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「ダメだ!」
アーロン様が珍しくわがままを言っている。
顔を赤くして本当に怒っているのかキッと周りを睨みつけた……
少し前私はザックスさんと話を終えたあとローゼン王子とアーロン様の元に戻ってきた。
そしてこの屋敷にしばらく泊まることを伝えてアーロン様には一人で帰って頂くことになったのだが……冒頭のように怒ってしまったのだ。
「アーロン様、何がダメなんですか?私がサラ様のお世話をすること?それとも一人で帰ることですか?」
「お世話はいい、一人で帰るのは嫌だが……我慢出来る。それよりもマリルがここにずっと住むなんて嫌だ!」
「ずっとでは無いです、サラ様の調子が良くなるまでです」
「それって……少なくとも1,2年はって事だろ?」
アーロン様は眉を下げて泣きそうな顔で私を見つめてきた。
その顔は年相応にわがままを言う子供に見えた。
私はクスッと笑って思わずアーロン様の頭を撫でてしまった。
「マ、マリル!」
アーロン様は私の行動に顔を真っ赤にする。
子供扱いされて恥ずかしくなってしまったのだろう。
「す、すみません。アーロン様が可愛くて」
慌てて手を引っ込めた。
「いや、いいんだ」
アーロン様は赤い顔を隠すように下を向いてしまった。
なので私はそのままアーロン様に話しかけた。
「アーロン様、私はそんなに長くはサラ様にお仕えしませんよ。だって私のご主人様はアーロン様ですから」
「でも、症状が良くなるまでって……」
「それは治るまでではありません。サラ様や周りの方が自分でできるようになるまでです。ですから遅くでも1ヶ月程で帰れると思いますよ」
「1ヶ月……それでも長いような」
アーロン様はまた眉をひそめた。
「それならアーロン様がたまに様子を見に来ればいいじゃないか?それで僕も一緒に」
ローゼン王子がそんなことを言い出した。
アーロン様をだしにサラ様の様子を伺おうとしているのかもしれない。
私はローゼン王子に視線を送った。
「それはダメです!このお屋敷には男子はしばらく立ち入り禁止となりますので、お会いになるなら私かザックスさんに連絡してください」
「男子禁止?」
「そうです、王子と言えど禁止です!」
私が頷くとアーロン様の表情が幾分晴れた。
「それならわかった」
アーロン様は仕方ないと了承してくれた。
しかしいくら病気の事が心配だからといってここまで私と離れることが不安だと先が思いやられる。
お世話係でそばにいるつもりだが少し考えないといけない。
しばらく離れるのはいい機会かも……
私はそんな事を考えていた。
ローゼン様も少し渋っていたがサラ様の為だとザックスさんにも言われるとわかったと了承する。
早速とお2人にはこの建物から退場して頂くことにした。
「私も一度帰ります。家を空ける事を家族に言わないと……」
まぁ私が居なくても困る事は無いからすぐにでもOKが出るだろうと思っていた。
「私も説明の為に同行いたしますね」
するとザックスさんが一緒に屋敷に向かうと何やら書類を準備しだした。
ザックスさんの用意を終えるまで私たちは少し待ち、屋敷に戻ることになった。
「おかえりなさいませ」
まずは私の家、ジェイコブ家へと戻ってきた。
「それではアーロン様、また……」
アーロン様に送って頂いたお礼を言って別れようとすると手を取られる。
「アーロン様?」
寂しそうな顔でじっと瞳を見つめられた。
「何か……困った事などあればすぐに知らせて欲しい」
真剣な様子に私はニコッと笑いアーロン様の手を握り返す。
「はい、なにかあればまっさきにアーロン様に相談いたします。アーロン様もご自分のケアを忘れずにしてくださいね」
「ああ、またね」
そういうとアーロン様はようやく笑顔を見せ、私の手の甲を引き寄せ軽くキスをした。
驚く私の手をそっと離すとアーロン様は馬車に戻り屋敷へと帰って行った。
唖然と立ち尽くす私はザックスさんの咳払いでようやく意識を戻すことができた。
アーロン様が珍しくわがままを言っている。
顔を赤くして本当に怒っているのかキッと周りを睨みつけた……
少し前私はザックスさんと話を終えたあとローゼン王子とアーロン様の元に戻ってきた。
そしてこの屋敷にしばらく泊まることを伝えてアーロン様には一人で帰って頂くことになったのだが……冒頭のように怒ってしまったのだ。
「アーロン様、何がダメなんですか?私がサラ様のお世話をすること?それとも一人で帰ることですか?」
「お世話はいい、一人で帰るのは嫌だが……我慢出来る。それよりもマリルがここにずっと住むなんて嫌だ!」
「ずっとでは無いです、サラ様の調子が良くなるまでです」
「それって……少なくとも1,2年はって事だろ?」
アーロン様は眉を下げて泣きそうな顔で私を見つめてきた。
その顔は年相応にわがままを言う子供に見えた。
私はクスッと笑って思わずアーロン様の頭を撫でてしまった。
「マ、マリル!」
アーロン様は私の行動に顔を真っ赤にする。
子供扱いされて恥ずかしくなってしまったのだろう。
「す、すみません。アーロン様が可愛くて」
慌てて手を引っ込めた。
「いや、いいんだ」
アーロン様は赤い顔を隠すように下を向いてしまった。
なので私はそのままアーロン様に話しかけた。
「アーロン様、私はそんなに長くはサラ様にお仕えしませんよ。だって私のご主人様はアーロン様ですから」
「でも、症状が良くなるまでって……」
「それは治るまでではありません。サラ様や周りの方が自分でできるようになるまでです。ですから遅くでも1ヶ月程で帰れると思いますよ」
「1ヶ月……それでも長いような」
アーロン様はまた眉をひそめた。
「それならアーロン様がたまに様子を見に来ればいいじゃないか?それで僕も一緒に」
ローゼン王子がそんなことを言い出した。
アーロン様をだしにサラ様の様子を伺おうとしているのかもしれない。
私はローゼン王子に視線を送った。
「それはダメです!このお屋敷には男子はしばらく立ち入り禁止となりますので、お会いになるなら私かザックスさんに連絡してください」
「男子禁止?」
「そうです、王子と言えど禁止です!」
私が頷くとアーロン様の表情が幾分晴れた。
「それならわかった」
アーロン様は仕方ないと了承してくれた。
しかしいくら病気の事が心配だからといってここまで私と離れることが不安だと先が思いやられる。
お世話係でそばにいるつもりだが少し考えないといけない。
しばらく離れるのはいい機会かも……
私はそんな事を考えていた。
ローゼン様も少し渋っていたがサラ様の為だとザックスさんにも言われるとわかったと了承する。
早速とお2人にはこの建物から退場して頂くことにした。
「私も一度帰ります。家を空ける事を家族に言わないと……」
まぁ私が居なくても困る事は無いからすぐにでもOKが出るだろうと思っていた。
「私も説明の為に同行いたしますね」
するとザックスさんが一緒に屋敷に向かうと何やら書類を準備しだした。
ザックスさんの用意を終えるまで私たちは少し待ち、屋敷に戻ることになった。
「おかえりなさいませ」
まずは私の家、ジェイコブ家へと戻ってきた。
「それではアーロン様、また……」
アーロン様に送って頂いたお礼を言って別れようとすると手を取られる。
「アーロン様?」
寂しそうな顔でじっと瞳を見つめられた。
「何か……困った事などあればすぐに知らせて欲しい」
真剣な様子に私はニコッと笑いアーロン様の手を握り返す。
「はい、なにかあればまっさきにアーロン様に相談いたします。アーロン様もご自分のケアを忘れずにしてくださいね」
「ああ、またね」
そういうとアーロン様はようやく笑顔を見せ、私の手の甲を引き寄せ軽くキスをした。
驚く私の手をそっと離すとアーロン様は馬車に戻り屋敷へと帰って行った。
唖然と立ち尽くす私はザックスさんの咳払いでようやく意識を戻すことができた。
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殿下が『アーロン様』と呼んでいます。殿下の方が格上ですので、臣下筋のアーロンくんの事は呼び捨てですね。
(*´・ω・`)b
初々しくてよろしい(^ω^)
ただ、アーロンくんは頑張ってもう少し大人になりましょう。
紳士は一日にして成らず
常に精進ですよ。
花はその数や種類によって色々な意味があるから、詳しい人を側に置いてアドバイスを貰いながら適切なものを添えましょう。
そもそも男の考える贈り物は、女性にとって『ありがた迷惑』なものが多くなりがち。
本人に聞くのが一番ですが、今は会えないので侍女さんを通じて選びましょう。
日々のちょっとした気遣いと、大袈裟過ぎない贈り物が良いですよ♪
ピーマン美味しいよ(^ω^)
どうしても苦手ならパプリカを探しましょう。
見つからないなら、農家と契約して『完熟させたピーマン』を取り寄せましょう。甘くて美味しいので、子供でも安心して食べられます。
(*´・ω・`)b
油もラード系は避け、オリーブ油を使用するなら、ある程度は大丈夫。
見た目から敬遠されがちですが、サツマイモ類があるなら色々楽しめますよ。
甘いものがどうしても欲しいなら、ドライフルーツが良いかと。
干し無花果とかプルーン、レーズンなどは手に入り易いと思います。
まあ、お金や手間は気にしなくても良い立場です。
経済も動くので、そこは贅沢にお金を掛けて権力フル活用しましょう。