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第5話 吾輩は妹君が苦手である!
しおりを挟むどうやら人間にはアレルギーなどというものがあるらしい。
我が拠所、三河家の御長男もそれを持っているようである。
以前母上はこう言った。
「ねぇニャゴロー。安成は猫アレルギーがあるから、あまり近づかないでね」
三河家で絶対権力を持つ母上が白と言えば黒い物でも白なのである。
この家に厄介となっている以上、それは何人たりとも覆せない。
それがたとえ御子息御息女であろうともだ。
逆らって首から下をビニール袋に入れられても困るので、黙って従う事にしよう。
いや、もしかして首だけをビニール袋に……これ以上は何も考えない方がいいな。
とにかくそれがこの家における我輩のみに与えられたルールなのである。
だからと言って忘れられても寂しいな。
なにかいい方法は……そうだ!
ならば避ける代わりに御長男の部屋中へ体毛を振りまいてやろう!
本人に直接近づいている訳では無く、我輩の存在アピールにもなるし一石二鳥。
これならば何ら問題もないであろう。
その後何度も実行を繰り返すと、ある出来事が勃発。
理由は分からないのだが、必ず御長男がクシャミラッシュに見舞われるのだ。
クシャクシャの顔をして涙と鼻水を大量に流すその絵面のなんと楽しい事よ。
そんな彼の姿を見ると気分がスーッとするのはなぜだろう?
勿論、物陰に隠れてコッソリ見ているのだぞ?
母上に言われた通り決して姿は見せてないぞ?
ともあれ、時間のある時はなるべく御長男のお部屋で過ごそうか。
アレルギーと言えば、我輩はどうも末っ子の美也殿が苦手である。
以前商店街を塒にするニャン吉が彼女の歯牙にかかり、爪を全部丸く切られた。
〝もう野生では生きていけない〟と言っていたのが印象的だったのを覚えている。
最近では坂の病院を縄張りとするニャン太郎が被害に遭っている。
ボディペイントと称してマジックで幼稚な絵を描かれていたのだ。
彼もまた〝猫生に於ける最大の屈辱〟と、泣きながらこの町を去った。
両わき腹に〝命ある黒い宝石(ゴキブリ)〟のアートを残したまま……。
更に驚いた事件がある。
我輩たちでも報復を恐れて滅多に手を出さないカラスに、
「あいつの羽を毟ってゴージャスで妖艶なマフラーを作るんだ!」
とか言って石を投げつけていたことがあった。
その為この近隣に住む動物界ではレジェンド級ハンターの烙印まで押される始末。
よく他の動物達が我輩に〝一緒に住むニャゴローはなにもされないのか?〟などと聞いてくるのだが、美也殿の匂いがすれば直ぐ隠れるから直接的な被害は殆どない。
それでも一昨日は姉上との共同戦線で捕まってしまい、〝4WD〟とか笑いながらも全部の足に紙袋を被せられてしまった。
恐らくその前に見ていた猫にネズミが嚙みつく古いメリケンアニメの影響だろう。
腹の虫が収まらない我輩は、美也殿が〝自作ポエム〟なるものを綴ったノートという紙の集合体を部屋から盗み出し、キッチンのテーブル上へと放置してやった。
いつも逃げ回っているばかりではないぞ!
窮猫美也殿を噛むの精神だ!
おっとっと!
ついでに御長男の部屋にあるベッドへ転げまわる仕事も忘れずにこなすとするか。
追い詰められても尚働く我輩は、今日も仕事師の鏡と褒め称えられるであろう。
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