37 / 47
救愛
今川目線6
しおりを挟む
***
鎌田さん達と別れて蓮を自宅まで送るのに、一緒に並んでゆっくりと歩いていた。
「マット……」
「はい?」
何だか沈んでる蓮――さっき鎌田さんとやり合ってた勢いは、どこへいったんだ? もしや、疲れてしまったのだろうか。
「山田の彼氏の、彼女ってさ」
「山田くんの相棒の彼女ですね」
「どこにでもいそうな、ごく普通の女の子だったよね……」
それは見た目のことを言ってる? 性格は、かなり個性的でしたが。
「普通と言えば、普通なんですかね」
「あの人、相当なイケメンじゃん。当然選ぶ彼女は美人系か可愛い系かなって、どこかで思ってたんだ。だけど普通の中の普通なコで、それって何でだろうって思ったの」
難しそうな顔をしてる蓮を見たら、大きな瞳で俺を食い入るように見つめる。
「普通だと思ってたのにさアイツの前だと、すっごく可愛いんだよね。奴が彼女に向かって辛辣なことを言ってても、そんなふたりはお似合いだなぁって思ってしまって……」
そして、寂しげに目を伏せた。
「私とマットじゃ、親子に見えてもしょうがないかなって。私、お子様な頭してるから」
「彼が言ったことを、気にしてたんですね」
そんな蓮を、そっと抱き寄せる。
「帰り際に、いきなり彼女が話しかけてきたんです」
「……何の話をしたの?」
耳元に唇を近づけて、それを伝えてあげた。
「とてもお似合いのカップルですね、まるで夫婦みたい。だそうです」
「えっ!? ホントに?」
「ええ。私も今川さん達みたいなカップルになりたいですと、彼女は言ってました」
沈んでた蓮が途端に元気になる。ぎゅっと俺に抱きついてきた。
「やっぱ見る人が見れば、分かるものなのよ!」
「そうですね。だけど彼女と喋ってる最中、鎌田さんからレーザービームが出て、死にそうでしたが……」
彼女がコッソリ教えてくれた。気に入らないことがあると、それがびしばしとメガネから出てくるらしい。
「え~っ、そんなの出てた?」
「会社で会ったときから、君にばっちり放たれてましたよ」
もしかしたらKYな人には、あれが通じないのかもしれない。空気をあえて読まないから、あの視線が全然、気にならないのだろう。
「蓮は史上最強な彼女です。俺の自慢ですよ」
蓮の右手に、自分の左手を絡めて歩き出す。そんな俺の手をぎゅっと力一杯握り締め、嬉しそうにしていた。
自宅に近づくにつれて、否応なしに緊張感が増してしまう。離れがたいのもあるが何かしら、とある行動をしないと……これは絶対だな。
誰かさんの機嫌が悪くなってしまうから。
そして自宅前に到着――もし会長に見られたりしたら、間違いなく殺されてしまうだろう。抱き締めておやすみを言うだけなら、すぐに終わるのに。
かなりドキドキしつつ蓮の体に腕を回そうとしたら、俺の首に腕を回して、ちゅっとキスされてしまった。
――会長に見られたらっ!?
焦る俺を他所に、深く唇を合わせてくれる。嬉しいんだけど正直困ります。
「えへへ。マットが奥手だから、私が襲っちゃった」
照れながら俺の体に腕を回して抱き締めてきた。そんな小さな体を、俺も抱き締め返してあげる。
「ホントは奥手じゃないですよ」
「知ってる。じゃないと鍵がかからない会議室で、あんなことしないよね」
「何だか、離れがたいです」
「私もだよ」
お互い視線を合わせると、どちらともなく唇を合わせた。
「……いい加減にしないとダメですね」
思い切って腕を離すと、その腕を蓮が掴む。
「マット、山田くんのことが一段落ついたら、一緒に旅行に出掛けない? 泊まりがけで、さ」
「蓮……?」
「私、1日マットを独占したいんだけど、そういうのイヤかな?」
彼女の柔らかい頬を、右手でそっと撫でた。温かいぬくもりが、てのひらにじわりと伝わってくる。
「蓮が望むのなら、行きましょうか」
「有り難うマット! おやすみなさいっ」
俺の腕を勢いよく離してから、家の中に入って行った。まるで寂しい気持ちを、断ち切るかのように。
別れ際に何故だか、生暖かい風が吹く夜だった。
鎌田さん達と別れて蓮を自宅まで送るのに、一緒に並んでゆっくりと歩いていた。
「マット……」
「はい?」
何だか沈んでる蓮――さっき鎌田さんとやり合ってた勢いは、どこへいったんだ? もしや、疲れてしまったのだろうか。
「山田の彼氏の、彼女ってさ」
「山田くんの相棒の彼女ですね」
「どこにでもいそうな、ごく普通の女の子だったよね……」
それは見た目のことを言ってる? 性格は、かなり個性的でしたが。
「普通と言えば、普通なんですかね」
「あの人、相当なイケメンじゃん。当然選ぶ彼女は美人系か可愛い系かなって、どこかで思ってたんだ。だけど普通の中の普通なコで、それって何でだろうって思ったの」
難しそうな顔をしてる蓮を見たら、大きな瞳で俺を食い入るように見つめる。
「普通だと思ってたのにさアイツの前だと、すっごく可愛いんだよね。奴が彼女に向かって辛辣なことを言ってても、そんなふたりはお似合いだなぁって思ってしまって……」
そして、寂しげに目を伏せた。
「私とマットじゃ、親子に見えてもしょうがないかなって。私、お子様な頭してるから」
「彼が言ったことを、気にしてたんですね」
そんな蓮を、そっと抱き寄せる。
「帰り際に、いきなり彼女が話しかけてきたんです」
「……何の話をしたの?」
耳元に唇を近づけて、それを伝えてあげた。
「とてもお似合いのカップルですね、まるで夫婦みたい。だそうです」
「えっ!? ホントに?」
「ええ。私も今川さん達みたいなカップルになりたいですと、彼女は言ってました」
沈んでた蓮が途端に元気になる。ぎゅっと俺に抱きついてきた。
「やっぱ見る人が見れば、分かるものなのよ!」
「そうですね。だけど彼女と喋ってる最中、鎌田さんからレーザービームが出て、死にそうでしたが……」
彼女がコッソリ教えてくれた。気に入らないことがあると、それがびしばしとメガネから出てくるらしい。
「え~っ、そんなの出てた?」
「会社で会ったときから、君にばっちり放たれてましたよ」
もしかしたらKYな人には、あれが通じないのかもしれない。空気をあえて読まないから、あの視線が全然、気にならないのだろう。
「蓮は史上最強な彼女です。俺の自慢ですよ」
蓮の右手に、自分の左手を絡めて歩き出す。そんな俺の手をぎゅっと力一杯握り締め、嬉しそうにしていた。
自宅に近づくにつれて、否応なしに緊張感が増してしまう。離れがたいのもあるが何かしら、とある行動をしないと……これは絶対だな。
誰かさんの機嫌が悪くなってしまうから。
そして自宅前に到着――もし会長に見られたりしたら、間違いなく殺されてしまうだろう。抱き締めておやすみを言うだけなら、すぐに終わるのに。
かなりドキドキしつつ蓮の体に腕を回そうとしたら、俺の首に腕を回して、ちゅっとキスされてしまった。
――会長に見られたらっ!?
焦る俺を他所に、深く唇を合わせてくれる。嬉しいんだけど正直困ります。
「えへへ。マットが奥手だから、私が襲っちゃった」
照れながら俺の体に腕を回して抱き締めてきた。そんな小さな体を、俺も抱き締め返してあげる。
「ホントは奥手じゃないですよ」
「知ってる。じゃないと鍵がかからない会議室で、あんなことしないよね」
「何だか、離れがたいです」
「私もだよ」
お互い視線を合わせると、どちらともなく唇を合わせた。
「……いい加減にしないとダメですね」
思い切って腕を離すと、その腕を蓮が掴む。
「マット、山田くんのことが一段落ついたら、一緒に旅行に出掛けない? 泊まりがけで、さ」
「蓮……?」
「私、1日マットを独占したいんだけど、そういうのイヤかな?」
彼女の柔らかい頬を、右手でそっと撫でた。温かいぬくもりが、てのひらにじわりと伝わってくる。
「蓮が望むのなら、行きましょうか」
「有り難うマット! おやすみなさいっ」
俺の腕を勢いよく離してから、家の中に入って行った。まるで寂しい気持ちを、断ち切るかのように。
別れ際に何故だか、生暖かい風が吹く夜だった。
0
あなたにおすすめの小説
一億円の花嫁
藤谷 郁
恋愛
奈々子は家族の中の落ちこぼれ。
父親がすすめる縁談を断り切れず、望まぬ結婚をすることになった。
もうすぐ自由が無くなる。せめて最後に、思いきり贅沢な時間を過ごそう。
「きっと、素晴らしい旅になる」
ずっと憧れていた高級ホテルに到着し、わくわくする奈々子だが……
幸か不幸か!?
思いもよらぬ、運命の出会いが待っていた。
※エブリスタさまにも掲載
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
距離感ゼロ〜副社長と私の恋の攻防戦〜
葉月 まい
恋愛
「どうするつもりだ?」
そう言ってグッと肩を抱いてくる
「人肌が心地良くてよく眠れた」
いやいや、私は抱き枕ですか!?
近い、とにかく近いんですって!
グイグイ迫ってくる副社長と
仕事一筋の秘書の
恋の攻防戦、スタート!
✼••┈•• ♡ 登場人物 ♡••┈••✼
里見 芹奈(27歳) …神蔵不動産 社長秘書
神蔵 翔(32歳) …神蔵不動産 副社長
社長秘書の芹奈は、パーティーで社長をかばい
ドレスにワインをかけられる。
それに気づいた副社長の翔は
芹奈の肩を抱き寄せてホテルの部屋へ。
海外から帰国したばかりの翔は
何をするにもとにかく近い!
仕事一筋の芹奈は
そんな翔に戸惑うばかりで……
曖昧な距離で愛している
山田森湖
恋愛
結婚4年目のアラサー夫婦、拓海と美咲。仲は悪くないが、ときめきは薄れ、日常は「作業」になっていた。夫には可愛い後輩が現れ、妻は昔の恋人と再会する。揺れる心、すれ違う想い。「恋人に戻りたい」――そう願った二人が辿り着いた答えは、意外なものだった。曖昧で、程よい距離。それが、私たちの愛の形。
Marry Me?
美凪ましろ
恋愛
――あの日、王子様があたしの目の前に現れた。
仕事が忙しいアパレル店員の彼女と、王子系美青年の恋物語。
不定期更新。たぶん、全年齢でいけるはず。
※ダイレクトな性描写はありませんが、ややそっち系のトークをする場面があります。
※彼の過去だけ、ダークな描写があります。
■画像は、イトノコさまの作品です。
https://www.pixiv.net/artworks/85809405
ダブル シークレットベビー ~御曹司の献身~
菱沼あゆ
恋愛
念願のランプのショップを開いた鞠宮あかり。
だが、開店早々、植え込みに猫とおばあさんを避けた車が突っ込んでくる。
車に乗っていたイケメン、木南青葉はインテリアや雑貨などを輸入している会社の社長で、あかりの店に出入りするようになるが。
あかりには実は、年の離れた弟ということになっている息子がいて――。
美しき造船王は愛の海に彼女を誘う
花里 美佐
恋愛
★神崎 蓮 32歳 神崎造船副社長
『玲瓏皇子』の異名を持つ美しき御曹司。
ノースサイド出身のセレブリティ
×
☆清水 さくら 23歳 名取フラワーズ社員
名取フラワーズの社員だが、理由があって
伯父の花屋『ブラッサムフラワー』で今は働いている。
恋愛に不器用な仕事人間のセレブ男性が
花屋の女性の夢を応援し始めた。
最初は喧嘩をしながら、ふたりはお互いを認め合って惹かれていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる