仕事猫ニャゴロー

どてかぼちゃ

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第39話 吾輩は別荘にウキウキである!

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 坂の病院を道路挟んで反対側辺りにそこそこ大きなお屋敷がある。
 御子息のご友人が共同購入したとかで、現在内装工事をしているらしい。
 となれば、当然そこも我輩の別荘となる。

 下見も兼ねて我輩の行う明日からの作業に備えるとしよう。
 出来る事なら業者の帰った後に……。

 - 午後7時 -

 坂の病院でビーグル犬に猫パンチマッサージをしつつ、様子を伺っている我輩。
 業者の動きを見てみると、朝は8時頃から夕方5時までが業務時間のようだ。
 なるほど、それならば我輩も同じように朝から手伝おう。

 しかし今日は下見。
 作業場全体を把握する為、業者が全てが居なくなった今、中を確認する。
 この時室内は既に暗く、奥に至っては暗黒世界そのもの。
 
 「ニャーン」

 ほぼ暗闇な建物内は物音ひとつなく、猛烈不気味。
 〝誰もいませんか?〟的な鳴き声をかけて恐る恐る内部へ。

 {ガタン}

 「ニャギャッ!」

 階段近くで何か物音がした!
 渓流釣りに使用するハリスよりは図太い我輩の神経でもこれには驚くぞ!?
 
 慌てふためき近くの壁を片っ端から引っ掻いてしまった。
 勿論、爪を出して。

 
 数分の後、落ち着きを取り戻した我輩。
 改めてこの家を見渡しこう思う。
 
 外観は結構大きな二階建てで、どこかモデルルームの展示物にも見えるほど。
 玄関も一般に比べるとかなり大きく、一般家庭のそれを遥かに凌駕する。
 坪数にして200はあろうかと思うほどに広い敷地。
 これぞ田舎の金持ちといったところか。
 元の持ち主は農家だったのであろうな。
 納屋もあるし。
 
 次は間取りの確認。
 先ずは土足のまま一階右手リビングへ。
 だだっ広い部屋の奥はキッチンと繋がっている。
 どうやら三河家と同じ様な作りらしい。
 洗面や浴室以外にも、結構な数の部屋があるな?
 この様子だと2階も相当な部屋数になるはず。
 ふむ、そっちは後で調べるとして、早速仕事に取り掛かるとするか。

 {ガリリリリ}

 我輩が来た事を知らせる為、太い柱には片っ端から爪痕を残す。
 クマのする縄張り用目印みたいに。

 {ガタタン}
 
 「ブギャアアァァァッッ!」

 全身の毛を立てて口から心臓が出るほど驚いた!
 あきらかに人工的な音ではないか!
 しかも無人なはずの2階から!
 もしかして……霊? 

 冗談ではないぞ?
 我輩そう言った類の話は大っ嫌いだ!
 
 べ、別に怖い訳では無いぞ?
 ビ、ビビっているのでは決してないからな。
 ブ、ブルブル震っているのは武者震いなんだからな。
 そそそそその証拠に今から音のした2階を確認するんだからな!

 {ジョロロロロ……}

 興奮のあまりオシッコが出てしまった。
 け、決して恐ろしさからくる失禁なんかじゃないんだからなっ!
 
 
 ムムム?
 なにやら明かりが見える。

 階段を上がってすぐそれが確認できた。
 出っ歯の亀太郎宛ら明かりの漏れる部屋を覗くと……

 「捕まえたっ!」

 「ニャギャンッ!」
 {バタバタバタッ}

 突然袋を被せられて大パニック!
 暴れまわる我輩に一撃の鉄拳が!

 {ドンッ}
 「ウギャニャン!」

 「あ! ニャゴローじゃないの? ごっめーん、てっきりネズミかなにかだと」

 ネズミにその一撃を与えたら死ぬぞ馬鹿者メがっ!
 我輩ですら大打撃だ!
 まぁ今回は、ほんの少し内臓が破裂しただけだが……。

 「日中は何かと忙しいから少しずつモノを運ぼうと思ってね。2階の部屋はほぼ完成しているから」

 この人間は御子息の友人で、この家における共同購入者の一人である。
 もしかして引っ越しを少しずつしているのか?
 名前は……〝糞ババァ〟だったかな?
 確か御子息がそう呼んでいた記憶が。

 その後ずっと我輩に話し掛ける彼女。
 一人で作業が寂しいようだったので、終わるまでつき合う事に。
 そしていつの間にやら一人と一匹はそのまま夢の中へ。

 
 むにゃむにゃ……明日こそ仕事をがんばろう。
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