14 / 57
第二章「童貞の子」
014
しおりを挟む
人里離れた山奥の森の中に、古びた礼拝所がある。
赤茶けたレンガをモルタルで塗り固めた瓦屋根の建物だ。かつて暖炉だったと思われる場所に、崩れた煙突の残骸が散らばっている。
今はもう朽ち果てているが、扉や階段には合板が使われ、窓にはガラスがはめられていた。
緻密に計算された高度な建築技術もさることながら、驚くべきは錆びや腐りを防ぐ塗料だろう。
当時の人々は芸術にも秀でていて、自然の草花や鉱物の元素を混ぜ合わせることで、陶器や織物などの工芸品を美しく染めることができた。
処女信仰の敬虔な教徒だったフローディアも、こうした場所で自給自足の修道生活を送るかたわら、副業として薬草採りや染め物にいそしんでいたと思われる。
北方山脈には、真っ白な雪景色にゆらゆらと湯けむりが立ちのぼる温泉がある。原初の炎をあがめる人々にとって、大地から湧き上がる熱湯はまさに天の恵みだった。
「これが、男の子のおちんちん……?」
クライオは、裸のままつかまり立ちをして抱っこをせがんだ。すってん転んで尻餅をつきそうになり、脱衣を済ませたフローディアが慌てて追いかける。
「べつに恥ずかしいことじゃないわ。きちんと綺麗に洗ってあげなくちゃ」
クライオ王子は、当時にしては珍しく割礼を行っていない。生後間もなく森の中に捨てられた野生児と言われる所以だ。
赤茶けたレンガをモルタルで塗り固めた瓦屋根の建物だ。かつて暖炉だったと思われる場所に、崩れた煙突の残骸が散らばっている。
今はもう朽ち果てているが、扉や階段には合板が使われ、窓にはガラスがはめられていた。
緻密に計算された高度な建築技術もさることながら、驚くべきは錆びや腐りを防ぐ塗料だろう。
当時の人々は芸術にも秀でていて、自然の草花や鉱物の元素を混ぜ合わせることで、陶器や織物などの工芸品を美しく染めることができた。
処女信仰の敬虔な教徒だったフローディアも、こうした場所で自給自足の修道生活を送るかたわら、副業として薬草採りや染め物にいそしんでいたと思われる。
北方山脈には、真っ白な雪景色にゆらゆらと湯けむりが立ちのぼる温泉がある。原初の炎をあがめる人々にとって、大地から湧き上がる熱湯はまさに天の恵みだった。
「これが、男の子のおちんちん……?」
クライオは、裸のままつかまり立ちをして抱っこをせがんだ。すってん転んで尻餅をつきそうになり、脱衣を済ませたフローディアが慌てて追いかける。
「べつに恥ずかしいことじゃないわ。きちんと綺麗に洗ってあげなくちゃ」
クライオ王子は、当時にしては珍しく割礼を行っていない。生後間もなく森の中に捨てられた野生児と言われる所以だ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
4
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる