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番外編
ミキ2
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『浮気するなら、俺の目の届かないところで、わからないようにやれよ』
旦那からの命令は、ときに男と別れるための道具になる。今回のコは愛情深く、執着心も強いから、別れるのに一苦労しそうだった。
「終わってみたら、あっけなかったわね」
半年前から旦那にわかるように、不倫をしている証拠を何度か残した。だけどタイミングが悪く、旦那がそれに気づかなかったせいで、一年近く一ノ瀬くんと付き合った。
私にまったく興味のない旦那――絶対に目を合わせようとしないし、自分から話しかけることなんて、めったにない。
もしかしたら外に女がいるのかもしれないと思ったのは新婚当初、彼が書斎で仕事をしている最中に、偶然聞いてしまったからだった。
コーヒーでも飲むかと書斎の扉をノックしかけたら、少しだけ扉が開いていることに気づいた。そこから声をかけようと思った瞬間。
『ミキ、やっぱり無理だ。おまえには好きだと言えるけどさ』
旦那のセリフが耳に届いた刹那、声をあげそうになって、慌てて空いた手で口元を押える。
(ミキって誰? ミキって人には好きだと言えるのに、私には言ってくれたことがない)
淹れたてのコーヒーを持ったまま、私は足音が立たないように、その場をあとにした。ショックが大きすぎて、どうやって寝室に向かったのかわからない。旦那が私を好きではないという現実を、どうしても受け止めたくなかった。
単身赴任してる間に、ミキって人を好きになったのかな。旦那が意思表示できない、不器用な人だというのは、付き合った時点でわかっていた。そのことすら愛おしいと思って、結婚したというのに。
「アナタが浮気をするなら、私だって――」
そこからはじまった、アパートに住む大学生たちとの情事。あえて見せつけるように浮気をしたので、旦那はすぐに気がついた。驚く様子も怒る様子もまったくなく、淡々とひとこと告げた。
『幸恵には、寂しい思いをさせてしまっているんだな。ごめん』
「謝らないで。悪いことをしてるのは私でしょ?」
そして言ってやりたかった。アナタも浮気をしてるクセにって。
『浮気するなら、俺の目の届かないところで、わからないようにやれよ』
これを言われてしまったら、私からはなにも言えない。だって旦那は、私の見えないところで浮気をしているのだから。
その後も私は浮気を続けた。旦那に愛されない自分を満たすためだけに、愛していない相手に身をゆだねる。
一ノ瀬くんと別れたあとも、アパートに住む大学生と関係を結んだ。彼もまた一ノ瀬くんのように、私を深く愛してくれた。あまりに深く愛するあまりに、その愛が怖くなって別れを告げたら、彼から腹を刺されるという制裁を受けた。
その傷がもとで、私は妊娠することができない体になってしまったのだった。
旦那からの命令は、ときに男と別れるための道具になる。今回のコは愛情深く、執着心も強いから、別れるのに一苦労しそうだった。
「終わってみたら、あっけなかったわね」
半年前から旦那にわかるように、不倫をしている証拠を何度か残した。だけどタイミングが悪く、旦那がそれに気づかなかったせいで、一年近く一ノ瀬くんと付き合った。
私にまったく興味のない旦那――絶対に目を合わせようとしないし、自分から話しかけることなんて、めったにない。
もしかしたら外に女がいるのかもしれないと思ったのは新婚当初、彼が書斎で仕事をしている最中に、偶然聞いてしまったからだった。
コーヒーでも飲むかと書斎の扉をノックしかけたら、少しだけ扉が開いていることに気づいた。そこから声をかけようと思った瞬間。
『ミキ、やっぱり無理だ。おまえには好きだと言えるけどさ』
旦那のセリフが耳に届いた刹那、声をあげそうになって、慌てて空いた手で口元を押える。
(ミキって誰? ミキって人には好きだと言えるのに、私には言ってくれたことがない)
淹れたてのコーヒーを持ったまま、私は足音が立たないように、その場をあとにした。ショックが大きすぎて、どうやって寝室に向かったのかわからない。旦那が私を好きではないという現実を、どうしても受け止めたくなかった。
単身赴任してる間に、ミキって人を好きになったのかな。旦那が意思表示できない、不器用な人だというのは、付き合った時点でわかっていた。そのことすら愛おしいと思って、結婚したというのに。
「アナタが浮気をするなら、私だって――」
そこからはじまった、アパートに住む大学生たちとの情事。あえて見せつけるように浮気をしたので、旦那はすぐに気がついた。驚く様子も怒る様子もまったくなく、淡々とひとこと告げた。
『幸恵には、寂しい思いをさせてしまっているんだな。ごめん』
「謝らないで。悪いことをしてるのは私でしょ?」
そして言ってやりたかった。アナタも浮気をしてるクセにって。
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これを言われてしまったら、私からはなにも言えない。だって旦那は、私の見えないところで浮気をしているのだから。
その後も私は浮気を続けた。旦那に愛されない自分を満たすためだけに、愛していない相手に身をゆだねる。
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その傷がもとで、私は妊娠することができない体になってしまったのだった。
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