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エピローグ
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その後、俺はまた大樹の家に入り浸るようになった。今度は、連絡なしで好きなときに入って来いと合鍵を貰った。連絡は入れるようにしているけど先に部屋に来て大樹の帰りを待つときもある。
今日みたいに。
「おかえりー!」
「ああ」
「大丈夫?久しぶりに色んな人と話すから疲れたんじゃない?」
「そうでもないさ」
大樹は現在プログラマーからシステムエンジニアになるべく奮闘中だ。顧客の希望するシステムを作るのがプログラマーならシステムエンジニアは顧客のニーズを拾い上げて顧客に合わせたシステムを提案する仕事。だから今までのように家で構文を打ち込む仕事からその知識を使って客先に出向き人と接する業務になる。家で仕事をする大樹をあまり見られなくなるのは少し残念だけど、元々社交的な大樹だったから、部署替えして外に出るようになったのは過去に区切りをつけてくれたからなのかなと嬉しくも思う。
大樹のお父さんの干渉もあれからないらしい。最近は元々殆ど接触はなかったみたいだけど。でももし、今度同じ事があったなら染谷商事の社長は時代に逆行する差別主義者だとマスコミに流してやるそうだ。
「要、こっちに来い」
「うん」
俺は大樹に抱きつくといつも通りお帰りのキスをする。軽いキスからそのままベッドになだれ込むことも…割とある。俺の方が若いから体力的には大樹に勝てる筈なのにやっぱり抱き潰されてしまう。その変わらないところが困ったり、でも幸せだったり。離れていた時間を埋めるように気持ちも体もいつでも近くにいたいと思うのは俺も大樹も一緒のようだ。
「要、一緒に雪人の実家に行く気はないか?」
「えっ…」
一通りいちゃいちゃした後の突然の提案に戸惑う。俺は前世を思い出したときに大樹に会いに行くことはできないと思ったけれど、雪人の両親にはいつか会えたらいいなと思っていたんだ。
でも、それはいつ叶うともしれない淡い希望だった。
「でも、何のために行くの?」
「雪人のお袋さんに返さなければいけないものがあるんだ」
「お母さんに…」
「それに、お前を紹介したいんだ、大切な人ができたと」
俺を大切な人って言ってくれている。未だに大樹からの好意にドキドキしてしまう。
「俺はお袋さんに長い間心配をかけていたんだ、きっと喜んでくれる」
「俺は、何て言えばいいのかな、今更あなたの息子でしたなんて言ったら混乱させてしまうかも…」
「言うかどうかはそのとき考えればいいさ、あのお母さんならわかってくれると思うがな」
「大樹は俺のお母さんと知り合いなの?」
「ああ、ここ10年のことなら要より俺の方がよく知っているぞ」
「そうなんだ…」
俺の知らない大樹の20年。俺が死んだせいで悲しませてしまった人達が哀惜の情を交わし合うことで少しでも癒やされていたのなら俺も救われる。
「うん、行きたいと思う。でも、もう少しだけ待って」
「ああ、要の行きたいと思ったときでいい」
「ありがとう大樹。俺にお母さん達に会う機会を作ってくれて」
それと…と大樹が居住まいを正した。そしてポケットから紺の小さいケースを取り出した。
それを俺の前で開く。
中には銀に輝く指輪が入っていた。
「要、これをどうか受け取って欲しい」
雪人の実家への訪問の件と自分の仕事が軌道に乗るタイミングを計っていたそうだけど、
俺にとってはいきなりで…。大樹は俺を泣かせにくる。
「いいの?俺にくれるの?何を言われても絶対に俺は返さないよ?」
「一生返さなくていい。いや、年を重ねてこの命が終わった後も、それは永遠にお前のものだ。何度生まれ変わっても、俺はお前を愛すると誓うよ。どうか俺と生涯を共にしてくれ」
俺が死んでしまった後もずっと俺を想ってくれていた大樹。そんな大樹なら何度生まれ変わってもきっと出会った俺を愛してくれるそんな気がする。俺だって、生まれ変わっても大樹を好きになった。もう一度お互いが惹かれ合うってそれはもう運命だね。
俺の返事は決まっている。
「はい、よろしくお願いします」
俺はあの日の雪人と同じ返事をした。
わかってくれるかな?
大樹は俺の左の薬指に指輪を嵌めると笑って俺を抱き寄せた。
俺がずっと、もう一度見たかった大樹の笑顔。
もう二度と曇らせないと、俺も誓うよ。
愛してる大樹、永遠に。
転生したら元彼が引きこもりになっていた 終わり
今日みたいに。
「おかえりー!」
「ああ」
「大丈夫?久しぶりに色んな人と話すから疲れたんじゃない?」
「そうでもないさ」
大樹は現在プログラマーからシステムエンジニアになるべく奮闘中だ。顧客の希望するシステムを作るのがプログラマーならシステムエンジニアは顧客のニーズを拾い上げて顧客に合わせたシステムを提案する仕事。だから今までのように家で構文を打ち込む仕事からその知識を使って客先に出向き人と接する業務になる。家で仕事をする大樹をあまり見られなくなるのは少し残念だけど、元々社交的な大樹だったから、部署替えして外に出るようになったのは過去に区切りをつけてくれたからなのかなと嬉しくも思う。
大樹のお父さんの干渉もあれからないらしい。最近は元々殆ど接触はなかったみたいだけど。でももし、今度同じ事があったなら染谷商事の社長は時代に逆行する差別主義者だとマスコミに流してやるそうだ。
「要、こっちに来い」
「うん」
俺は大樹に抱きつくといつも通りお帰りのキスをする。軽いキスからそのままベッドになだれ込むことも…割とある。俺の方が若いから体力的には大樹に勝てる筈なのにやっぱり抱き潰されてしまう。その変わらないところが困ったり、でも幸せだったり。離れていた時間を埋めるように気持ちも体もいつでも近くにいたいと思うのは俺も大樹も一緒のようだ。
「要、一緒に雪人の実家に行く気はないか?」
「えっ…」
一通りいちゃいちゃした後の突然の提案に戸惑う。俺は前世を思い出したときに大樹に会いに行くことはできないと思ったけれど、雪人の両親にはいつか会えたらいいなと思っていたんだ。
でも、それはいつ叶うともしれない淡い希望だった。
「でも、何のために行くの?」
「雪人のお袋さんに返さなければいけないものがあるんだ」
「お母さんに…」
「それに、お前を紹介したいんだ、大切な人ができたと」
俺を大切な人って言ってくれている。未だに大樹からの好意にドキドキしてしまう。
「俺はお袋さんに長い間心配をかけていたんだ、きっと喜んでくれる」
「俺は、何て言えばいいのかな、今更あなたの息子でしたなんて言ったら混乱させてしまうかも…」
「言うかどうかはそのとき考えればいいさ、あのお母さんならわかってくれると思うがな」
「大樹は俺のお母さんと知り合いなの?」
「ああ、ここ10年のことなら要より俺の方がよく知っているぞ」
「そうなんだ…」
俺の知らない大樹の20年。俺が死んだせいで悲しませてしまった人達が哀惜の情を交わし合うことで少しでも癒やされていたのなら俺も救われる。
「うん、行きたいと思う。でも、もう少しだけ待って」
「ああ、要の行きたいと思ったときでいい」
「ありがとう大樹。俺にお母さん達に会う機会を作ってくれて」
それと…と大樹が居住まいを正した。そしてポケットから紺の小さいケースを取り出した。
それを俺の前で開く。
中には銀に輝く指輪が入っていた。
「要、これをどうか受け取って欲しい」
雪人の実家への訪問の件と自分の仕事が軌道に乗るタイミングを計っていたそうだけど、
俺にとってはいきなりで…。大樹は俺を泣かせにくる。
「いいの?俺にくれるの?何を言われても絶対に俺は返さないよ?」
「一生返さなくていい。いや、年を重ねてこの命が終わった後も、それは永遠にお前のものだ。何度生まれ変わっても、俺はお前を愛すると誓うよ。どうか俺と生涯を共にしてくれ」
俺が死んでしまった後もずっと俺を想ってくれていた大樹。そんな大樹なら何度生まれ変わってもきっと出会った俺を愛してくれるそんな気がする。俺だって、生まれ変わっても大樹を好きになった。もう一度お互いが惹かれ合うってそれはもう運命だね。
俺の返事は決まっている。
「はい、よろしくお願いします」
俺はあの日の雪人と同じ返事をした。
わかってくれるかな?
大樹は俺の左の薬指に指輪を嵌めると笑って俺を抱き寄せた。
俺がずっと、もう一度見たかった大樹の笑顔。
もう二度と曇らせないと、俺も誓うよ。
愛してる大樹、永遠に。
転生したら元彼が引きこもりになっていた 終わり
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