仕事猫ニャゴロー

どてかぼちゃ

文字の大きさ
56 / 218

第56話 吾輩は仏壇なんて知らないのである

しおりを挟む

 いつものように商店街へ。
 すると八百屋から大魔法の呪文が聞こえてくる。
 声のする方へ猫足で近づき、家の中を覗きこむと……
 
 「あなか~しこ~あなかし~こ」

 俳句大会か?
 おかしな着物姿の禿げ頭を先頭に、黒いタンスの前へ正座する八百屋一家。
 なんだこの絵面は?

 「ここで少し休憩をしましょう」

 ハゲがそう言ったら、家族ともども違う部屋へ行ってしまった。
 チャーンス!

 忍者も羨む軽快な身のこなしで、黒いタンス前へ瞬時に到着する我輩。
 しかし思いのほか扉のある位置が高く、中がよく見えない。

 トントーンと小さな段差を利用して黒いタンスの上段へと駆けあがる。
 するとそこは、金を贅沢に使用した素晴らしい小部屋となっていた。
 そこで小さな額縁を発見、よーく見てみると……
 
 やや!?
 これは八百屋のジジイではないか?
 キサマ死んだのではないのか?
 しかもこんな小さくなりおってからに!
 その上ガン無視か?
 偉くなったもんだなジジイよ!?

 ならばと挨拶代わりに爪を立ててガリガリ表面を削る。
 が、何の音沙汰もない。
 これでもまだダンマリかジジイめがっ!
 
 腹が立ったから額縁ごと下に落としてやった。
 その隣にあった黒くて小さい墓石のようなものも序にポイーっと。

 それにしてもここは暑いな。
 よく見れば左右に蝋燭、下段に火のついた抹茶素麺があるではないか。

 先ずは臭い煙をだしながら燃えている素麺を小さい額縁と同じ場所へ捨てる。
 そして次は蝋燭だ。

 右側はすんなりフッと息で消すことに成功。
 そして反対側の蝋燭を消すために振り返ろうと思ったその時!

 「ニギャアアアアッ!」

 {ガチャガチャガッチャーンッ}

 熱い!
 蝋燭に尻尾が触れて火の近くから半透明なお湯が降って来た!
 不思議な事にソレは我輩の尻辺りに着くと白く固まって取れないではないか?
 
 これには堪らず大慌てで黒いタンスから飛び出す。
 そのまま近所の魚屋にある商品が並べられたケース目がけて猛ダッシュ!
 丁度店主が居なかったから〝キンメ〟に腰をつけて冷やし、事なきを得た。
 折角なので背中のいい部分を齧っておくか。

 「あぁっ! 母さんっ! 仏壇の蝋燭が下に落ちて火がっ! しかも滅茶苦茶だぞ!? どうなってるんだこれは?」

 などと八百屋の方からパニくった声が聞こえてくるも、我輩には一切関係ない。
 それこそジジイの如く無視を決め込む。
 尻も大したことはないようなので、帰る事にしよう。
 それにしてもキンメの身は美味しいなぁ。


 その後、八百屋へは消防車なる赤い大きなトラックが出動して一時騒然となるも、ボヤ程度で済んだと商店街の連中はホッと胸を撫でおろしたそうな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...