【完結】ひとつのアイスを二人でかじりながら、駅前を歩きたい

ノエル

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11 健斗のうちでご挨拶

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「いつもクールなエイが、泣きながら俺の胸に縋りついてくるなんてな! かわいすぎだろ……くぅー!」

健斗が俺のベッドの上で、両手で顔を隠してゴロゴロしている。俺はベッドに座り、俯いていた。あまりの恥ずかしさに、涙はとっくに乾いている。

「俺、この思い出だけで、しばらく生きていける」

「それは止めろ。 きれいさっぱり、忘れてくれ」

健斗が俺に顔を向けた。すごくうれしそうだ。

「無理」

健斗は言うなり、俺を背後から両足で挟んで座った。背中から抱きしめてきて、股間をすりすり摺り寄せる。

「ほら、今だって、もうこんなになっちゃった。こんな最高な記憶、忘れるわけないじゃん」

まさか、尻に感じるこの感触は!

「思い出しただけで、勃っちまった。やっべー」

健斗! それは本当にやばいぞ!

「俺は準備万端だ。でも、俺はまだエイにキス以上のことはしない」

「お、おう」

それは、助かるかも。

「エイはまだ、いっぱいいっぱいみたいだからな。今、俺に、ちん〇を触られたら、パニック起こすんじゃね?」

俺は驚愕して健斗を振り向いた。

「俺のちん〇を……触る? 健斗が?」

そうか。付き合うというのは、そういうことなのか。男が男のちん〇を触るんだ。俺にできるのか? いや、出来るだろう。たぶん、その時がくれば。

「おうよ! なんなら、お前のちん〇、しゃぶってやるぞ」

「はあ!?」

お前、俺のをしゃぶれんの!?
今度こそ、本当に度肝を抜かされた。唖然としていると、首筋にキスをしてくる感触がした。

「だけどさ。エイは口内潔癖者だから、俺のをしゃぶってくれとか、絶対言わないし、させないから。そこは安心しろ」

安心していいのかわからないが、頭がくらくらしてきたのはわかった。再度、首筋にキスの感触がした。かわいいなあ、とか呟いているのが聞こえた。

俺は同性との恋愛を受け入れた。だから、健斗の位置に追いついたと思っていた。だが、健斗はすでに俺のはるか前方を走っていた。


ぴょろ~んと電子音がして、我に返った。

「あ? ラインの着信音? 兄貴かも。スマホどこだっけ」

俺は、健斗がベッドの上に放り出していたスマホをとって、渡した。

「やっぱ、兄貴だ。クソー、いいところで」

「そういえば、今日、用事があったんじゃね?」

健斗がバツの悪そうな顔をした。

「兄貴が大学を休学して写真の勉強のために留学する、とかで、顔を見せにくるんだった。勝手に行けばいいのにさあ。兄貴、一人暮らしで、ほとんど会うこともなかったんだぜ?」
「いや、留学なら家族に報告に来るだろ」

健斗は俺を無視してスマホをいじっている。

「えーと『神社はもう出た 今はエイのうち』っと」
ぴょろ~ん
「あー? 『エイって誰だ』、だと? 『おやじに聞け』っと」
ぴょろ~ん
「車で迎えにくる? うぜー」
「お兄さんが迎えに来るのか。じゃあ、下まで送る」

俺も混乱しているから、ちょうどよかった。こいつをさっさと家に帰そう。



◇◇◇



「立花君、あけましておめでとう」

「あけましておめでとうございます」

健斗の親父さんに挨拶した。明らかに『なんで、君がいるの?』っていう顔をしてる。

「あなたがエイ君ね。健斗から聞かされてるわ。会いたかった。あけましておめでとう」

健斗のお母さん、すごく上品でお嬢様みたいな人だ。

「おめでとうございます」

俺は、なぜここに連れてこられたのか腑に落ちないままだが、一応、礼儀として挨拶をした。


俺は、健斗を見送りにマンションの下まで行ったんだ。そこで、健斗のお兄さんに、半ば拉致されるような形で連れてこられた。

お兄さんは優斗さんというんだけど、優斗さんは俺を見るなり、
「立花君って、立花英君だったんだ! これはすごいな! 健斗、お前、たまにはいいことをするじゃないか!」

「あ? なんだよ、兄貴。エイに触んな」

「立花君、一緒に家に行こう」

「え? 俺も? なぜ?」

「さあさあ、立花君、早く車に乗って? いや、健斗、そっちじゃない。立花君は助手席だ。健斗、お前は自転車と一緒に後部に乗れ」

「あーでも、エイがうちに来んのいいな。さんせーい!」

というわけで俺は拉致られた。



で、健斗んちの豪邸で、コーヒーを飲みつつ、只今、みんなから尋問中。

「そうか、高校1年になってから、妹さんと二人で暮らしているんだな。食事なんかはどうしてる?」

「家政婦さんが週2で来てくれているので、料理とか掃除をやってもらってます」

それなら安心だな、と親父さんが頷く。優斗さんが身を乗り出した。

「モデルの仕事は、写真撮影だけらしいね?」

よく知ってるな。お兄さん何者?

「はい。16になるまでは雑誌モデルだけです。父がそういう契約をしています」

「え? エイって何月生まれ? まだ15歳なの?」

「2月生まれだから、来月16歳。健斗は?」

「おれは8月生まれだから、すでに16歳」

「来月誕生日かあ。君すごく狙われてるよ。16になったら、いきなり仕事増えるよ、きっと」

優斗さんは、土日などの大学が休みの日は、写真家のスタジオアシスタントをしているらしい。

「噂には聞いていたけど、すごいフォトジェニックだなあ。さっき、車の中から君の立ち姿を見た時、驚いたよ。いやもう、なんていうかオーラがね」

いや、勘違いです。そんなものはありませんから。

「みんなが君を撮りたがるのもわかるな。あー、俺にも撮らせてくれないかなあ。ダメ?」

優斗さんが立ち上がって俺の隣に跪いてきた。このお兄さんも、なんかおかしい。

「優斗、やめなさい。立花君が困っているだろう」「そうだ兄貴、馴れ馴れしいぞ」

そうだそうだ。俺もそう思う。

「優斗がしつこくして、健斗が振られたらどうするの?」

これはどうだろう。お母さんも何かおかしくね?

「まだ、口説くのは早過ぎたか。まあ、それはおいおいね」

と優斗さんは立ちながら、俺にウィンクした。


「エイが来月誕生日なら、お揃いのピアスをプレゼントしたい! 1セット買って、お互いに片耳づつ、つけようぜ。親父、金くれ」

健斗がうきうきしながら、親父さんを見た。

「駄目だ。ピアスなど高校生のプレゼントには高価すぎる。お前にはまだ早い」

「えー! それいつ時代の話だよ」

「お揃い、いいわね! お母さんが買ってあげる」

「お母さん! そうやって、また健斗を甘やかす」

「健斗が好きな子を家に連れてくるなんで初めてじゃない。おかあさんも張り切るわよ」

好きな子……。俺はコーヒーを吹き出しそうになった。お母さんの目はキラキラ輝いている。

「プラチナ台にブラックダイヤモンドのピアスなんて、エイ君に似合いそうだわ」

「それいいね。ブラックダイヤモンドなら健斗にも似合いそうだ」

「学校にも着けていけるように、小さめのにしてくれ」

「外商を呼ぶわ。楽しくなってきたわね」

親父さんが済まなさそうに俺を見た。



帰り際に親父さんが皆に聞こえないように、小さな声で言った。

「立花君、枕営業を強要されても断れよ」

「もちろんです。芸能界に野望はありませんから」

親父さんは満足そうに頷いた。

「もしも、困ったことが起きたら、私に言いなさい。あとで健斗に私の連絡先を渡しておく」

「ありがとうございます」

「私たち夫婦は、たぶん君が思う以上に力がある。頼ってくれていいぞ」

なんか、健斗のお父さん、ラスボス感があるな。



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