エゴイストな男の扱い方~レモネード色の恋~

相沢蒼依

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act3:避けられて かわされて――

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「あのっ、ちょっといいですか?」

 店が始まる前にいつもやってる店内ミーティングで、思いきって手をあげて立ち上がった。

 俺の周りを囲むように座ってる、やる気なさげな先輩たちの視線をびしばしと浴びたせいで、意見しようとしていたやる気が削がれそうになる。それに負けないよう両手の拳を握りしめ、腹から声を出してみた。

「入ったばかりの俺みたいなのが意見するのはすっげぇ生意気だと思うんですが、1ヶ月ちょい、ここで働いてみて思うことがありまして……」

 人が喋ってる最中なのにスマホを弄るヤツや、面倒くさそうな顔して舌打ちをするヤツがいて、すっげぇムカついたのだが気にしてる場合じゃない。

「もっと協力し合って接客したほうが、お店にとって回転率が上がると思うんです」

 新規のお客さんやお金をあまり落してくれないお客さんに対し、結構待たせることをしている先輩方。羽振りのいいお客さんを他のヤツに取られないようにしているせいで、席を立とうとしないんだ。

 本来なら大倉さんがそこんとこコントロールしなきゃならねぇのに、先輩方の顔色を窺うあまり、強く言えないらしい。

「何それ。自分が上手く接客できないからって俺らのこと、ひがんでいるんじゃないの?」

「うっ……そんなこと、ないです。だけど――」

「レインくん、分かったから。もういいよ」

「よくねぇだろっ、何で止めるんだ大倉さん」

 確かに今まで働いてきて、接客したのは5人にも満たねぇ数だけど俺は知ってんだ――

「アンタ売り上げのことで、オーナーにどやされているだろ。毎日、さ」

「それはいつもの恒例行事みたいなものだし。君が気にする必要ないから」

 カラカラ呑気な顔して笑っているクセして、影で悔しそうな顔してるのを知ってんだぞ。

 閉店後、俺が後片付けしてる最中に、売り上げの計算をカウンターでしている姿をチラチラ横目で見ていると、はーっと大きなため息をついてカウンターに背を向けた瞬間、何ともいえない表情を浮かべてさ。そんなのを毎日見せられてる、俺の身にもなってほしいくらいだ。

「気にするなって言われても辛そうな顔してるのに、放っておけるワケがないだろう。こういうときだからこそ、みんなで協力してさ」

「下っ端のクセして、超生意気。誰がテメェの言うこと聞けるかってんだ!」

「たしかにー! 店長だけじゃなく俺らにも命令するとか、信じられなーい」

「ということで、ミーティング終わりにしちゃっていいよね。さっさと営業しなきゃ。お客さんにこれから連絡しなきゃだし」

 まだ話が終わっていないのに散り散りに席からいなくなってしまう先輩方に、ガックリと肩を落とすしかなかった。

「ありがと、レインくん。その気持ちだけ受け取っておくよ」

「……諦めんのか、大倉さん」

「レインくんに対する気持ちは、諦められないけどね」

「ちげーよ! もう少し店のことを考えろって。アンタ店長だろ、オーナーに店を任されてるのに、なんで何もしねぇんだ? ……です」

 つい勢い余って言葉遣いが荒くなったのに気がつき、最後の最後で修正。毎度、後味が悪い。

「そうなんだけどね……。上手くコミュニケーションがとれなくて。今の若いコの扱いは難しいよ」

「……分かった。大倉さんが扱えるように俺が何とかしてやる、です」

「おいおい、影で脅すなんてしないでくれよ。お店を去られても困るから」

 困惑しまくりの大倉さんの肩を、安心しろという気持ちを込めて叩いてやった。

「ふん! 俺がナンバーワンになるって言ってんだ、そんな変なことしねぇよ」

「へっ!?」

「勘違いすんな、です。別に大倉さんのためじゃねぇから、店が潰れたら困るのは俺なんだし」

「レインくん……」

 ラブラブの眼差しで顔をじっと見つめてきたので逃げるべく、さっさと奥の部屋に引き篭もってやった。

「さて、と。ナンバーワンになるには女の心を鷲掴みできるネタが必要だっていうのは、先輩方の接客を見て分かったけど、何ていうか、どうもイマイチなんだよな」

 ポケットに入れてたスマホでいろいろ検索し、その内そこから閃いた。

「日サロのオネェ店長に、ちょっと話を聞いてみるか……」
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