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「問題は、イブキかぁ…」
ルイスが場を切り替えるように言う
「次期当主を同行させる訳にはいきません」
「それくらい分かっている」
レイザーの言葉にルイスが顔をむくれさせる
「あいつはどこが地雷か判断が難しすぎるんだよ」
三人は頭を抱えた。
「おや、なにかお悩みで」
ジョナサンが紅茶を持ってやってきた。
「イブキをどう説得したもんかと思ってな」
「なるほど…失せ物の塔のことですな。確かにイブキ様なら確実に反対するでしょう」
ジョナサンが困った様子もなく紅茶を人数分入れた。
「なんだ。いい案でも?」
ルイスが聞くとジョナサンは眼鏡をキラリと光らせた。
「簡単でございます。イブキ様を安心させればよろしいのです。」
「安心…ですか?」
ユツキが眉を寄せながら尋ねる
「えぇ、ユツキ様が遠くへ行っても大丈夫だと思わせられるくらい強くなれば良いのです。」
「しかし、私の体は」
「ユツキの体を治すために塔に行くんだろう」
ユツキもルイスも何を言っているのか分からない様子
「体ではございません。魔法でございます。」
「魔法を鍛えて兄様を納得させるということですか?」
ユツキがようやく納得できたというように肩を竦めた。
「できるでしょうか…」
「私がお手伝い致します。頑張ってみませんか」
「ジョナサン様が一緒なら…」
ユツキ差し出された手を取り握手をした。
「よろしくお願い致します。」
ユツキは決意を固めた。
翌日からジョナサン指導の元、ユツキは魔法の特訓を始めた。
ただ、ユツキは魔法が使えないわけではなく、体が持たないだけなので使えない魔法はなかった。
今はジョナサンと共に持続力を高めているところだ。
「アイスアロー!」
的に向かって放った矢が中心に命中し、キラキラと結晶となって消えた。
「次は同時に三本、五本、十本と出してみましょう」
「はい」
ユツキは言われた通りに矢を生成し的に向かって放った。
「アイスアロー!」
三本と五本はまだ順調だったのだが十本目の時ユツキの顔色が少し険しくなった。
「アイスアロー…!」
放った十本の矢の内三本しか命中しなかった。
「一度休憩致しましょうか。体力作りは地道にコツコツが基本ですよ」
「まだ大丈夫です。少し、ふらついただけですから」
ジョナサンの申し出を断り再度矢を生成する
「アイスアロー!」
十本の矢は全て的の中心へと収まっていた。
「お見事です。それでは、しばし休憩の後中級魔法の持続に挑戦致しましょう。」
「分かりました。」
ユツキは休憩のためレイザーがいる木陰のベンチに向かった。
レイザーは紅茶を入れて待っていた。
「ユツキ様、疲れた体に冷たい飲み物はいかがですかな?」
ジョナサンが声をかけた。
「たしかに、冷たい飲み物が欲しくなりますね。ですが、せっかくレイザーが紅茶を入れてくれたので」
「いえいえ、良いのですよ。すこし紅茶をお貸し頂けますかな?」
「えぇ…?」
ユツキがジョナサンに紅茶を渡す
「アイスロック」
ジョナサンが魔法を唱えカップの中に氷を入れていく
「えっ、紅茶を冷やすんですか…?」
「最近城下で流行っているんですよ。紅茶を冷やしたアイスティーという飲み物になります。」
ユツキはカップを受け取り一口飲む
「美味しい…レイザーも飲んでみてください」
「え、では…」
ユツキに氷を作ってもらいアイスティーを飲む
「美味しいですね。」
「夏によく売れそうですね」
三人が談笑していると、屋敷の中から人影が出てきた。
金髪黒目で黒縁の眼鏡をかけた青年
シワひとつ無いワイシャツにベストを着ている
「兄様」
ユツキが立ち上がり迎える
彼はイブキ・グランデューク・ローラント
この家の長男でユツキの兄だ。
「二階の窓から見ていた。何をしているんだ。」
「魔法の持久力をつけようと思いまして」
「わざわざジョナサンを呼んでか」
イブキは何かを疑っている様子だ。
「私から申し出たのですよ。病の回復の手助けになればと思いましてね」
ジョナサンが助け舟を出したことでイブキはそれ以上追求はしなかった。
「あ、兄様もいかがですか?アイスティー」
「アイスティー?あぁ、城下で流行っている冷たい紅茶か」
「はい、ジョナサン様が教えて下さって今、皆で飲んでいたところです。」
ユツキがカップに氷を入れてイブキに差し出した。
「出されたものは断らないが…」
イブキは渋々というようにアイスティーを口に運んだ。
「おいし…いや、私は本来の温かい紅茶の方が好ましいな。巷で流行っているのは理解に苦しむ」
イブキがアイスティーを飲み干した。
「兄は素直に褒められないんです。気を悪くしないでくださいね」
ユツキがジョナサンに耳打ちする
「えぇ、分かっておりますよ。生まれた時から知っておりますから」
ジョナサンはイブキを微笑ましく見ている
「とにかく、あまり冷たいものばかり取りすぎるな。体を冷やすのは良くない。あと、特訓も程々にしておけ。倒れられたらまた先生に来てもらわなくてはいけなくなるからな」
「分かりました。」
イブキはそれだけ言うと屋敷の中に帰っていった。
「わざわざ、あれを言うためにこられたのでしょうか」
「はい、きっとそうですよ」
レイザーの疑問にユツキが少し笑って答えた。
ルイスが場を切り替えるように言う
「次期当主を同行させる訳にはいきません」
「それくらい分かっている」
レイザーの言葉にルイスが顔をむくれさせる
「あいつはどこが地雷か判断が難しすぎるんだよ」
三人は頭を抱えた。
「おや、なにかお悩みで」
ジョナサンが紅茶を持ってやってきた。
「イブキをどう説得したもんかと思ってな」
「なるほど…失せ物の塔のことですな。確かにイブキ様なら確実に反対するでしょう」
ジョナサンが困った様子もなく紅茶を人数分入れた。
「なんだ。いい案でも?」
ルイスが聞くとジョナサンは眼鏡をキラリと光らせた。
「簡単でございます。イブキ様を安心させればよろしいのです。」
「安心…ですか?」
ユツキが眉を寄せながら尋ねる
「えぇ、ユツキ様が遠くへ行っても大丈夫だと思わせられるくらい強くなれば良いのです。」
「しかし、私の体は」
「ユツキの体を治すために塔に行くんだろう」
ユツキもルイスも何を言っているのか分からない様子
「体ではございません。魔法でございます。」
「魔法を鍛えて兄様を納得させるということですか?」
ユツキがようやく納得できたというように肩を竦めた。
「できるでしょうか…」
「私がお手伝い致します。頑張ってみませんか」
「ジョナサン様が一緒なら…」
ユツキ差し出された手を取り握手をした。
「よろしくお願い致します。」
ユツキは決意を固めた。
翌日からジョナサン指導の元、ユツキは魔法の特訓を始めた。
ただ、ユツキは魔法が使えないわけではなく、体が持たないだけなので使えない魔法はなかった。
今はジョナサンと共に持続力を高めているところだ。
「アイスアロー!」
的に向かって放った矢が中心に命中し、キラキラと結晶となって消えた。
「次は同時に三本、五本、十本と出してみましょう」
「はい」
ユツキは言われた通りに矢を生成し的に向かって放った。
「アイスアロー!」
三本と五本はまだ順調だったのだが十本目の時ユツキの顔色が少し険しくなった。
「アイスアロー…!」
放った十本の矢の内三本しか命中しなかった。
「一度休憩致しましょうか。体力作りは地道にコツコツが基本ですよ」
「まだ大丈夫です。少し、ふらついただけですから」
ジョナサンの申し出を断り再度矢を生成する
「アイスアロー!」
十本の矢は全て的の中心へと収まっていた。
「お見事です。それでは、しばし休憩の後中級魔法の持続に挑戦致しましょう。」
「分かりました。」
ユツキは休憩のためレイザーがいる木陰のベンチに向かった。
レイザーは紅茶を入れて待っていた。
「ユツキ様、疲れた体に冷たい飲み物はいかがですかな?」
ジョナサンが声をかけた。
「たしかに、冷たい飲み物が欲しくなりますね。ですが、せっかくレイザーが紅茶を入れてくれたので」
「いえいえ、良いのですよ。すこし紅茶をお貸し頂けますかな?」
「えぇ…?」
ユツキがジョナサンに紅茶を渡す
「アイスロック」
ジョナサンが魔法を唱えカップの中に氷を入れていく
「えっ、紅茶を冷やすんですか…?」
「最近城下で流行っているんですよ。紅茶を冷やしたアイスティーという飲み物になります。」
ユツキはカップを受け取り一口飲む
「美味しい…レイザーも飲んでみてください」
「え、では…」
ユツキに氷を作ってもらいアイスティーを飲む
「美味しいですね。」
「夏によく売れそうですね」
三人が談笑していると、屋敷の中から人影が出てきた。
金髪黒目で黒縁の眼鏡をかけた青年
シワひとつ無いワイシャツにベストを着ている
「兄様」
ユツキが立ち上がり迎える
彼はイブキ・グランデューク・ローラント
この家の長男でユツキの兄だ。
「二階の窓から見ていた。何をしているんだ。」
「魔法の持久力をつけようと思いまして」
「わざわざジョナサンを呼んでか」
イブキは何かを疑っている様子だ。
「私から申し出たのですよ。病の回復の手助けになればと思いましてね」
ジョナサンが助け舟を出したことでイブキはそれ以上追求はしなかった。
「あ、兄様もいかがですか?アイスティー」
「アイスティー?あぁ、城下で流行っている冷たい紅茶か」
「はい、ジョナサン様が教えて下さって今、皆で飲んでいたところです。」
ユツキがカップに氷を入れてイブキに差し出した。
「出されたものは断らないが…」
イブキは渋々というようにアイスティーを口に運んだ。
「おいし…いや、私は本来の温かい紅茶の方が好ましいな。巷で流行っているのは理解に苦しむ」
イブキがアイスティーを飲み干した。
「兄は素直に褒められないんです。気を悪くしないでくださいね」
ユツキがジョナサンに耳打ちする
「えぇ、分かっておりますよ。生まれた時から知っておりますから」
ジョナサンはイブキを微笑ましく見ている
「とにかく、あまり冷たいものばかり取りすぎるな。体を冷やすのは良くない。あと、特訓も程々にしておけ。倒れられたらまた先生に来てもらわなくてはいけなくなるからな」
「分かりました。」
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