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うまくいかない日々の果てに――
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斎藤ちゃんが私たちの仲を知りすぎてることや、澄司さんを表現するワードがなんかすごくて、思わず吹いてしまった。
(佐々木先輩ってば、どこまで斎藤ちゃんに話をしたんだろう。変なことを言ってないといいな……)
「まっつーは、どっちが好きなの?」
「佐々木先輩に決まってるでしょ。一応これでも付き合ってるんだよ」
交際歴1週間も経っていない私たちの関係。それでも付き合ってると即答したけれど、どっちが好きかなんて、訊ねられるとは思わなかった。スマホを耳に当てたまま首を傾げる私に、斎藤ちゃんからの質問は、容赦なく続く。
「佐々木先輩が会社のフロアでまっつーを襲ったら、そのまま流されちゃう?」
「そこ、なんで会社なわけ?」
「備品庫でまっつーに告白した相手だから。一緒に残業しているうちに、佐々木先輩が会社で盛ってきたらどうする?」
「いやそれ、ありえないでしょ。絶対!」
想像しようとしても、そんな風景すら思いつかなくて、思わず斎藤ちゃんに喚いてしまった。
「だよねぇ。普通はそうなのよねぇ。だから佐々木先輩のことを『ポンコツ』って言ったんだよ。あのね――」
佐々木先輩が斎藤ちゃんに私の携帯番号を聞いたことや、そこからのやり取りを克明に教えてくれた。すべてを聞き終えた私は、茫然としながら問いかける。
「斎藤ちゃん、ハッキリ言っていい?」
「なんでも聞くよ!」
「佐々木先輩とのお付き合い、すっごく不安しかないんですけど!」
あの手この手で接触しようとする澄司さんの前で、自分の身を守るのに精いっぱいだった私。佐々木先輩のダメさ加減を知ってしまった今、見えない不安が押し寄せてきた。
「ほんとそれ! だから私もできるだけ助けてあげるね」
「ショックなのは、千田課長と佐々木先輩の元カノが絡んでいたことだわ」
「そんなふたりが同じ職場で働くことになるなんて、当時は思わなかっただろうね」
「私なら無理だな。千田課長を見たら複雑な感情が溢れてきて、冷たく接しそうになるのがわかる」
佐々木先輩の心情を考えながら、いつも見ている姿を思い出した。そつなく仕事をこなしている表情からは、マイナスの感情は全然見えない。千田課長と喋っているときも、平然としていた。
新入社員の頃の出来事だから数年経っているとはいえ、傷ついた心は間違いなく痕が残っているはず。だからこれまで、誰とも付き合っていなかったのかな。
「まっつー、LINEに佐々木先輩の番号貼り付けておいたよ。今ごろ躍起になって、まっつーに電話していたりして。ふたりの邪魔しちゃ悪いから、もう切るね」
「ありがとう、斎藤ちゃん。また明日!」
そう言って画面をタップした途端に、知らない番号から着信が――。
「佐々木先輩かな? もしもし?」
もう一度画面をタップして電話に出たら、聞き覚えのある声が耳に聞こえた。
(佐々木先輩ってば、どこまで斎藤ちゃんに話をしたんだろう。変なことを言ってないといいな……)
「まっつーは、どっちが好きなの?」
「佐々木先輩に決まってるでしょ。一応これでも付き合ってるんだよ」
交際歴1週間も経っていない私たちの関係。それでも付き合ってると即答したけれど、どっちが好きかなんて、訊ねられるとは思わなかった。スマホを耳に当てたまま首を傾げる私に、斎藤ちゃんからの質問は、容赦なく続く。
「佐々木先輩が会社のフロアでまっつーを襲ったら、そのまま流されちゃう?」
「そこ、なんで会社なわけ?」
「備品庫でまっつーに告白した相手だから。一緒に残業しているうちに、佐々木先輩が会社で盛ってきたらどうする?」
「いやそれ、ありえないでしょ。絶対!」
想像しようとしても、そんな風景すら思いつかなくて、思わず斎藤ちゃんに喚いてしまった。
「だよねぇ。普通はそうなのよねぇ。だから佐々木先輩のことを『ポンコツ』って言ったんだよ。あのね――」
佐々木先輩が斎藤ちゃんに私の携帯番号を聞いたことや、そこからのやり取りを克明に教えてくれた。すべてを聞き終えた私は、茫然としながら問いかける。
「斎藤ちゃん、ハッキリ言っていい?」
「なんでも聞くよ!」
「佐々木先輩とのお付き合い、すっごく不安しかないんですけど!」
あの手この手で接触しようとする澄司さんの前で、自分の身を守るのに精いっぱいだった私。佐々木先輩のダメさ加減を知ってしまった今、見えない不安が押し寄せてきた。
「ほんとそれ! だから私もできるだけ助けてあげるね」
「ショックなのは、千田課長と佐々木先輩の元カノが絡んでいたことだわ」
「そんなふたりが同じ職場で働くことになるなんて、当時は思わなかっただろうね」
「私なら無理だな。千田課長を見たら複雑な感情が溢れてきて、冷たく接しそうになるのがわかる」
佐々木先輩の心情を考えながら、いつも見ている姿を思い出した。そつなく仕事をこなしている表情からは、マイナスの感情は全然見えない。千田課長と喋っているときも、平然としていた。
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「まっつー、LINEに佐々木先輩の番号貼り付けておいたよ。今ごろ躍起になって、まっつーに電話していたりして。ふたりの邪魔しちゃ悪いから、もう切るね」
「ありがとう、斎藤ちゃん。また明日!」
そう言って画面をタップした途端に、知らない番号から着信が――。
「佐々木先輩かな? もしもし?」
もう一度画面をタップして電話に出たら、聞き覚えのある声が耳に聞こえた。
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