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番外編 運命の人
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自分で計画したことなれど、病人としてベッドで横たわった状態でいるのは、ものすご~くヒマすぎて、すぐに飽きてしまった。
(寝てばかりだと腰が痛くなる。だからって元気にそこら辺を歩いたら、周りに不審に思われるのは、馬鹿な俺だってわかるけどさ。3ヶ月後に死ぬ人間なんだから、重症に思われないといけないなんて大変だ……)
ベッドの傍らで、古城の管理についての専門書を真剣に読みふけるカールが、お目付け役として鎮座している以上、ふざけたことをしたら、叱られるのは間違いなし!
(――ふたりきりだからこそ、マジメに病人役に徹するなんて、してられるかよ。恋人同士、イチャイチャしなければな!)
「カール、エッチしたい」
「は? なにを仰ってるんですか」
分厚い本から視線を外さず、怒気を含んだ声で返事をした時点で、俺の計画どおりだったりする。
「ベッドでじっとしていられない、この俺を拘束してもいいぞ」
カールは眉をしかめ、ひどく憂鬱そうな面持ちのまま、視線だけで俺を見た。
「ベッドでお静かに寝ているアンドレア様を、わざわざ縛りあげるなんて、そんなムダなことをいたしません」
「いい拘束の仕方があるんだが、やってみないか? おまえの知識が増えるだろ?」
おもしろい提案をした瞬間、不機嫌なカールの唇の端が細かく痙攣する。
「私の知識を増やそうと、いろいろお考えになることは大変嬉しいのですが、今はそのときではございません」
徹底的な拒否――俺の告げる言葉に、きちんと返事をしてくれる、クソがつくほどマジメなカールに、さらに追い討ちをかける。
「カールの早漏を治す手助けを、俺としては考えているのになぁ!」
「うっ!」
思いきり狼狽し、顔を真っ赤にして言葉に詰まるカールは、口をパクパク動かすだけで、声にならないらしい。
「俺はカールと一緒にイキたんだけどさ」
「くっ……」
「カールの早さに合わせるなんて、そんなのどう頑張ってもできないんだよなぁ」
「私だって、好きで早くなったんじゃありませんっ」
分厚い本で真っ赤な顔を隠し、震える声で返事をされた。恥ずかしさと悲しさがまじったそれは、俺の耳に新鮮に響いた。
「俺の補佐をするのに、カールがすごく忙しかったことを知ってるけど、それ以外の理由はあるのか?」
「……言いたくありません」
「俺は胸の内を、全部晒しているのになぁ。恋人の苦悩くらい、俺に背負わせてくれたっていいんじゃないか?」
猫なで声で語りかけたら、分厚い本がカールの顔の前から降ろされ、抱え込むように胸の前で抱きしめる。もう顔が赤くはなかったが、少しだけ唇を尖らせている様子で、すごく言いたくないのが手に取るようにわかった。
「カール、俺が隠し事をしたら、どんな気持ちになる?」
「そんなこと、仰らないでください。私の醜い想いを、知られたくないのです。こうして両想いになったのですから、もういいじゃないですか」
寝ていた俺は勢いよく起き上がり、カールが胸に抱えている分厚い本を取り上げ、ベッドに放り投げてから、細い躰を抱き寄せた。
「俺は欲張りなんだ。現在と未来だけじゃなく、おまえが抱いた過去の気持ちも欲してる」
「アンドレア様……」
カールがため息をつきながら、俺に縋りつく。寝室の鍵は、たぶんかかっていないだろう。抱き合っている俺たちを誰かに見られたら、ふらついたところをカールが抱き留めたことにすればいいかと、いいわけを考えた。
自分で計画したことなれど、病人としてベッドで横たわった状態でいるのは、ものすご~くヒマすぎて、すぐに飽きてしまった。
(寝てばかりだと腰が痛くなる。だからって元気にそこら辺を歩いたら、周りに不審に思われるのは、馬鹿な俺だってわかるけどさ。3ヶ月後に死ぬ人間なんだから、重症に思われないといけないなんて大変だ……)
ベッドの傍らで、古城の管理についての専門書を真剣に読みふけるカールが、お目付け役として鎮座している以上、ふざけたことをしたら、叱られるのは間違いなし!
(――ふたりきりだからこそ、マジメに病人役に徹するなんて、してられるかよ。恋人同士、イチャイチャしなければな!)
「カール、エッチしたい」
「は? なにを仰ってるんですか」
分厚い本から視線を外さず、怒気を含んだ声で返事をした時点で、俺の計画どおりだったりする。
「ベッドでじっとしていられない、この俺を拘束してもいいぞ」
カールは眉をしかめ、ひどく憂鬱そうな面持ちのまま、視線だけで俺を見た。
「ベッドでお静かに寝ているアンドレア様を、わざわざ縛りあげるなんて、そんなムダなことをいたしません」
「いい拘束の仕方があるんだが、やってみないか? おまえの知識が増えるだろ?」
おもしろい提案をした瞬間、不機嫌なカールの唇の端が細かく痙攣する。
「私の知識を増やそうと、いろいろお考えになることは大変嬉しいのですが、今はそのときではございません」
徹底的な拒否――俺の告げる言葉に、きちんと返事をしてくれる、クソがつくほどマジメなカールに、さらに追い討ちをかける。
「カールの早漏を治す手助けを、俺としては考えているのになぁ!」
「うっ!」
思いきり狼狽し、顔を真っ赤にして言葉に詰まるカールは、口をパクパク動かすだけで、声にならないらしい。
「俺はカールと一緒にイキたんだけどさ」
「くっ……」
「カールの早さに合わせるなんて、そんなのどう頑張ってもできないんだよなぁ」
「私だって、好きで早くなったんじゃありませんっ」
分厚い本で真っ赤な顔を隠し、震える声で返事をされた。恥ずかしさと悲しさがまじったそれは、俺の耳に新鮮に響いた。
「俺の補佐をするのに、カールがすごく忙しかったことを知ってるけど、それ以外の理由はあるのか?」
「……言いたくありません」
「俺は胸の内を、全部晒しているのになぁ。恋人の苦悩くらい、俺に背負わせてくれたっていいんじゃないか?」
猫なで声で語りかけたら、分厚い本がカールの顔の前から降ろされ、抱え込むように胸の前で抱きしめる。もう顔が赤くはなかったが、少しだけ唇を尖らせている様子で、すごく言いたくないのが手に取るようにわかった。
「カール、俺が隠し事をしたら、どんな気持ちになる?」
「そんなこと、仰らないでください。私の醜い想いを、知られたくないのです。こうして両想いになったのですから、もういいじゃないですか」
寝ていた俺は勢いよく起き上がり、カールが胸に抱えている分厚い本を取り上げ、ベッドに放り投げてから、細い躰を抱き寄せた。
「俺は欲張りなんだ。現在と未来だけじゃなく、おまえが抱いた過去の気持ちも欲してる」
「アンドレア様……」
カールがため息をつきながら、俺に縋りつく。寝室の鍵は、たぶんかかっていないだろう。抱き合っている俺たちを誰かに見られたら、ふらついたところをカールが抱き留めたことにすればいいかと、いいわけを考えた。
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