ピロトークを聴きながら

相沢蒼依

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ピロトーク:ファーストコンタクト②

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 ムカつく――助けに入ったハズなのに、何故だか上手く助けられてしまったのは、俺のほうだ。そんな不甲斐ない自分が、ムカついて堪らない。

 しかも自分の恋人が頼りにしたのが、あの葩御 稜の恋人だった。だって視線が俺じゃなく、克巳と呼ばれた人に、しっかりと向けられたからな。

『俺って、頼りにならない男なのかよ』

 そう言いかけそうになり、慌ててグッと言葉を飲み込む。

 あの場を、何とかするには――そう考えて瞬時に判断し、涼一がセレクトした結果だ。

 葩御 稜が恋人に対し、グサグサとモノを申しながら、俺にもちゃっかり口撃してきた。そのせいで簡単に頭に血が上ってしまった、冷静でいられない俺は使えないと判断をした涼一を、これ以上責めるのは、筋違いなんだよな。

「……葩御 稜、すごかったね」

「んあ?」

 イライラしながら考えごとに没頭していたせいで、唐突に告げられた言葉の意味が、まったく理解出来ない。

「だって僕の顔を知っていたのって、ビックリだと思わない? 公にしてない情報なのに、どうやって調べたんだろうね」

 ――確かに。言われてみたら、そうだよな。涼一の過去のことを考え、顔写真については、一切隠しているのだから。

「もしかしたらって、いろいろ考えたんだけど、あの人は僕らが思っているよりも、仕事熱心なのかもなって」

「どうして、そう思った?」

「ん~。やっぱり対談するったら、必要最低限のプロフィールを調べなきゃって、僕も思ったし。それこそ僕の情報なんて、一般人並のことしか分からないワケでしょ。それを徹底的に調べ上げた上に、写真まで確認してるって、すごいと思ったんだ」

 涼一の考えに頷きながら、内心驚かされた。あの短いやり取りの中で、コイツはそんなことを感じていたんだなって。

 俺は自分のことでいっぱいいっぱいで、そんなことすら気づけずにいたっていうのに……。

「涼一は一般人並じゃないって。しっかり作家として盛大にデビューして、頑張っているんだから」

 態度が悪かった自分をきちんと反省し、やっと微笑むことが出来た俺を見て、向かい側にいる涼一も、ふわりと笑ってくれる。

「だけどこんな場所で逢うなんて、本当にビックリしちゃったね。ビックリついでに、お腹が空いちゃった。まだかなぁ?」

「……悪いな、気を遣わせて」

「何、言ってるの郁也さん。助けられたのは僕なのに、ありがとう」

「だが――」

 実際に助けたのは、俺じゃないのに。

「あのふたりにいきなり囲まれて、どうしようか困っていたから。それに、ここから離れてる場所なのに、いち早く気がついて助けてくれたのって、何気に嬉しかったんだよ」

「涼一……」

「僕のことを、見ててくれてるんだなって。こういうところで、再確認出来ちゃうんだよね。愛されてるなぁってさ」

「…………」

 ああ勿論、愛しているさ――。

 そう口に出してやれば、涼一が喜んでくれることが分かるのに、無駄に照れてしまって、言葉にもなりゃしない。

「お待たせいたしました!」

 何か言わなければと口を開きかけたとき、注文した料理が届けられた。

「わぁ、ナイスなタイミング! お腹、空きまくってたから。郁也さん、僕のおろしハンバーグ味見する?」

 ああと短く返事をして、箸を手に取る。俺としては、ナイスなタイミングじゃない。

「そういえば連載中の執筆に関して、スケジュール進行で気になることがあってね。あのさ――」

 突然、仕事モードに切り替わった涼一。やっぱり気を遣わせてしまっている。俺の心を浮上させるべく、いろいろな話題で持ち上げようと、必死になっているからだ。

 余裕のない小さい自分が、本当にイヤになる。

 しかしこの日だけはどうにもならず、胸の中に重たい鉛をずっしりと抱えながら、涼一の話に耳を傾けたのだった。
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