純愛カタルシス💞純愛クライシス

相沢蒼依

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エピローグ

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 殺気に近い雰囲気が編集部に在籍してる、とある人物から漂う。その原因になっている人物は写真を見ながら、貧乏ゆすりを繰り出す足をわざとデスクに当てて、けたたましい騒音を鳴らし、大きなため息を何度もついた。

 見かねた編集長が仕事の手をとめ、ゲンナリした表情で副編集長のデスクに向かう。怒鳴り合いになることを想定した部署の面々は巻き込まれないように、自分の仕事に勤しむしかなかった。

臥龍岡ながおか副編集長、おみ足がデスクに当たって、大変迷惑な音を出してます。騒音レベルになっておりますので、やめていただけますか?」

 周りが気を遣っているのを考慮して、やんわり注意を促した編集長を、臥龍岡は上目遣いでギロリと睨んだ。

「しょうがないじゃない、なぜだかうまくいかないのよ。あの一ノ瀬の復讐劇が予定通り完遂されたのに、どうして私の計画は最後まで、うまくいかないのかしらね」

「そりゃあ一ノ瀬の考えは理知的で、未来を想定しながら構築されたものだから。おまえのは、感情論と自分の欲が混じった結果だろ。思いどおりにしようとしてる時点で、そうならない可能性がある」

 編集長は胸の前に腕を組み、澱みなく語る。臥龍岡はおもしろくなさそうに上司を見て、苛立ちまかせに利き手でデスクを殴った。

「自分の欲というよりも、会社の利益を最優先に考えているのよ。私生活を削ってまで頑張ってるというのに!」

「会社の利益と言いながら、企画賞や奨励賞なんかを狙ってることを、俺は言ってるんだが?」

「しょうがないじゃない。プラスアルファで稼いで、子供たちにお小遣いをあげたいのよ」

「まったく。それで、なににイラついていたんだ?」

 編集長は組んでいた腕を解き、臥龍岡を宥めるように肩を叩きながら訊ねる。

「これを見てちょうだい。一ノ瀬と白鳥に、同じグラビアモデルを撮影してもらったの」

 言いながら編集長によく見えるように、デスクに置いてあった写真を手に取り、目の前に掲げる。

「ほぉ、よく撮れてるじゃないか。一枚目はモデルの中にあるエロさを引き出そうと、際どいポーズをさせたお色気ムンムンな写真に、もう一枚は正反対、芸術的なアングルで撮影することによって、清純さを演出しているみたいなものになってんな」

「ちなみにお色気ムンムンは白鳥が撮影、芸術的な写真は一ノ瀬が撮ったものよ」

 呆れた口調で臥龍岡が告げた瞬間、編集長は小首を傾げた。

「……マジなのか? どう考えたって逆だろ?」

 唖然としながらもう一度写真を確かめる編集長に、眉根を寄せた臥龍岡がボヤく。

「絶倫天使の白鳥は、彼女に回数制限を食らってるせいで、発散できないものが写真に表れてるの」

「なんで一ノ瀬が今まで見たことのない、芸術的な写真が撮れるようになったんだ?」

 信じられないといった顔の編集長は、一ノ瀬が撮影した写真に指を差しながら訊ねた。

「このたびめでたく、絶倫女神と付き合うことになったからよ。逢うたびに自分を捧げてるせいで、性欲が見事になくなってるのかもしれないわね」

「おいおい、どんだけ捧げてるんだ……」

「ちょうどいいところに、本人がやって来たわよ。一ノ瀬、コッチ!」

 臥龍岡が手招きすると、眠そうな顔した一ノ瀬が颯爽とデスクに現れた。編集長が傍にいるからか、行動がキビキビしているのを目の当たりにして、自分との違いに臥龍岡は内心苛立つ。

「なにか用ですか? 撮影は午後からなんで、ちょっと仮眠室を使わせてもらいたいんだけど」

「一ノ瀬、正直に答えるのよ。昨日は千草ちゃんチに泊まったわね?」

「ああ。それがどうした?」

 眠そうな目を擦りながら問いかけた一ノ瀬に、臥龍岡はおもしろくなさそうな面持ちで、つっけんどんに訊ねる。

「何回ヤったのよ?」

「野暮なことを聞くのな。えっと6回だったかな。それに今朝1回プラスの計7回」

 左手をパーにしてから右手でピースサインを作り、わかりやすいように回数を示した一ノ瀬を、上司ふたりは白い目で眺めた。
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