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act3:避けられて かわされて――

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 俺の狙いは見事にビンゴした――先輩方が相手にしないようなお客様ばっかりだったが、少しずつ指名客が増えてきて、Wブッキングするときもあり……。

「レインくん、1番テーブルのお客様から指名いただきました!」

 恭しく頭を下げた大倉さんがテーブル脇にやって来て、にこやかに告げる。

「わかりました。すぐに向かいます」

「え~っ、ここからがいいところだったのにぃ!」

「ゴメン。この話の続きは、絶対に今度しよう」

 ニッコリ笑って小指を出すと、しぶしぶといった表情を浮かべてそれに絡めてくれた。

「次に指名してくれたときにどれくらいキレイになってるか、すっげぇ楽しみにしてるから」

「そんなこと言われたら、俄然ヤル気が出ちゃうな。分かったわよ、頑張る。あ、お会計お願い」

 俺たちの邪魔にならないところにいた大倉さんに、お客様が声をかけながらカードを手渡すと、お預かり致しますと静かに告げ、キャッシュしに去って行く。その後を追うように立ち上がり、颯爽と歩きながら声をかけてみた。

「1番のお客様、かなり待たせちゃったか?」

「いや、大丈夫。レインくん頑張ってるね、短期間で一気にお客様がついて、凄いって思う」

 唐突にぴたりと止まった大倉さんの足。さっきのお客様の名前とやり取りをメモっていた俺は、それに気づけなかったせいで、大きな背中に軽くぶつかってしまった。

「ぅおっ、悪い……」

「こっちこそ済まないね。いろいろと」

 顔だけで振り向き、それはそれは切なそうな表情を浮かべて言うもんだから、二の句が告げられずに固まるしかない。

 いつもなら何かと変なコトばかり言ってきて、ここぞとばかりに俺をイライラさせるのに、この態度は何なんだ?

「……ありがと、レインくん」

 愛の告白をせず普通に感謝の言葉を告げて、カウンターに向かう大倉さんの後ろ姿に眉をひそめ、首を傾げるしかない。

「面、食らっちまったじゃねぇか。驚かしてくれるなってぇの!」

 100均で購入したメモ帳をぱたんと閉じて、ポケットに仕舞いこみ、急いで1番テーブルに向かった。

 コッチの調子を狂わせることをしてくれるなよと、心の中でボヤキながら――
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