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act:意外な優しさ
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「――残念でしたね」
結局、私が先週見たバンドは出なかった。
「店員オススメの中に入ってなかったんですから、きっと大したことはないんでしょう」
なぜだか楽しそうに瞳を細めながら、鎌田先輩が言う。
「ホントに良かったんですよ。歌詞に共感が出来るみたいな」
「では、どんなフレーズなんですか?」
「うっ……」
「覚えてないということは、その程度のレベルなんです。いい音楽を聞くと必ずどこかのフレーズやメロディーが、心の中に残るものですから」
そう言ってスーツの上着を脱いで、夜風にあたる。ちょっとした仕草にドキッとしてしまい、直視ができない。頬に熱を感じ、思わず俯いてしまった。
「だから君に、俺のバンドがどうだったかを聞いてみたんですよ」
「ううっ、すみません……」
「しょうのない人ですね。そんな君だからしっかり聞いてほしくて、予定表を渡したんです。見に来てくれますか?」
数歩先前を歩く鎌田先輩が、ゆっくりと振り返る。
「……友達とその内、お伺いします」
どんな顔をしていいのか分からず、俯いたまま答える。さっきから鎌田先輩の顔が、マトモに見られないでいた。
「じゃあそのときは、ぜひとも感想をお願いします」
呆れた声と一緒に、ため息が耳に漏れ聞こえてきて。その雰囲気に恐るおそる顔を上げると、優しい眼差しとぶつかった。
「遅くなりましたので送ります」
ふわりと笑って視線を逸らし、私の前を颯爽と歩く。入り組んだ道を迷うことなく、まっすぐ歩くことを不思議に思った。
「あの……私の家、ご存知なんですか?」
「君の自宅だけでなく、デスク周りの人間の住所と電話番号は頭に入っています。何かあったときのためにです」
私の問いかけを、前を向いたまま答える。当然、どんな表情をしているか全然分からない。
「……そうなんですか」
仕事関連がしっかりしてる人だからなぁ、私だけじゃないのね。
「……よくできた上司だと誉めて下さい」
「えっと――?」
「バンドの俺と仕事してる俺、どっちがイイですか?」
目を細めて笑いながら振り向きざまにされてしまった突飛な質問に、どう答えていいのか分からない。正直、お口が開きっぱなしである。
「プッ、可笑しな顔してますよ」
片側の口角を上げて、さもおかしそうに笑いながら先を歩く鎌田先輩。自宅に着くまでマトモな会話はなかったけど、自分の目に映る大きな背中が何かを語っていたような気がした。
明日職場で、普通に会話ができるかな――?
眠りにつく前に今日あった出来事を考えただけで、ずっとドキドキしっぱなしだった。
――いかん、興奮して眠れない……
「――残念でしたね」
結局、私が先週見たバンドは出なかった。
「店員オススメの中に入ってなかったんですから、きっと大したことはないんでしょう」
なぜだか楽しそうに瞳を細めながら、鎌田先輩が言う。
「ホントに良かったんですよ。歌詞に共感が出来るみたいな」
「では、どんなフレーズなんですか?」
「うっ……」
「覚えてないということは、その程度のレベルなんです。いい音楽を聞くと必ずどこかのフレーズやメロディーが、心の中に残るものですから」
そう言ってスーツの上着を脱いで、夜風にあたる。ちょっとした仕草にドキッとしてしまい、直視ができない。頬に熱を感じ、思わず俯いてしまった。
「だから君に、俺のバンドがどうだったかを聞いてみたんですよ」
「ううっ、すみません……」
「しょうのない人ですね。そんな君だからしっかり聞いてほしくて、予定表を渡したんです。見に来てくれますか?」
数歩先前を歩く鎌田先輩が、ゆっくりと振り返る。
「……友達とその内、お伺いします」
どんな顔をしていいのか分からず、俯いたまま答える。さっきから鎌田先輩の顔が、マトモに見られないでいた。
「じゃあそのときは、ぜひとも感想をお願いします」
呆れた声と一緒に、ため息が耳に漏れ聞こえてきて。その雰囲気に恐るおそる顔を上げると、優しい眼差しとぶつかった。
「遅くなりましたので送ります」
ふわりと笑って視線を逸らし、私の前を颯爽と歩く。入り組んだ道を迷うことなく、まっすぐ歩くことを不思議に思った。
「あの……私の家、ご存知なんですか?」
「君の自宅だけでなく、デスク周りの人間の住所と電話番号は頭に入っています。何かあったときのためにです」
私の問いかけを、前を向いたまま答える。当然、どんな表情をしているか全然分からない。
「……そうなんですか」
仕事関連がしっかりしてる人だからなぁ、私だけじゃないのね。
「……よくできた上司だと誉めて下さい」
「えっと――?」
「バンドの俺と仕事してる俺、どっちがイイですか?」
目を細めて笑いながら振り向きざまにされてしまった突飛な質問に、どう答えていいのか分からない。正直、お口が開きっぱなしである。
「プッ、可笑しな顔してますよ」
片側の口角を上げて、さもおかしそうに笑いながら先を歩く鎌田先輩。自宅に着くまでマトモな会話はなかったけど、自分の目に映る大きな背中が何かを語っていたような気がした。
明日職場で、普通に会話ができるかな――?
眠りにつく前に今日あった出来事を考えただけで、ずっとドキドキしっぱなしだった。
――いかん、興奮して眠れない……
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