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本編
25。ー明け方
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”新しい薬ってどうやってできるの? 誰も知らない、いちばーん、最初の薬”
”薬ができるまでにはね、たくさんの時間とたくさんの費用がかかるんだ。だからチームのみんなで、長い年月をかけて、知恵を振り絞って作るんだよ”
”そっか。みんなで作るんだ”
”うん。でもね。たまにいるんだ、天才が。まるで神の計画を知る如く調合して、一人で作ってしまうんだ、画期的な薬を”
”お父さんの会社にもいる?”
”ああ、いるよ。丁度この間、その人が作成した薬の承認がおりたところだ。ちょっと人付き合いが悪いやつでね、いつも一人で勝手に仕事を進めてしまうから、周りは手を焼いているんだけど、”
”お父さんも、困ってる?”
”うーん、困ってないと言ったら嘘になるけれど……でもね、お父さんはいいと思っているんだ。その人は天から薬学の能力を存分にもらったから、他の普通のこと——お話しするとか、気遣いをするとか——そういうのはあんまり得意じゃないんだと思う”
”ふつうの、こと……”
”多くの人は変わり者だというけれど、そういう人が作る薬のおかげで、死ななくて済む子供だっている。だからそういう人がのけ者にされず、薬を作れる環境を整えてあげることも、大事なことなんだ。これだって立派なチームワークだよ”
”蛍も仲間はずれにしない”
”あはは、えらいね。でも蛍のほうが天才かもしれないよ?”
* * *
ベッドに横たわりながら、その昔、父親に聞いた話を思い出していた。神に愛され才能を与えられた人は、他の能力が欠落している——すべての人間は、完璧ではいられないのだ。
うっすら目を開けると、先生はベッドの縁に腰掛けいた。青い顔をしている。
「悪かった……本当に。何て詫びたらいいか分からない」
その様子はひどく暗く、全身から血の気が引いている。
”本当にすまなかった” ”ごめん” ”悪かった”
先生はそればかりを繰り返した。わたしは、確かにひどい目にあったけれど、なんだか先生の方が深刻じゃないかというほど打ちのめされている。
「さっき薬を作ったんだ、痛み止めと抗生物質。不純物はいれていない。粉薬で悪いが、」
「先生……もう大丈夫だよ」
「頼む。飲んでくれ」
わたしは強がりではなく、本当に平気だと思ったけれど、先生がすごく飲んで欲しそうだったから。だからわたしは薬と水を受け取って、それを流し込んだ。
コップをサイドテーブルに置いて、もう一回寝ようとすると、先生は布団のなかに入れてくれた。
「先生は、寝ないの?」
そう尋ねると、先生は首を振った。
「さすがに今晩、きみの横で寝るわけにはいかない」
「でも……わたしは一緒に寝てほしいよ?」
「ここにいる。離れないから」
わたしは先生の方を向いて横になった。
おもむろに手を伸ばしたら、先生はその手を取ってくれた。
そしてずっとずっと握っていてくれた。
* * *
”薬ができるまでにはね、たくさんの時間とたくさんの費用がかかるんだ。だからチームのみんなで、長い年月をかけて、知恵を振り絞って作るんだよ”
”そっか。みんなで作るんだ”
”うん。でもね。たまにいるんだ、天才が。まるで神の計画を知る如く調合して、一人で作ってしまうんだ、画期的な薬を”
”お父さんの会社にもいる?”
”ああ、いるよ。丁度この間、その人が作成した薬の承認がおりたところだ。ちょっと人付き合いが悪いやつでね、いつも一人で勝手に仕事を進めてしまうから、周りは手を焼いているんだけど、”
”お父さんも、困ってる?”
”うーん、困ってないと言ったら嘘になるけれど……でもね、お父さんはいいと思っているんだ。その人は天から薬学の能力を存分にもらったから、他の普通のこと——お話しするとか、気遣いをするとか——そういうのはあんまり得意じゃないんだと思う”
”ふつうの、こと……”
”多くの人は変わり者だというけれど、そういう人が作る薬のおかげで、死ななくて済む子供だっている。だからそういう人がのけ者にされず、薬を作れる環境を整えてあげることも、大事なことなんだ。これだって立派なチームワークだよ”
”蛍も仲間はずれにしない”
”あはは、えらいね。でも蛍のほうが天才かもしれないよ?”
* * *
ベッドに横たわりながら、その昔、父親に聞いた話を思い出していた。神に愛され才能を与えられた人は、他の能力が欠落している——すべての人間は、完璧ではいられないのだ。
うっすら目を開けると、先生はベッドの縁に腰掛けいた。青い顔をしている。
「悪かった……本当に。何て詫びたらいいか分からない」
その様子はひどく暗く、全身から血の気が引いている。
”本当にすまなかった” ”ごめん” ”悪かった”
先生はそればかりを繰り返した。わたしは、確かにひどい目にあったけれど、なんだか先生の方が深刻じゃないかというほど打ちのめされている。
「さっき薬を作ったんだ、痛み止めと抗生物質。不純物はいれていない。粉薬で悪いが、」
「先生……もう大丈夫だよ」
「頼む。飲んでくれ」
わたしは強がりではなく、本当に平気だと思ったけれど、先生がすごく飲んで欲しそうだったから。だからわたしは薬と水を受け取って、それを流し込んだ。
コップをサイドテーブルに置いて、もう一回寝ようとすると、先生は布団のなかに入れてくれた。
「先生は、寝ないの?」
そう尋ねると、先生は首を振った。
「さすがに今晩、きみの横で寝るわけにはいかない」
「でも……わたしは一緒に寝てほしいよ?」
「ここにいる。離れないから」
わたしは先生の方を向いて横になった。
おもむろに手を伸ばしたら、先生はその手を取ってくれた。
そしてずっとずっと握っていてくれた。
* * *
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