殿下は君と恋がしたい!

寝頭ふみんしょー

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ユツキはルイスが戦争に行ったことを知らない
数ヶ月ぶりに友達に会えるとはしゃいでいるだけだ。
しかも、友達の役に立てるとなればはしゃぐのは当たり前だ。
「姉様、ユツキです」
ドアをノックすると裁縫用のメジャーを首から下げて耳にチャコペンを挟んだスイレンが出てきた。
黒髪碧眼に大きな瞳が輝いている。
スラリとした長い足がパンツスタイルで際立っている
女性がパンツを履くのはかなり珍しくスイレンは変わり者として見られる時もしばしばある
男勝りな性格で陰口に真っ向から立ち向かうおてんば娘だ。
「姉様、お洋服出来ました?」
「うん、ちょうど一着出来上がったところ!何か御用?」
「はい、花束に巻くリボンが欲しくて」
スイレンはユツキを部屋に招き散らばった布を端に寄せる
ガサツだ。
「色々あるよ?どんなのがいいの?」
「青色がいいです。ルイス様の目はとっても綺麗な青色なんですよ」
ユツキがそう言うとスイレンはぴくりと表情を強ばらせレイザーを見た。
レイザーは首を軽く振り何も言うなと合図する
「そっか、会いに行くの?」
「明日お父様と一緒にルイス様の怪我を治しに行くんです」
ユツキは張り切ってスイレンが出してくれたリボンを選ぶ
「これにします!」
ユツキは青いサテン生地に光によって色が変わる特別素材を選んだ。
「かっこいい…」
「気に入ったみたいね。」
ユツキはリボンを見つめて目をキラキラとさせている
「じゃあ、ユツキには蝶ネクタイ作ってあげるわ」
「本当ですか?嬉しいです」
「うん、明日までに作っておくから忘れずに取りに来てね」
「はい!」
スイレンと別れ部屋に戻ると寝巻きに着替え薬を飲んだ。
「苦い…」
「新しい薬です。慣れましょう」
薬を飲み込んだ後、温かいココアを出されこくこくと飲む
「ごちそうさま」
飲み干したココアのカップをレイザーに渡し歯を磨いてベッドに入る
「明日は早く起こしてくださいね」
「かしこまりました。」
ユツキは布団の中で丸くなって眠りにつく
「こほっ…こほっこほっ…」
深夜、寝入った後ぶり返して部屋の中に咳の声が響く
アレクサンダーが部屋にそっと入ってきて様子を見る
「明日は大丈夫そうか」
レイザーに尋ねる
「最近急に寒くなりましたのでずっと風邪気味です。今のところちゃんと薬も飲んでおられますし飲み忘れがない限り酷くなることは無い、とお医者様が言っておられました。」
レイザーが淡々と言いユツキの布団を肩まで掛け直した。
「んぅ…」
ユツキが体を捩りレイザーの手を握る
「脈も正常です。問題は無いかと」
それはユツキには正常だが、普通の人であれば大問題な体調だ。
「そうか…辛い事をさせてしまうな」
アレクサンダーがユツキの頬を撫でると気持ちよさそうにすりついてくる
「とにかく、明日は王妃直々の命だ。行かない訳にはいかない」
「心得ております。」
アレクサンダーは眠っているユツキにおやすみを言って部屋を後にした。

翌朝、ユツキは低血圧に苦しみながらなんとか体を起こした。
いつもより早く起きたからか眠気が酷く残っている
ユツキは着替えるより先に部屋を抜けてスイレンの部屋のドアをノックした。
「姉様~」
寝ぼけ眼で呼ぶとひょこっとスイレンが顔を出した。
「おまたせ。出来たよ」
小箱の中に入れられた叶結びの蝶ネクタイ
シルバーの刺繍が入っておりユツキはまじまじと見つめる
「綺麗です…」
ユツキは感謝の気持ちを込めてスイレンにハグをした。
「喜んでもらえてよかったわ。」
スイレンは八つ下の小さな弟の頭を優しく撫でた。
「姉様も城へ行きませんか?」
「私は駄目よ、お呼ばれしていないんだから。それに堅苦しい場所は苦手なの」
ユツキと目線を合わせるようにしゃがみこみ頭を撫でる
「早く殿下が元気になるように、頑張ってきてね」
「はい!」
ユツキはスイレンに手を振り自室へ戻って行った。
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