ヒアソビ ~定年教師と蕾たち~

razor777

文字の大きさ
3 / 5
阿る

第二話

しおりを挟む
「先生、本日もよろしくお願い致します」

「ええ、嫌で、しょうがないですが、我慢してやってあげますよ」

「ああっ! ありがとうございます。さすが、先生ですわ」
 
苦々しく、ため息混じりで答える男の言葉に、なぜか感銘を受けたかのような反応を示す少女。

男は、両手を胸の前で組んで、こちらを嬉しそうに見つめているメイド服の少女一瞥する。そして、勧められたイスに目をやった。

「…………」

男は、溜息を飲み込むと、イスに座った。

「くっ……」

少女が息を飲む。

「ふぅ、危なかったですわ」

男が、声の方に目を向ける。先ほどのメイド服の少女が、ビデオカメラでこちらを撮っていた。

「撮るのかい?」

男は、内心引いているはずだが、気にした雰囲気もなく確認した。

「ええ、主人からの指示ですので」

男は、しばらく視線を下に落とし、これ見よがしな、ため息を一つ吐く。そして、前を向いた男の顔は、ひどく穏やかだった。

「それで、今日はどうしたいんだい?」

パチンとメイド服の少女が指を鳴らすと、扉から執事服の少年が現れた。その手には、食事が乗せられており、男の前に配膳される。

「主人からの注文で、半分残しでお願い致します。癒し用と仰ってました」

男は内心ホッとしていた。今回は、半分食べるだけで良いようだ。

「ですが、スプーンはそれぞれのものを使ってください。ああ、それは私の分ですわ」

メイド服の少女はそう言って撮影を継続する。この少女も、配膳の執事も気にしていない。この状況を。

「約束ですからね。しかたがありません。付き合いましょう」

そう言って、男は食事を開始した。そのメニューは、上等なランチ。メインのシチューハンバーグにサラダとライスとスープ付き。

男はそれらを、半分だけ食べた。

「ご馳走さまでした」

「それでは、失礼しまして」

メイド服の少女は、そう言ってスプーンを回収していく。すると、
どこからともなく、スプーンと大きめな器を取り出した。

「お願いしても?」

そして、男は新たなスプーンと器を渡される。メイド服の少女は、再びカメラを構えた。

「自分の見識の狭さに気付かされますが、やはり、私には理解し難いですね」

男はそう言いながらも、自分の食べ残しを、残飯をまとめるように、受け取った器に放り込む。

「では、食事と散歩をお願い致します」

男は、首輪を手渡された。

「本当に手のかかる子だ」

男は、イスから立ち上がり、残飯を入れた器を床に置く。そして、イスに首輪をつけた。

「はあっ、はぁっ……」

途端、イスがイヌになった。しかし、よく躾けられているかのように、じっとしている。

「食べていいですよ、レイカ」

レイカは、男の用意した器に顔を突っ込み、そのまま食べた始めた。時折、そばで見下ろしている男の顔を見上げると愉悦の笑みを浮かべ、食事を再開する。

「食べ終わったら、散歩に行きましょうか」

「ワンッ!」

レイカは、鳴いて返事をすると、身体を男の足に戯れつくように纏わりついた。

「全部食べてからですよ」

「くぅーん」

注意されたレイカは、悲しそうに喉を鳴らした。そして、男に見守られながら、器を舐めてキレイにして食事を終えた。

そして、男がリードを見せると、興奮してるような目つきになり、レイカは男に飛びかかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

筆下ろし

wawabubu
青春
私は京町家(きょうまちや)で書道塾の師範をしております。小学生から高校生までの塾生がいますが、たいてい男の子は大学受験を控えて塾を辞めていきます。そんなとき、男の子には私から、記念の作品を仕上げることと、筆下ろしの儀式をしてあげて、思い出を作って差し上げるのよ。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...