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第4話 吾輩は商店街にも顔が利くのである
しおりを挟む我輩に休みは無い。
仕事戦士と呼ばれるが所以。
今日は商店街へ行こうと思う。
主に老人が守をする店を重点的に。
決して生死の確認を取りに行く訳ではない。
彼等は〝ウニャン?〟と一言声を掛けるだけで、必ず何か賄賂を差し出してくる。
魚屋の主人ならマグロの赤身。
これはまぁ許せる。
肉屋の大将なら生のスジ肉。
〝豚なる生物の肉〟は寄生虫がいると聞いたが、これは何の肉だ?
ほんのりピンク色で分厚い脂身がまあなんとも美味そうだな。
とはいえ、偶にはケースに入った〝松阪で丹念に育てられた牛なる生き物〟のサーロインとやらでもいいのではないのか?
とりあえず今回はこれで我慢するが、次回は頼むぞ大将!
問題は八百屋のクソジジイである。
何時お迎えが来てもおかしくない、ほぼ間違いなくボケているあの老人。
今回は〝トマト〟なる血の色で染めたようなゴリゴリドゥルドゥッルなものを無理やり口に放り込んできたから即、下痢便で応戦、〝レタス〟と呼ばれるもので尻を拭いてやった。
我輩もバカではない。
尻を拭くのは色が〝赤〟以外の物と既に学習済み。
〝とうがらし〟なるものを尻に当てた瞬間、肛門が爆発するといった苦々しい過去を踏まえての事だ。
ここまで結構な仕事を熟したと自負する我輩。
この勢いのまま残業だ!
そんな訳で身近にあった野菜と同じテーブルの上にある箱に入った透明のトイレットペーパーを爪で引っ掻き回す。
「コラ―ッ! ビニール袋を無茶苦茶にするなーっ!」
などとジジイからお礼の言葉を掛けられた。
感無量とはこのことだな。
我輩全身をもって充実感を覚え、走って八百屋を後にする。
次は違う店へレッツラゴン!
〝パン〟とは何だ?
最近出来た店で、他とは違い一生懸命仕事をしている若い人間のオスとメス。
不思議な白い塊を親の仇でもあるかのように何度も何度も机に叩きつけている。
「ふー、あとは発酵だな。しばらく休憩しようか」
二人が何処かへ見えなくなったのを確認。
コッソリ中へ入るとプレート上に不思議な白い物体を発見。
丁寧に複数並べられたそれ等は、まるで大きなカタツムリ。
そっと触れてみる。
ふわっふわで気持ちいい。
それならば……
肉球印を押しておいた。
勿論、ぺっちゃんこになるほど全部に力強くな!
すると、大きな機械の中へ入った色の違うよく似た物体が我輩の目に飛び込む。
こちらはキツネ色した少しテカリあるヤツ。
それにしてもここは暑いな?
汗が止まらないぞ?
だが我輩とて仕事師を名乗るもの。
ここでもうひと踏ん張りと、その茶色い物体へ肉球印を押すため近づく。
それではってなワケで前足をポンッと乗せた瞬間……
{ジュッ}
「ニギャッ!」
火傷した。
激アツ。
茶色く焦げた石コロだったみたいだ。
注:オーブンに入った焼き真っ最中のパン
時には失敗もあると自分に言い聞かせ、トボトボ帰宅の途に就く。
痛くはあったものの、今日は有意義な一日でいい勉強になった。
我輩今日もがんばりましたねぇ。
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