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第176話 吾輩は年末年始も大忙しである③
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年越し蕎麦。
この国各地に〝ちょんまげ時代〟後期辺りから見られる風習。
すぐに切れる事から一年の厄災を断ち切るとの意味が込められているとか。
そのせいか商店街の飯どころはどこも蕎麦を取り扱い始める。
うどん屋や定食屋はもとより、なぜ生グッサーすし屋やブヒブヒかつ屋まで……
まあ、これらは和食で括ればまだ分かる。
パスタ国料理や高級ワイン国料理の店はふざけてるのか?
なにが蕎麦ゲッティ―だ!
くっさいへんな油でヌルヌルにしただけではないか!
それにソバグラってなんだワイン国料理屋よ?
まさか蕎麦の身から肝臓だけを取り除いて集めたとは言うまいな?
オフザケが過ぎるキサマの店にはお仕置きが必要か?
トリコロールの旗をこっそりプーチン国の旗とすり替えるぞバカモノめが!
そもそも蕎麦とはなんだ?
美也殿と見る時代劇によく出てくるが、三河家では一度も見たことがないぞ?
見るにゾゾゾと旨そうに食っているのは確かだが……
とりあえずそこのうどん屋でテイスティングしてみるとするか。
なになに、さすけうどん……?
(さぬきうどん)
意味が分からんがまあいい。
こっそり中へ……
「らっしゃーやしーっ!」
入店する客と同時に店内へ侵入!
途端、鼻を刺激する芳醇なかをりが!
魚だ!
しかも手間暇かけて作った高価なカツオ節の香り!
これには堪らず我輩涎がボーボーのナイアガラフォール状態に!
店を見渡すとなぜか今にも死にそうなジジイとババアの客ばかり!
ヤツラからランチを頂く事など造作もなかろうて!
そんな感じで、一番身近にいるジジイとババアのいるテーブルへ。
トントントーンとリズミカルに上ると、そこには二種類の蕎麦らしきモノが!
ジジイは黒い箱の中に丸出しの細長いサナダムシのようなものを。
ババアはどんぶりの中にある熱々の汁に浸かったサナダムシを。
ほほう、このサナダムシそっくりのひも状のものが蕎麦というワケか。
ち……いや、ニャゴロー覚えた!
そしてこの場合、我輩が頂くのは丸出し一択!
なにせ猫舌であっついのは食べられないからだ!
動きがスーパースローなジジイの目を盗み蕎麦をガブリ!
そのまま逃げようとしたが……
マッズ!
なにこれマッズ!
カツオの香りは?
鰹節の味は?
速攻吐き出す我輩!
直後、目にも止まらぬ速さで店外へ脱出!
人間はバカなのか?
もしかして味覚音痴?
あんなマッズイもの食えるか!
なんかだんだん腹が立って来たな!
となればこのピンクのちゃんちゃんこ付ではマズイ。
ダッシュで近所のパン屋へ侵入、一直線に娘の部屋へ!
しかし!
……ここにはないではないか!
高校生なら化け道具の一つも持てやバカモノが!
そんな訳で反対側にある両親の部屋へ!
鏡の前にある箱を発見、パカっと開ければ……
ありましたー!
服の上から様々な道具を使って三毛猫柄へチェンジ!
特にお顔は念入りにと……
―― 20分後 ――
出来た!
我輩で20分もあれば化けられるのに、人間の雌はなぜあれ程時間がかかるのか?
まったく謎であるな。
そんな訳でファンデーションやチーク、マスカラで色付けした我輩。
再びうどん屋へ!
うけとれ我輩の糞尿アタックを!
ニャアァァァァァァァァァァッ!
この日、創立百数十年で商店街一の老舗が暖簾を下ろす運びとなった。
ちょんまげ末期時代に牛鍋屋としてスタートしたこの店。
時代の波をその時に流行った取扱商品で幾度もピンチを乗り越えて来た。
ここ数十年は経営も安定し、うどん屋として延々と続くはずだったのだが……
今ここに、たった一匹の猫のせいでその歴史へ終止符を打たれた。
大晦日で年越し蕎麦。
奇しくもそれは、商店街のうどん屋が蕎麦で営業を断ち切られた瞬間であった。
この国各地に〝ちょんまげ時代〟後期辺りから見られる風習。
すぐに切れる事から一年の厄災を断ち切るとの意味が込められているとか。
そのせいか商店街の飯どころはどこも蕎麦を取り扱い始める。
うどん屋や定食屋はもとより、なぜ生グッサーすし屋やブヒブヒかつ屋まで……
まあ、これらは和食で括ればまだ分かる。
パスタ国料理や高級ワイン国料理の店はふざけてるのか?
なにが蕎麦ゲッティ―だ!
くっさいへんな油でヌルヌルにしただけではないか!
それにソバグラってなんだワイン国料理屋よ?
まさか蕎麦の身から肝臓だけを取り除いて集めたとは言うまいな?
オフザケが過ぎるキサマの店にはお仕置きが必要か?
トリコロールの旗をこっそりプーチン国の旗とすり替えるぞバカモノめが!
そもそも蕎麦とはなんだ?
美也殿と見る時代劇によく出てくるが、三河家では一度も見たことがないぞ?
見るにゾゾゾと旨そうに食っているのは確かだが……
とりあえずそこのうどん屋でテイスティングしてみるとするか。
なになに、さすけうどん……?
(さぬきうどん)
意味が分からんがまあいい。
こっそり中へ……
「らっしゃーやしーっ!」
入店する客と同時に店内へ侵入!
途端、鼻を刺激する芳醇なかをりが!
魚だ!
しかも手間暇かけて作った高価なカツオ節の香り!
これには堪らず我輩涎がボーボーのナイアガラフォール状態に!
店を見渡すとなぜか今にも死にそうなジジイとババアの客ばかり!
ヤツラからランチを頂く事など造作もなかろうて!
そんな感じで、一番身近にいるジジイとババアのいるテーブルへ。
トントントーンとリズミカルに上ると、そこには二種類の蕎麦らしきモノが!
ジジイは黒い箱の中に丸出しの細長いサナダムシのようなものを。
ババアはどんぶりの中にある熱々の汁に浸かったサナダムシを。
ほほう、このサナダムシそっくりのひも状のものが蕎麦というワケか。
ち……いや、ニャゴロー覚えた!
そしてこの場合、我輩が頂くのは丸出し一択!
なにせ猫舌であっついのは食べられないからだ!
動きがスーパースローなジジイの目を盗み蕎麦をガブリ!
そのまま逃げようとしたが……
マッズ!
なにこれマッズ!
カツオの香りは?
鰹節の味は?
速攻吐き出す我輩!
直後、目にも止まらぬ速さで店外へ脱出!
人間はバカなのか?
もしかして味覚音痴?
あんなマッズイもの食えるか!
なんかだんだん腹が立って来たな!
となればこのピンクのちゃんちゃんこ付ではマズイ。
ダッシュで近所のパン屋へ侵入、一直線に娘の部屋へ!
しかし!
……ここにはないではないか!
高校生なら化け道具の一つも持てやバカモノが!
そんな訳で反対側にある両親の部屋へ!
鏡の前にある箱を発見、パカっと開ければ……
ありましたー!
服の上から様々な道具を使って三毛猫柄へチェンジ!
特にお顔は念入りにと……
―― 20分後 ――
出来た!
我輩で20分もあれば化けられるのに、人間の雌はなぜあれ程時間がかかるのか?
まったく謎であるな。
そんな訳でファンデーションやチーク、マスカラで色付けした我輩。
再びうどん屋へ!
うけとれ我輩の糞尿アタックを!
ニャアァァァァァァァァァァッ!
この日、創立百数十年で商店街一の老舗が暖簾を下ろす運びとなった。
ちょんまげ末期時代に牛鍋屋としてスタートしたこの店。
時代の波をその時に流行った取扱商品で幾度もピンチを乗り越えて来た。
ここ数十年は経営も安定し、うどん屋として延々と続くはずだったのだが……
今ここに、たった一匹の猫のせいでその歴史へ終止符を打たれた。
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奇しくもそれは、商店街のうどん屋が蕎麦で営業を断ち切られた瞬間であった。
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