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Lunch編
今川真人side2
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***
いつもより重い足取りで、昨日使用した会議室に向かう。
今日もここで弁当を食べようと思ったからなんだが、間違いなく朝比奈さんが現れるであろう。
昨日の今日で、顔を合わせるのがハズカシイ。何だか彼女の前だと、醜態晒しまくりだな。
扉を開けると、中から元気な声がした。
「こんにちは、今川部長!」
心の準備出来てなかったので、ビックリしたのなんの……
(――なぜ、既にいるんだ?)
にっこり微笑む彼女に顔を引きつらせつつ、笑顔を返す。
「こんにちは、朝比奈さん。よくここで食べるのが分かったね……」
彼女の行動力は、おじさんの心臓に悪い。まるで、お化け屋敷に入ったみたいな衝撃に近いかも。
朝比奈さんは、照れたように笑いかけたきた。
「きっと、運命なんですよ」
偶然も重なれば運命になるってか? 疑わしげな目で彼女を見るしかない。
「なぁんちゃって。下調べして来ただけなんです」
朝比奈さんの隣を一コ分の席を空けて座ってやった。なのに彼女は空けた席を詰めて、俺のすぐ隣に座る。
その行動にギョッとしていると、頬杖ついて楽しそうに俺の顔を見つめてきた。
「なっ、何でしょうか?」
「どうして距離をとるのかなぁと思って」
普段そんな風に見つめられる機会がないので、妙にドギマギする。顔が溶ける。
「何となく、です……」
「そうやって変に逃げると、追いかけたくなりますよ」
「そんなことしておじさんをからかって、何が面白いですか?」
「からかってないですよ。だって好きなんだもん」
さらりとスゴいことを口にした彼女の言葉に、かちんと固まった。なのに彼女は至って冷静で、妙に淡々としていた。
言い慣れてるからか? 他の男にも平気で告白して、気を持たせておいて捨てていく――だから平然としていられるのかもしれないと、勝手に解釈した。
「私みたいなコにこんなことを言われて今川部長、すっごく迷惑ですよね」
ポツリと言う彼女の顔を見ると、リンゴのように頬を染めていた。
いかん――こっちまで赤面しそうだ。あたふたしながら、慌てて視線をそらすしかない。
「迷惑なんて思ってませんよ、だけど」
「それ以上言わないで下さい。私は自分の気持ちを伝えることが出来ただけで、もう満足なんです」
胸に手をあてて、瞳を閉じながら語り出した。
「自分から告白したのって実は二回目で、胸がいっぱいで、どうしていいか分からないです」
「朝比奈さん……」
「迷惑じゃないって、言ってもらえただけマシかも。気を遣って頂き、有り難うございます」
嬉しそうに語る彼女に俺が対応を困っていると、気を利かせて話題転換をすべく話をすり替える。
「あのお弁当交換して、食べませんか?」
「……はい?」
「今川部長が作った、お弁当の味付けが知りたいなと思って。おじいちゃんに作るお弁当の、味付けの勉強をさせて下さい」
そう言って、丁寧に頭を下げてきた。
「勉強になるかどうか分かりませんが、どうぞ」
自分の弁当を差し出したら、彼女も同じように弁当を差し出す。蓋を開けてみると、シンプルなおかずが入っていた。
「えへへ、お口に合えば、いいんですけど……」
朝比奈さんも俺の弁当箱を開けて、いそいそと食べ始めた。横目でその姿を確認しながら彼女が作った、きんぴらごぼうに箸をつけてみる。
「美味い……」
絶妙な辛さが、美味しさを引き立てていた――意外に家庭的な味つけだ。
「今川部長の作ったこの卵焼き、とっても美味しいです。ダシの味が何とも言えないですね。自分が作るのと、やっぱり違うなぁ」
昨日とうって変わって、自然と会話が弾んでいった。仕事以外でこんな風に誰かと会話したのは、久しぶりじゃなかろうか。
あっという間にふたりして、弁当を食べ終えてしまった。
俺がいつものように椅子を集めていると、当たり前のように彼女がそれに座った。
「はい、どうぞ」
「…………」
「昨日みたく、頭が椅子から落ちちゃうかもしれないですよ? 万が一誰かが入って来ても、机の影になるから見えないですし、きっと大丈夫です」
そういう問題じゃないんだが――
躊躇している俺の頭をわしっと強引に掴むと、自分の膝の上に乗せる。目の前には巨大なアレがあって、慌てて横を向いた。
「時間になったら、起こしますね」
目をつぶるが当然、寝られたもんじゃない。俺の常識を超えた彼女の行動は、阻むことが出来なくて非常に厄介だった。
厄介なんだけど全然迷惑じゃないという、ワケの分からないもので。まるでこの膝枕みたいだ――
そんなくだらないことをグルグル考えている内に、いつの間に眠ってしまった俺。
寝ている俺の頬に彼女が唇を寄せていたなんてことは、露知らずにいた。
いつもより重い足取りで、昨日使用した会議室に向かう。
今日もここで弁当を食べようと思ったからなんだが、間違いなく朝比奈さんが現れるであろう。
昨日の今日で、顔を合わせるのがハズカシイ。何だか彼女の前だと、醜態晒しまくりだな。
扉を開けると、中から元気な声がした。
「こんにちは、今川部長!」
心の準備出来てなかったので、ビックリしたのなんの……
(――なぜ、既にいるんだ?)
にっこり微笑む彼女に顔を引きつらせつつ、笑顔を返す。
「こんにちは、朝比奈さん。よくここで食べるのが分かったね……」
彼女の行動力は、おじさんの心臓に悪い。まるで、お化け屋敷に入ったみたいな衝撃に近いかも。
朝比奈さんは、照れたように笑いかけたきた。
「きっと、運命なんですよ」
偶然も重なれば運命になるってか? 疑わしげな目で彼女を見るしかない。
「なぁんちゃって。下調べして来ただけなんです」
朝比奈さんの隣を一コ分の席を空けて座ってやった。なのに彼女は空けた席を詰めて、俺のすぐ隣に座る。
その行動にギョッとしていると、頬杖ついて楽しそうに俺の顔を見つめてきた。
「なっ、何でしょうか?」
「どうして距離をとるのかなぁと思って」
普段そんな風に見つめられる機会がないので、妙にドギマギする。顔が溶ける。
「何となく、です……」
「そうやって変に逃げると、追いかけたくなりますよ」
「そんなことしておじさんをからかって、何が面白いですか?」
「からかってないですよ。だって好きなんだもん」
さらりとスゴいことを口にした彼女の言葉に、かちんと固まった。なのに彼女は至って冷静で、妙に淡々としていた。
言い慣れてるからか? 他の男にも平気で告白して、気を持たせておいて捨てていく――だから平然としていられるのかもしれないと、勝手に解釈した。
「私みたいなコにこんなことを言われて今川部長、すっごく迷惑ですよね」
ポツリと言う彼女の顔を見ると、リンゴのように頬を染めていた。
いかん――こっちまで赤面しそうだ。あたふたしながら、慌てて視線をそらすしかない。
「迷惑なんて思ってませんよ、だけど」
「それ以上言わないで下さい。私は自分の気持ちを伝えることが出来ただけで、もう満足なんです」
胸に手をあてて、瞳を閉じながら語り出した。
「自分から告白したのって実は二回目で、胸がいっぱいで、どうしていいか分からないです」
「朝比奈さん……」
「迷惑じゃないって、言ってもらえただけマシかも。気を遣って頂き、有り難うございます」
嬉しそうに語る彼女に俺が対応を困っていると、気を利かせて話題転換をすべく話をすり替える。
「あのお弁当交換して、食べませんか?」
「……はい?」
「今川部長が作った、お弁当の味付けが知りたいなと思って。おじいちゃんに作るお弁当の、味付けの勉強をさせて下さい」
そう言って、丁寧に頭を下げてきた。
「勉強になるかどうか分かりませんが、どうぞ」
自分の弁当を差し出したら、彼女も同じように弁当を差し出す。蓋を開けてみると、シンプルなおかずが入っていた。
「えへへ、お口に合えば、いいんですけど……」
朝比奈さんも俺の弁当箱を開けて、いそいそと食べ始めた。横目でその姿を確認しながら彼女が作った、きんぴらごぼうに箸をつけてみる。
「美味い……」
絶妙な辛さが、美味しさを引き立てていた――意外に家庭的な味つけだ。
「今川部長の作ったこの卵焼き、とっても美味しいです。ダシの味が何とも言えないですね。自分が作るのと、やっぱり違うなぁ」
昨日とうって変わって、自然と会話が弾んでいった。仕事以外でこんな風に誰かと会話したのは、久しぶりじゃなかろうか。
あっという間にふたりして、弁当を食べ終えてしまった。
俺がいつものように椅子を集めていると、当たり前のように彼女がそれに座った。
「はい、どうぞ」
「…………」
「昨日みたく、頭が椅子から落ちちゃうかもしれないですよ? 万が一誰かが入って来ても、机の影になるから見えないですし、きっと大丈夫です」
そういう問題じゃないんだが――
躊躇している俺の頭をわしっと強引に掴むと、自分の膝の上に乗せる。目の前には巨大なアレがあって、慌てて横を向いた。
「時間になったら、起こしますね」
目をつぶるが当然、寝られたもんじゃない。俺の常識を超えた彼女の行動は、阻むことが出来なくて非常に厄介だった。
厄介なんだけど全然迷惑じゃないという、ワケの分からないもので。まるでこの膝枕みたいだ――
そんなくだらないことをグルグル考えている内に、いつの間に眠ってしまった俺。
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