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8章

426.解体

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「ウィードさん、解体少し見てもいいですか?」

ミヅキがウィードに話しかける。

「ん?ああ…いいが嬢ちゃんが見ても楽しくないと思うぞ?」

ウィードさんはプリンを大事そうにしまうと解体を再開する。

しかし台が高くてよく見えない…

「見えない…ベイカーさん!」

ミヅキがベイカーに手を伸ばすと、ベイカーがミヅキを抱き上げる。

ウィードはミヅキの視線を気にした様子もなく手際よく魔物を捌くと

「凄い!ユゲルさんと同じくらい上手いね」

ミヅキがベイカーに言うと

「嬢ちゃんユゲルの知り合いか?」

ウィードが手を止めてミヅキを見た。

「ユゲルさんはギルドの登録した町でお世話になりました!解体の仕方教えてくれるって!」

「ユゲルの奴、こんな子供に何を教える気だ!」

ウィードが呆れると

「なんだその話…俺は聞いてないぞ?」

ベイカーがミヅキをじろりと見つめる。

「あ、あれ?言ってなかったっけ?」

ミヅキがあさっての方向をみてとぼけている。

「確かに冒険者なら解体出来た方がいいがミヅキには必要ないだろ」

「えー!でも必要な技術なら覚えたい!」

「駄目だ!解体なら俺がやってやる!」

「ぶー!」

ミヅキが不貞腐れると

「ははは!いいじゃねぇかそんな年で解体に興味持ってくれるのは嬉しいもんだ!だが俺の仕事でもあるからな持ってきてくれればチャチャッと捌いてやるぜ」

ウィードが逞しい腕を見せる。

「ほら、こう言ってるだろ。ここのおじさんに任せておけばいいんだ」

「わかった…」

渋々頷くとその後もウィードが捌いてるのを興味深そうに見ていると…

「クッ!こいつは硬いのがきたな…」

先程までスルスルと動いていたウィードさんの手が止まる。

「どうしたの?」

ミヅキが聞くと

「こいつは皮が硬いの魔物でな…力任せにすると刃を傷めちまう…」

ウィードが硬い鱗の隙間に刃を入れる。

「あっ!そう言えばウィードさんリュカの剣に興味があったんだよね」

ミヅキは思い出すと、神木の木を取り出してウィードさんが使っている解体刃を見ると同じ形に加工する。

「おい!ミヅキ!」

ベイカーが止めるまもなくあっという間に仕上げてしまう。

その様子をウィードさんが口を開けて唖然と見つめていると

「はい!良かったらこれ使って見てください」

ミヅキがそこら辺の木でも渡すように神木のナイフを渡す。

「じょ、嬢ちゃん…これは…」

「ん?リュカと同じ素材のナイフだよ?」

「おい!こいつ何者だ!お前ら誰だ!」

ウィードが保護者のベイカーに怒鳴ると…

「ミヅキ…神木をそう軽々と人に渡すなよ」

「えー?駄目だった?ウィードさんは渡しても大丈夫そうだと思ったけどなぁ~」

ミヅキがニッコリと笑う。

「あっ!お前A級冒険者のベイカーってやつか!てことは…それの連れの黒髪の女の子…」

そう言ってミヅキを見ると

「ミヅキって言います!テイマーしてまーす!」

ミヅキが元気よく手を挙げて自己紹介した。

「お前らが話題の冒険者達だったのか…話だけは聞いていたが噂ばっかりで本物に会えるとは…」

「ベイカーさん凄く有名なんだね!」

ミヅキが驚くと

「お前のせいだろうけどな!」

ベイカーがミヅキの頭を叩く!

「いたーい!何するの…」

ミヅキが頭を抑えていると

「ベイカーさん女性を叩いたら駄目ですよ」

テオがミヅキを庇うように頭を撫でる。

そんなのほほんとした様子にウィードは

「本当に本物なのか?噂ではこの国も潰せるほどの力を持ってるなんて大袈裟に言っていたが…」

「それは大袈裟だよね~」

ミヅキがリュカ達を見て笑うと…

「「……」」

みんなが目をそらす…

「お、おいなんだよその反応…怖ぇなぁ…はは…は…」

馬鹿な噂が本当の様に感じてウィードが笑いとばす。

「ウィードさん…そんな訳ないじゃん…見てよこんなに可愛いか弱い女の子だよ?」

テオがミヅキを見せる。

「そ、そうだよな!そんな奴がいたら今頃大騒ぎだよな!」

「そうそう!」

リュカが頷くと

「前にドラゴンが来た時に暴れてた奴らでもない限り無理だよな!」

「ソウダネー」

「ムリダネー」

リュカとテオがウィードさんから目を逸らしながら頷いた…。

ウィードは気を取り直してミヅキから貰ったナイフを見ると…

「いや…坊主の剣も凄かったが…これはいいなぁ…」

ニヤッと笑うと

「じゃあちょっと試しに切らせてもらうな」

ウィードがミヅキを見るとニヤリと頷かれる。

先程まで刃が通らなかった場所に神木のナイフをつけると…スルッとナイフが魔物の皮を裂いた。

「おお!」

気持ち良い切れ味にウィードの顔がほころぶ。

「これは凄い…」

いつもなら時間のかかる魔物の解体が半分の時間で終わる。

「こいつは気持ちいいほどの切れ味だな…木のナイフとは思えん」

ウィードはナイフについた血を拭うと

「ありがとうな」

刃の方を持ってミヅキにナイフの柄を向ける。

「ん?」

ナイフを返そうとするウィードにミヅキが首を傾げると

「それはウィードさんにあげるために作ったんだよ」

「いや、こんな高価な物はもらえない」

ウィードが首を振って断る。

「ならこれをあげる代わりにリュカ達の解体を格安にしてあげてください」

ミヅキが頼むと

「そんな事でいいのか?」

「うん、これからお世話になると思うからよろしくお願いします!また揉め事に巻き込まれたら力になってください」

「ミヅキ…」

リュカとテオがミヅキを見つめる。

ミヅキは二人に笑いかけると

「ベイカーさんの防具が出来たらまた王都を少し離れるからねリュカ達はせっかく冒険者になったんだからここで頑張ってね」

「嬢ちゃんがそう言ってくれるなら喜んでやらせてもらうよ、それでこのナイフがもらえるなら文句はない」

「元々あげる予定だったから気にしないで下さいね、あっ、あとリュカ達の他にも何人かいるのでよろしくね」

「おお!ドンと来い!」

ウィードは胸を叩いた!

ミヅキはウィードさんにリュカ達の事をお願いすると受け付けへと戻る。

するとリク達が依頼書を手にミヅキ達を待っていた。

「遅いよ~」

リクが不貞腐れた顔をすると

「ごめんごめん!解体のウィードさんにみんなの事お願いしてたから」

「そ、そうか…なんか悪かったな」

リク達が急かした事で気まずそうな顔をすると

「初めの依頼だもんね!気持ちはわかるよ、それでどんな依頼にするの?」

「俺はこれがいいと思うんだ」

リクが依頼書を見せる。

そこには…

「オーク集落殲滅…」

「俺達向きじゃないか?」

リクがリュカに笑いかける。

「面白そうだな!コジローさんどう思う?」

「うーん…オーク集落か…ランクは一応Cランクか…そんなに大きくない集落なのかもな」

「どうかな!?ベイカーさん」

今度はベイカーに聞いてみると

「まぁコジローがいるなら大丈夫じゃないか?」

「「「やったー!」」」

「じゃあ早速受け付けに出しに行こうぜ!」

リクがコジローさんを引っ張っていく。

「どうする?俺達もついて行くか?」

ベイカーがミヅキに聞くと

「うーん…そうだね!昨日の事もあるしリュカ達の邪魔しないように見るだけでついて行こうか!」

「じゃあついでに俺達も何か依頼していかねぇか?」

【いいな!】

シルバが賛成する。

「あっじゃあ作りたいものあるから…向こうはオークだから…私達は鳥系がいいな!」

「おっ!いいね!じゃあちょっと依頼書見てこようぜ」

ベイカーとミヅキはお目当ての依頼書を探しに行った。
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