純愛カタルシス💞純愛クライシス

相沢蒼依

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番外編

文藝冬秋編集長 伊達誠一3

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「すみませんね~。現在進行形でちょっとバタバタしているところなんです。本当は俺がその処理に当たればいいんですけど、会議に出る俺を慮った臥龍岡が『私が率先してやってあげるわ』なぁんてしゃしゃり出……じゃなく、手伝っている最中でして」

 慣れない嘘をつくと、無駄に口数が増えてしまう己の不器用さに、ほとほと嫌気がさした。

「そうですか、それは残念です」

「事前にアポをとっていただけたら、最優先で臥龍岡の予定を空けさせますので、次回からそうしてください」

 あからさまに気落ちした雲母編集長と一緒に、エレベーターに乗り込む。1階違いで俺が先に降りることになるので、気を遣う会話からすぐに解放されることに、内心安堵した。

 そんなことを考えていた矢先に、エレベーター内の証明が一瞬点灯し、ガコンという大きな物音をたてて緊急停止する。

「またか……」

 俺が口火を切ったら、雲母編集長も苦笑いを浮かべる。

「雨漏りしないだけ、まだマシと思わなければいけませんね」

 建物の老朽化が程度に進んでいるせいで、こういうトラブルも日常茶飯事だった。それを改善すべく、上役から売上が~の叱責がなされるのである。

 雲母編集長がエレベーター内の非常電話で緊急停止したことを告げてる間に、俺のスマホがタイミングよく鳴る。

(スマホの画面を見なくても、誰だかすぐにわかるぞ。社内に盗撮カメラをあちこち仕込んでいるから、この状況がリアルタイムで察知できる人物!)

 仕方なく画面をタップし、そいつの名前を口にしてやる。

「わざわざ心配して電話をくれるとは、できた部下だなぁ臥龍岡副編集長!」

『ちょっとスピーカーにしてくんない?』

 興奮を抑えきれない感情が、大きな声になってスマホから聞こえた。反抗してぎゃんぎゃん喚かれてもめんどくさいと判断、言われたとおりにスピーカーのボタンをタップする。

『さっちゃん、聞こえる~?』

 エレベーター内の電話をかけ終えたらしい雲母編集長が、ハッとした顔で俺に振り向く。

「臥龍岡先輩?」

『さっちゃん、これは神様が与えてくれた、絶好のチャンスよ。これを逃したら次はない、ひとおもいにやっちゃいなさい!』

(なに言ってんだ、コイツ。チャンスだのやっちゃえだの、わけがわからん)

 ほかにもギャーギャー騒ぎたてるスマホを呆れながら見、肩を竦めながら目の前に視線を移すと、雲母編集長の顔がリンゴのように真っ赤に染まっていた。

「大丈夫ですか?」

 思わず声をかけた俺のセリフをかき消すような、ウザい臥龍岡の言葉が続く。

『さっちゃん、勇気を出して。アナタならできるわ、今までずっと頑張ってきたじゃないの!』

「臥龍岡副編集長、狭いエレベーター内ではおまえの声は煩く聞こえるので切るぞ、じゃあな!」

 迷うことなく画面をタップしたことにより、ふたたび静寂が訪れる。

「雲母編集長、ウチの臥龍岡が騒いですみませんね。なにを血迷ったのか、変なことばかり言いやがって」

 リダイヤルされないように、しっかり電源を落としたスマホを上着のポケットに戻しつつ、妙な雰囲気を払拭しようと話しかけた。

「私、その……私は伊達編集長のことが、ずっと好きだったんです!」

 臥龍岡のウザい声よりも大きな声を出した雲母編集長が、すごいことを口走った。

「え……?」

 編集長会議で逢ったり、社内ですれ違う程度しか彼女と接触していないというのに、なぜに好きになられるのか、さっぱりわからなかった。
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