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意外な一面 Wedding狂想曲(ラプソディ)
6(鎌田目線)3
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「まったく――。君のしつこさには、ほとほと呆れました……」
現在寝室へ移動して、一緒に並んで布団に入る。ゲッソリした顔の俺を尻目に、とても嬉しそうな君の顔が傍にあった。
「うふふ。あんなに困った顔の正仁さんを見るのが、すっごく楽しくて」
「……俺、Mっ気ないです」
そう、淡々と答えるしかない。
あの後、名前を連呼して丁重にお引き取り願った。ゆえに手を出していません。
「せっかく名前で呼んでくれたのに、もう元に戻してるし」
「すみません、不器用な男なんで。使い分けがうまくできないんです」
君のことになると、冷静でいられなくなりますから。
「しかも欲求不満がたまってるくせに、変に我慢するし」
「一度決めたことは、とことん貫きたいんです」
これも君の綺麗な花嫁姿を見るためだ。尚更頑張らなければなるまい――
「んもぅ、堅いんだから」
「硬くない、断じて硬くありませんっ!」
俺が必死に言いきると、君は不思議そうに首を傾げる。
「頭がカタいっていう意味だったんだけど?」
「あ……?」
自分で墓穴を掘ってしまった……。かなり恥ずかしい――だが俺の顔を見てぽかんとしているということは、ナニが硬いのか分かっていないということだろう。あぶない、あぶない!
「あの正仁さん、聞いてみたいことがあるの」
「今日は質問のオンパレードですね、何でしょうか?」
暗闇の中、君の顔をじっと見つめてあげた。
「えっとですね、私のどこが良くて好きになったのかなって。それがずっと疑問だったんです」
「………」
驚いた――俺が思っていたことを、君も考えていたとは。一緒に暮らすと、考え方が似てくるのだろうか?
「正仁さん?」
「俺も同じことを考えていたので、ちょっと驚いただけです」
「そうだったんだ……」
「二人してマリッジブルーなんて、おかしな話ですね」
君の頭に手を乗せて、髪をゆっくりと撫でてあげる。
「君を意識し始めたのは確か、新人研修を行ってから半年後くらいでしょうか。他の新人が俺の元を去って行く中で、ひとり歯を食いしばって頑張っている姿に、無性にときめいてしまいました」
「だけどあのときは、めちゃくちゃ正仁さんを嫌ってました。新人イビりをしているように、感じてしまったから」
「君が自分の限界を作ることなく、ひた向きに努力を続ける姿は、俺の励みにもなったんですよ」
だから仕事とバンドという二足のわらじを、履きこなすことができたんだ。
「会社でカマキリのイメージだった正仁さんが、ライブでスポットライトを浴びて歌ってる姿を見た瞬間に、雷を打たれたようにビビっときました。意外な一面すぎて衝撃的だったなぁ」
大嫌いが前提条件だったのに、好きになってくれたなんて――
「それでは俺がバンドをやってなかったら、永遠に片想いのままだったんですね」
「多分……。よっぽど何かドキドキするようなアクシデントがない限り、きっと無理だと思います」
「時として運命の神様は、粋なことをしてくれます」
俺が嬉しそうに言うと、ちょっとだけ寂しげな笑みを浮かべた君。
「でもバンドが披露宴の演奏で最後なんて、勿体ないです……」
バンドメンバーのほとんどが役職についてしまい、仕事で手一杯となってしまったので、活動休止を余儀なくされた結果だった。
「話はそれくらいにして、もう寝なければ。夜更かしは、お肌の大敵ですよ」
頭を撫でている俺の手に、君は自分の手を重ねる。
「正仁さんもね、素敵な花婿姿が見たいです」
「その代わり、初夜は覚悟しておいて下さい。今までお預けをくらった分も、キッチリ返してもらいますから」
笑いながら告げたら、つられたように微笑み返し素直に頷く。昔も今も変わらない、素直な君が愛おしくて堪らない。
「私も……その、いろいろたまっているので宜しくお願いします」
「それじゃ手始めに、今日の復習からですね」
「へっ!?」
「しっかり教えて差し上げたんですから、マスターしていないと。俺の奥さんなんですから」
愛しいぬくもりを感じながら、この夜は呆気なく二人とも就寝したのだった。
「まったく――。君のしつこさには、ほとほと呆れました……」
現在寝室へ移動して、一緒に並んで布団に入る。ゲッソリした顔の俺を尻目に、とても嬉しそうな君の顔が傍にあった。
「うふふ。あんなに困った顔の正仁さんを見るのが、すっごく楽しくて」
「……俺、Mっ気ないです」
そう、淡々と答えるしかない。
あの後、名前を連呼して丁重にお引き取り願った。ゆえに手を出していません。
「せっかく名前で呼んでくれたのに、もう元に戻してるし」
「すみません、不器用な男なんで。使い分けがうまくできないんです」
君のことになると、冷静でいられなくなりますから。
「しかも欲求不満がたまってるくせに、変に我慢するし」
「一度決めたことは、とことん貫きたいんです」
これも君の綺麗な花嫁姿を見るためだ。尚更頑張らなければなるまい――
「んもぅ、堅いんだから」
「硬くない、断じて硬くありませんっ!」
俺が必死に言いきると、君は不思議そうに首を傾げる。
「頭がカタいっていう意味だったんだけど?」
「あ……?」
自分で墓穴を掘ってしまった……。かなり恥ずかしい――だが俺の顔を見てぽかんとしているということは、ナニが硬いのか分かっていないということだろう。あぶない、あぶない!
「あの正仁さん、聞いてみたいことがあるの」
「今日は質問のオンパレードですね、何でしょうか?」
暗闇の中、君の顔をじっと見つめてあげた。
「えっとですね、私のどこが良くて好きになったのかなって。それがずっと疑問だったんです」
「………」
驚いた――俺が思っていたことを、君も考えていたとは。一緒に暮らすと、考え方が似てくるのだろうか?
「正仁さん?」
「俺も同じことを考えていたので、ちょっと驚いただけです」
「そうだったんだ……」
「二人してマリッジブルーなんて、おかしな話ですね」
君の頭に手を乗せて、髪をゆっくりと撫でてあげる。
「君を意識し始めたのは確か、新人研修を行ってから半年後くらいでしょうか。他の新人が俺の元を去って行く中で、ひとり歯を食いしばって頑張っている姿に、無性にときめいてしまいました」
「だけどあのときは、めちゃくちゃ正仁さんを嫌ってました。新人イビりをしているように、感じてしまったから」
「君が自分の限界を作ることなく、ひた向きに努力を続ける姿は、俺の励みにもなったんですよ」
だから仕事とバンドという二足のわらじを、履きこなすことができたんだ。
「会社でカマキリのイメージだった正仁さんが、ライブでスポットライトを浴びて歌ってる姿を見た瞬間に、雷を打たれたようにビビっときました。意外な一面すぎて衝撃的だったなぁ」
大嫌いが前提条件だったのに、好きになってくれたなんて――
「それでは俺がバンドをやってなかったら、永遠に片想いのままだったんですね」
「多分……。よっぽど何かドキドキするようなアクシデントがない限り、きっと無理だと思います」
「時として運命の神様は、粋なことをしてくれます」
俺が嬉しそうに言うと、ちょっとだけ寂しげな笑みを浮かべた君。
「でもバンドが披露宴の演奏で最後なんて、勿体ないです……」
バンドメンバーのほとんどが役職についてしまい、仕事で手一杯となってしまったので、活動休止を余儀なくされた結果だった。
「話はそれくらいにして、もう寝なければ。夜更かしは、お肌の大敵ですよ」
頭を撫でている俺の手に、君は自分の手を重ねる。
「正仁さんもね、素敵な花婿姿が見たいです」
「その代わり、初夜は覚悟しておいて下さい。今までお預けをくらった分も、キッチリ返してもらいますから」
笑いながら告げたら、つられたように微笑み返し素直に頷く。昔も今も変わらない、素直な君が愛おしくて堪らない。
「私も……その、いろいろたまっているので宜しくお願いします」
「それじゃ手始めに、今日の復習からですね」
「へっ!?」
「しっかり教えて差し上げたんですから、マスターしていないと。俺の奥さんなんですから」
愛しいぬくもりを感じながら、この夜は呆気なく二人とも就寝したのだった。
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