな。死神の罠だ。
(そうやってみんなの人形として生きるんだ)
 ある意味人形なのかもしれない。まともに自分を動かすことができない。今だって演技をしているといいたいのにこころからたのしんでる。みんなの思い出のために頑張ってるはずなのに前みたいに戻りたいって思い始めてる。翔を見てから私の考えがどんどん変えられてしまう。
(翔なんていなければいいのに)
 この言葉が聞こえたとき私は理解した。これは死神なんかじゃない。あいつは確かに呪いとか最悪な存在。でも他人を馬鹿にするようなことは言わない。どちらかというと私を利用しての行動しかやらない。だったらこの声はもう一択だ。
「奈々お前ほんとに大丈夫か?ずっと調子悪そうだぞ」
 翔に心配されてる。抑えないとでもやっぱりあれには勝てない。だったらこれしか。
「翔ごめん。やっぱり無理だった」
 そうつぶやいて化粧バックを開けた。その中にあるはさみを取り出した。
 せっかく始めてきた新しい服だったのに。でも止めないと。
「!!」
 私は服の上からはさみを腕に突き刺した。
 あの声は呪われた私。あの囁きは私をまどわすためのもの。だからハサミを腕に刺した。こうすれば必ず収まるから。でもペンで刺したのが比にならないくらい痛い。
「おい。大丈夫か?」
「さすがにやばいって。」
「奈々落ち着いて」
 六花たちも心配してくれている。また私はみんなに迷惑をかけている。でもここは乗り切らないと。
「大丈夫だよ」
「いやいやいや。そんな服にじんでる状態で言われても説得力ないですから」
 みんなに見せるわけにはいかなかったでもこうしないともう一人の私がでてきてしまう。それだけは絶対にあっちゃいけない。誰ももう傷つけたくない。
(無駄だよ。あなたの意識とは関係ない。もう抵抗できないんだからさ。あきらめて私に全てちょうだいよ)
 聞こえる。なんで私の意識と関係ないとか何言ってるの。これは私。あいつは私じゃない。
「でてけ!!」
 声が聞こえなくなるまで私はハサミで腕をさした。痛みなんかもうわからなくなるくらいに。
「馬鹿。落ち着けって」
 誰かが私を止めている。でもあいつを殺さないと。
「落ち着けって!!」
 はたかれた音がした。あたりを見渡すと哀れな目で見ている人、心配そうに見てる店員。それに私をはたいた翔と
私を隠すように立っている大翔君と六花がいた。あの音はまたなくなっていた。そして何もかもが真っ暗になっていた。
「奈々大丈夫か?」
「当たり前じゃんはやく続きやろ」
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