仕事猫ニャゴロー

どてかぼちゃ

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第3話 吾輩は夜も忙しいのである!

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 我輩は今、真夜中の公園にいる。
 
 どこぞの偽善者が〝あー、猫ちゃんかわいそー! 私がエサあげるねぇ!〟などと放置した猫缶をつまみつつ、その周りへと散らばったドライフードをカリカリとテイスティング真っ最中。
 
 さて、今日はこれぐらいで止めておくか。
 メタボとかってやつになったらかなわないからな。
 
 カロリー消費のため、飛び出たお腹を引きずっての園内散歩。
 するとどうだろう?
 オスメス番の人間が闇に紛れてゴソゴソなにやら怪しく動いているのを発見。
 しかもあちらこちらにいるではないか。
 我輩興味津々で彼等に近づいてみた。

 メスとのじゃれ合いに夢中な人間のオス。
 ポケットからはみ出た財布をコッソリ抜いても気付かない程。
 そっと爪でひっかけてやるとベンチにポトリ落ちた。
 ナイッス!
 
 前足で器用に開くと顔を覗かせる薄いビニール袋でパッキングされ〝リケン〟と印刷されている謎の物体。

 他にも〝ラテックス〟があったのだが、何よりも中身を確かめるのが先決。
 不意の事態の備え、警戒しつつも慎重に爪で中心を貫通させる。
 プスっとなっと。
 ……プスプスプスっとなっと!

 ここで人間に見つかってしまった。
 しかしこれも立派な仕事の一環。
 鑑定への対価、福沢諭吉なる偉人が印刷された紙を一枚だけ咥えて脱出。
 この紙の価値は分からずともなぜか妙に魅かれる。
 本当ならばもっと沢山ほしいのだが、今回はこれぐらいにしておこう。

 この後複数のオスから同じ様に財布を抜き取っては中身の検証を試みるも、オス自身が履いているパンツなるものを脱ぐポイントで毎回気付かれる。
 臭いにムッとし、爪を立てて引っ搔くからだろうか?
 
 転んでもただでは起きない小生ニャゴロー、短時間でチャチャっと任務を遂行。
 苦しいながらも確実にこなすのは穴をあける作業とその報酬である諭吉の抜き取りだけ。

 この仕事は週末が特に忙しいのだ。
 理由は猫である我輩には理解できかねるのだが……。

 そしてこれが終われば次は宿敵と一戦交えることに備える。
 川に隣接するこの公園は、最近余所者が幅を利かすといったジモッピーには耳の痛く、何とも情けない話。

 〝ヌートリア〟と呼ばれるその侵略者達。
 大きさは中型犬程度で可もなく不可も無く。
 川を泳ぐ姿はラッコ、或はビーバーかと思う程。
 
 遠巻きで眺めている分には可愛らしいが、近くで見ると只のデカいドブネズミ。
 特に毛の無い尾がキモい。
 圧倒的な違いは完全に大きさのみ。
 問題は靴ベラ程もあるあの前歯。
 それでも我輩の猫パンチには敵わない。
 結構ビビりなヤツなのである。

 ヤツ等を懲らしめる為、昨日の昼間にもこの公園を訪れたのだが、その時は遊んでいた複数からなる人間の子供達に先手を取られてしまった。

 「おい見ろよ! あれラッコじゃね? 水面から頭と背中がでてるぞ?」

 「マジ? かーわいー! この石投げたらこっちこないかな?」

 「よーし、みんな! ラッコに向かって石投げようぜーっ!」

 最初はカワイイなどとチヤホヤされる言葉にイラつく我輩。
 しかし彼等の口から動物達が嫌がる〝石〟なるキーワードが。
 特に鎖で縛られている犬などは、石を手にした子供の残虐性に尻尾を巻く。
 
 しかも悪気が無いから本当に質が悪い!
 それが今、川へと投げ入れられているのだ!
 
 絨毯爆撃の如く降り注ぐ石にはお手上げ状態のヌートリア。
 ある意味いい気味である。
 
 「チッ! 見えなくなっちゃったな。……お、こっちに猫いるぞ?」
 
 「猫って肉球にテープ貼ると面白い動きするんだよな」

 「つかまえろーっ!」

 
 その後ターゲットが我輩に向けられたことは黙っておこう。
 ヌートリアよ、今日は痛み分けであるな。
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