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本編
22。ー昼
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「まあまあ」
「似合わない」
「子どもっぽい」
ラックから目に留まった服を手にしては、先生に判断を求めた。さくさくと却下されていくなか、ニットのセーターとショートパンツを見せたとき「それにしておけ」と言われたから、これに決定した。
髪を整えずに出て来てしまったからベレー帽と、わたしが可愛いと言ったニーハイソックスも買ってもらい、秋のコーディネートが完成した。
先生は靴も買ったらどうだと勧めてくれたけど、それは買いすぎだし、もし靴ずれになったら嫌だと言って辞退した。
レジで会計を済ませ、タグを切ってもらう。
「外で待ってるから、着替えたら出てこい」
「うん!」
わたしは試着室に入った。新しいお洋服って嬉しいな。ウキウキする。
着替えて、着ていた服をまとめて出ると、店員さんがそれらを受け取って紙袋に入れてくれた。わたしはお礼を言ってから、出口に向かった。
”かわいい子だったね”
去り際にそう聞こえて、ガラス扉を閉めるときに、もう一度店内を確認した。他に女性客はいなかった。
鼻歌交じりに階段を降りて、先生の元に向かう。
「おまたせしました!」
「ああ」
「出るときね、店員さんにかわいいって言われちゃった」
「……」
「嬉しかったな」
先生は、紙袋を持ってくれた。
「きみは、良い家庭で素直に育ったんだな」
「うん?」
「当ててみよう、一人っ子だろう。いたとしても、かなり年上の兄弟か」
「ひとりっこ! なんでわかったの?」
「誰にでもわかる」
一緒に表通りに停めてある車まで歩んだ。
「それで、どこに行きたいんだ」
「えーとね、水族館!」
「……イルカのぬいぐるみが欲しいとか言うなよ?」
* * *
都内の水族館にやってきた。
日曜日だから結構賑わっている。入場制限をしているけれど、先生は待つのは構わないといってくれたので、一緒に並んでいる。
「きみは水族館が好きなのか」
「うん! すごく好き。いろんな青が混ざってて綺麗だし、神秘的だし、海のなかに住んでるみたいな気分になれるから」
「……」
「先生は、あんまりこない?」
「子どもの時以来だな」
先生もお父さんとお母さんに連れてきてもらったのかな。わたしは片手ずつ両親に繋いでもらっていたけど、そんな先生は想像つかないな。
「先生は、兄弟いた?」
「……大人になったからといって兄弟は消えないだろう」
「あ、そっか。じゃあ、兄弟いる?」
「きみも当ててみたらどうだ」
「うーん」
上にはいない気がする。一人っ子かなぁとも思うけど、でも面倒見がいいし、下にいそうだな。
「弟がひとり! 先生は、しっかり者のお兄ちゃん」
「残念、外れだ。姉と妹がいる」
「え、お姉さんと妹さん?」
これはかなり想定外だ。女兄弟がいて、しかも先生は三兄弟の真ん中なのか。
「意外……でも兄弟が上にも下にもいていいなぁ」
「どこがいいんだ」
先生は眉間に皺を寄せた。
「うるさい。わめく。腹黒い。子どもの頃は、何度一人だったら良かったと思ったことか……まあおかげで、女という生き物に幻想を抱かずに済んだが」
「幻想?」
「ちなみに、きみとはもう短くない時間を共に過ごしているが、僕は未だにきみみたいな女性がいることが信じられていない」
「わたしみたいな、女性?」
「おとぎ話を好み、エプロンをつけて洋菓子を作り、パジャマを着てぬいぐるみと寝るような、そんな女のことだ」
「えっ、みんなパジャマ着ないの?」
「……」
”次の方どうぞー”
そうこうしているうちに順番がきた。
前の自動ドアが開くと、一面に広がるのは青の世界。半円の天井上には、至る所にお魚が泳いでいる。
「わぁ、綺麗……」
「ほら」
先生に手を差し出され、思わず顔を見て確認してしまった。
うつむいて、一歩、二歩と歩いて、ぎゅっと握る。
先生の手は大きくて、わたしより少し暖かかった。
よく触ったり、触られたりするのに、まるで初めてその手を知ったような、そんな感じがした。
* * *
「似合わない」
「子どもっぽい」
ラックから目に留まった服を手にしては、先生に判断を求めた。さくさくと却下されていくなか、ニットのセーターとショートパンツを見せたとき「それにしておけ」と言われたから、これに決定した。
髪を整えずに出て来てしまったからベレー帽と、わたしが可愛いと言ったニーハイソックスも買ってもらい、秋のコーディネートが完成した。
先生は靴も買ったらどうだと勧めてくれたけど、それは買いすぎだし、もし靴ずれになったら嫌だと言って辞退した。
レジで会計を済ませ、タグを切ってもらう。
「外で待ってるから、着替えたら出てこい」
「うん!」
わたしは試着室に入った。新しいお洋服って嬉しいな。ウキウキする。
着替えて、着ていた服をまとめて出ると、店員さんがそれらを受け取って紙袋に入れてくれた。わたしはお礼を言ってから、出口に向かった。
”かわいい子だったね”
去り際にそう聞こえて、ガラス扉を閉めるときに、もう一度店内を確認した。他に女性客はいなかった。
鼻歌交じりに階段を降りて、先生の元に向かう。
「おまたせしました!」
「ああ」
「出るときね、店員さんにかわいいって言われちゃった」
「……」
「嬉しかったな」
先生は、紙袋を持ってくれた。
「きみは、良い家庭で素直に育ったんだな」
「うん?」
「当ててみよう、一人っ子だろう。いたとしても、かなり年上の兄弟か」
「ひとりっこ! なんでわかったの?」
「誰にでもわかる」
一緒に表通りに停めてある車まで歩んだ。
「それで、どこに行きたいんだ」
「えーとね、水族館!」
「……イルカのぬいぐるみが欲しいとか言うなよ?」
* * *
都内の水族館にやってきた。
日曜日だから結構賑わっている。入場制限をしているけれど、先生は待つのは構わないといってくれたので、一緒に並んでいる。
「きみは水族館が好きなのか」
「うん! すごく好き。いろんな青が混ざってて綺麗だし、神秘的だし、海のなかに住んでるみたいな気分になれるから」
「……」
「先生は、あんまりこない?」
「子どもの時以来だな」
先生もお父さんとお母さんに連れてきてもらったのかな。わたしは片手ずつ両親に繋いでもらっていたけど、そんな先生は想像つかないな。
「先生は、兄弟いた?」
「……大人になったからといって兄弟は消えないだろう」
「あ、そっか。じゃあ、兄弟いる?」
「きみも当ててみたらどうだ」
「うーん」
上にはいない気がする。一人っ子かなぁとも思うけど、でも面倒見がいいし、下にいそうだな。
「弟がひとり! 先生は、しっかり者のお兄ちゃん」
「残念、外れだ。姉と妹がいる」
「え、お姉さんと妹さん?」
これはかなり想定外だ。女兄弟がいて、しかも先生は三兄弟の真ん中なのか。
「意外……でも兄弟が上にも下にもいていいなぁ」
「どこがいいんだ」
先生は眉間に皺を寄せた。
「うるさい。わめく。腹黒い。子どもの頃は、何度一人だったら良かったと思ったことか……まあおかげで、女という生き物に幻想を抱かずに済んだが」
「幻想?」
「ちなみに、きみとはもう短くない時間を共に過ごしているが、僕は未だにきみみたいな女性がいることが信じられていない」
「わたしみたいな、女性?」
「おとぎ話を好み、エプロンをつけて洋菓子を作り、パジャマを着てぬいぐるみと寝るような、そんな女のことだ」
「えっ、みんなパジャマ着ないの?」
「……」
”次の方どうぞー”
そうこうしているうちに順番がきた。
前の自動ドアが開くと、一面に広がるのは青の世界。半円の天井上には、至る所にお魚が泳いでいる。
「わぁ、綺麗……」
「ほら」
先生に手を差し出され、思わず顔を見て確認してしまった。
うつむいて、一歩、二歩と歩いて、ぎゅっと握る。
先生の手は大きくて、わたしより少し暖かかった。
よく触ったり、触られたりするのに、まるで初めてその手を知ったような、そんな感じがした。
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