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本編
おまけ 男性陣編
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窓から暖かい日の光が差し込む正午。
築島は一人、研究室のロフトで作業をしていた。
静かな午後で、大変結構。しかしそう思えていたのも束の間、ゼミ生が四名、ガヤガヤと入室してきた。
「ラッキー。誰もいないじゃん」
「昼飯にすっか」
「実験テーブル使っちゃおうか」
そうしてコンビニの弁当を広げ出す。彼らは頭上に築島がいることに気づいていないようだ。
誰か入ってきたと思ったら、いつものうるさい連中か。築島は自分の在室を伝えようかとも思ったが、面倒なのでやめた。何を作っているのか聞かれてもうざったい。
「ねー、おまえ、英里香ちゃんとどうなの」
誰かがゴホゴホと吹き出す。
喉に何を詰まらせてもいいから、研究室の机は汚さないでほしい。
「冗談、勘弁してよ」
「でも、よく二人で図書館にいますよね」
「違うって。あれは高山とか蛍ちゃんもいるの。俺と英里香ちゃんだけ、金曜の午後に講義が入ってないから残っちゃってるだけ」
これ以降は彼女は誘わないで頂きたいな。
「ちょっと気があるとかは?」
「ゼロゼロ」
「なんだ。ほんとになんもないのかよ」
「ないってば」
「まっ、英里香ちゃんと付き合って結婚なんかしたら、一生尻に引かれそうだしな」
確実に引かれる。
教員を脅す生徒なんて初めてお目にかかった。
「そういう点なら、華ちゃんなんか、男を立ててくれるんじゃない?」
どう考えたって彼女だって尻に引くタイプだろう。
高山はやはり女を見る目がない。
そう。何を隠そう、築島が一人でひっそりと調合しているのは、彼女らに注文を受けた美容液だ。毒でも盛りたいところだが、千倍になって返ってきそうだからやめておいている。
「おっ、高山。気があるな」
「いや、そういうわけじゃないけど」
「林、どうなの? 同じ三年だろ」
「いやぁ~ おれはちょっと怖いっすね。本音を言わなそうだし、何考えてるかわかんないっす」
林の方がまだ見る目があるか。
「でもさぁ、蛍ちゃんは……」
「「「かわいい」」」
ここから図鑑を落としてやろうか。
「絶対交際経験ない」
「手すら繋いだことなさそう」
「間違いないね」
間違いだらけだ。
「蛍ちゃんと同じ語学のクラスの奴に聞いたんだけどさ、彼氏いないの? って聞くと、顔を真っ赤にするんだって」
「ってことは彼氏いないし、ってことは俺にもワンチャンあるんじゃない?」
まったく論理性に欠ける彼の今期の成績はC-にしよう。
「マジで今度誘ってみようかな」
よし。図鑑はやめて硫酸にしよう。
「蛍ちゃん、甘いもの好きだよ~」
「なら表参道のパンケーキ屋にでも連れてってあげようかな」
それとも一掃するには光化学スモッグか……
一度死線を越えれば、彼らも身の振り方を改めるだろう。
築島がその準備を始めると、また扉が開いた。
「おっす」
「お疲れ」
「何してるんだ?」
「昼飯食いながら、うちの女子三人の査定」
「小沢は英里香ちゃんとは結婚しなくて」
「高山は華ちゃんが好きだけど、林はびびってて」
「飛躍しすぎだよ」
「びびってないっすよ」
「で、足立は蛍ちゃんを誘おうとしている」
「宮野は?」
「おまえたち……上に先生がいるの知ってるか?」
「「「「えっ」」」」
ちっ。
「えーと、そろそろ次の授業があるから」
「僕は図書館に……」
「俺、食い足りないから売店行ってくるわ」
「……じゃあ、おれは……ひなたぼっこに……」
四名はそそくさと退散していった。
そして彼らと入れ替わりで、蛍が入ってきた。
「こんにちは!」
「蛍ちゃん。あれ、授業どうしたの?」
「それが休講になっちゃって……それより先輩たち、なんか慌ててましたけど、どうしたんですかね?」
「聞かないでやってくれ」
「?」
彼女の声を聞いて、築島もロフトから降りてきた。
「あ、先生、お疲れ様です」
「宮野くん。悪いんだか、事務室からこの間の学会の報告書をもらって来てくれないか。まだ手元に届かなくて困っているんだ」
「はい、ではいま行ってきます」
宮野は颯爽と出ていった。
「まだ届かないんだね」
「別に届かなくていい。どうせゴミ箱行きだ」
「? じゃあなんで取りに行ってもらったの?」
築島は答えなかった。
「パンケーキ……」
「?」
「食べに行きたいか?」
「うん!」
報告書を手にした宮野が戻ってきたときには、研究室はもぬけの殻であった。
* * *
築島は一人、研究室のロフトで作業をしていた。
静かな午後で、大変結構。しかしそう思えていたのも束の間、ゼミ生が四名、ガヤガヤと入室してきた。
「ラッキー。誰もいないじゃん」
「昼飯にすっか」
「実験テーブル使っちゃおうか」
そうしてコンビニの弁当を広げ出す。彼らは頭上に築島がいることに気づいていないようだ。
誰か入ってきたと思ったら、いつものうるさい連中か。築島は自分の在室を伝えようかとも思ったが、面倒なのでやめた。何を作っているのか聞かれてもうざったい。
「ねー、おまえ、英里香ちゃんとどうなの」
誰かがゴホゴホと吹き出す。
喉に何を詰まらせてもいいから、研究室の机は汚さないでほしい。
「冗談、勘弁してよ」
「でも、よく二人で図書館にいますよね」
「違うって。あれは高山とか蛍ちゃんもいるの。俺と英里香ちゃんだけ、金曜の午後に講義が入ってないから残っちゃってるだけ」
これ以降は彼女は誘わないで頂きたいな。
「ちょっと気があるとかは?」
「ゼロゼロ」
「なんだ。ほんとになんもないのかよ」
「ないってば」
「まっ、英里香ちゃんと付き合って結婚なんかしたら、一生尻に引かれそうだしな」
確実に引かれる。
教員を脅す生徒なんて初めてお目にかかった。
「そういう点なら、華ちゃんなんか、男を立ててくれるんじゃない?」
どう考えたって彼女だって尻に引くタイプだろう。
高山はやはり女を見る目がない。
そう。何を隠そう、築島が一人でひっそりと調合しているのは、彼女らに注文を受けた美容液だ。毒でも盛りたいところだが、千倍になって返ってきそうだからやめておいている。
「おっ、高山。気があるな」
「いや、そういうわけじゃないけど」
「林、どうなの? 同じ三年だろ」
「いやぁ~ おれはちょっと怖いっすね。本音を言わなそうだし、何考えてるかわかんないっす」
林の方がまだ見る目があるか。
「でもさぁ、蛍ちゃんは……」
「「「かわいい」」」
ここから図鑑を落としてやろうか。
「絶対交際経験ない」
「手すら繋いだことなさそう」
「間違いないね」
間違いだらけだ。
「蛍ちゃんと同じ語学のクラスの奴に聞いたんだけどさ、彼氏いないの? って聞くと、顔を真っ赤にするんだって」
「ってことは彼氏いないし、ってことは俺にもワンチャンあるんじゃない?」
まったく論理性に欠ける彼の今期の成績はC-にしよう。
「マジで今度誘ってみようかな」
よし。図鑑はやめて硫酸にしよう。
「蛍ちゃん、甘いもの好きだよ~」
「なら表参道のパンケーキ屋にでも連れてってあげようかな」
それとも一掃するには光化学スモッグか……
一度死線を越えれば、彼らも身の振り方を改めるだろう。
築島がその準備を始めると、また扉が開いた。
「おっす」
「お疲れ」
「何してるんだ?」
「昼飯食いながら、うちの女子三人の査定」
「小沢は英里香ちゃんとは結婚しなくて」
「高山は華ちゃんが好きだけど、林はびびってて」
「飛躍しすぎだよ」
「びびってないっすよ」
「で、足立は蛍ちゃんを誘おうとしている」
「宮野は?」
「おまえたち……上に先生がいるの知ってるか?」
「「「「えっ」」」」
ちっ。
「えーと、そろそろ次の授業があるから」
「僕は図書館に……」
「俺、食い足りないから売店行ってくるわ」
「……じゃあ、おれは……ひなたぼっこに……」
四名はそそくさと退散していった。
そして彼らと入れ替わりで、蛍が入ってきた。
「こんにちは!」
「蛍ちゃん。あれ、授業どうしたの?」
「それが休講になっちゃって……それより先輩たち、なんか慌ててましたけど、どうしたんですかね?」
「聞かないでやってくれ」
「?」
彼女の声を聞いて、築島もロフトから降りてきた。
「あ、先生、お疲れ様です」
「宮野くん。悪いんだか、事務室からこの間の学会の報告書をもらって来てくれないか。まだ手元に届かなくて困っているんだ」
「はい、ではいま行ってきます」
宮野は颯爽と出ていった。
「まだ届かないんだね」
「別に届かなくていい。どうせゴミ箱行きだ」
「? じゃあなんで取りに行ってもらったの?」
築島は答えなかった。
「パンケーキ……」
「?」
「食べに行きたいか?」
「うん!」
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