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11章

656.条約

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「あの子は…人族…なんですよね?それとも獣人?そうは見えないけど…」

バイオレッド様が不思議そうに私を見ている。

「もちろん人族です」

ベイカーさんがすかさず答えた。

「それにしては獣人に執着しているような…」

シリウスさんに引っ付いて撫で回している様子に驚いている…やはり人族が獣人を好きなどなかなか受け入れられないのだろう。

「それにシリウスがこんな風に体を触らせることも珍しいな…」

アトラス様が興味深そうにしている。

「その顔を見るに…嫌々やっているわけではないのだな?」

アトラス様がシリウスさんに確認した。

「勿論です。ミヅキにならどんなに触られても嫌ではありません」

シ、シリウスさん!

シリウスさんの言葉にキュンときた!

「それにミヅキは命の恩人ですから」

「え?もしかしてシリウスさんそれ気にしていつも触らせてくれるの?」

まさかそれが理由で無理してるとか…

不安になって撫でる手を止めた。

するとシリウスさんがそっと手を触って自分の耳を触らせる。

「そんな事ない、いつも言ってるだろ?ミヅキにやられて嫌な事などないと…」

「そ、そう?そんな嬉しい事言うと本当に好きにしちゃうよ」

「問題ない」

シリウスさんがいい笑顔で頷いた。

「おい!シリウス!なんだその顔!俺にはそんな顔しないじゃないか!」

黙って見ていたレオンハルト王子がたまらずにシリウスに怒鳴った!

「ミヅキもミヅキだ!そんなにシリウスを触って…」

悔しそうに見つめてくる。

そりゃそうだね、このシリウスさんのふわふわな耳触りたいに決まってるよね…

うんうんわかるよ…

私が一人納得するように頷いていると

「なんかまた、違うことでも考えてるんだろうな…その顔…」

ベイカーさんが一人満足そうな私の笑顔に苦笑した。

「凄く興味深い子だな…君は」

そんな私にアトラス様が優しく笑いかけた。

「よかったら私のも触って見るかい?」

手を差し出してきた!

「いいの!?」

ずっと狙っていた事だけに向こうから言ってくれるとは思わなかった。

思わず反応してしまった。

「ミヅキ、さすがに不味いだろ…」

ベイカーさんが止めるがアトラス様がひょいと私を抱き上げた。

もふもふのたてがみのような髪が目の前にある。

「触っていいぞ」

アトラス様がにっこりと笑った。

いいの?触るよ?

そっと触るとフワッと柔らかい感触がする。

これまた違った感触だ!

私は夢中で髪に顔を埋めた。

こ、これは…何とも言えないいい香り…でも強すぎず弱すぎず…こんなベッドあったら買っちゃうわ~

私は至福の時間を過ごした…

【ミヅキ、帰ってこいっ!】

するとシルバがクイッと私の服を噛んで引っ張った。

「ん?」

見るとシルバが不満そうな顔でこちらを見ている。

【あっ…シルバ嫉妬?もう可愛いなぁ~シルバ達が一番に決まってるのに】

私は苦笑すると

「アトラス様ありがとうございます!助けたお礼しっかりと頂きました」

私はアトラス様にペコッと頭を下げると

「これがお礼でいいのか?」

驚き聞き返す。

「はい!王様に抱っこして貰って触らせて貰うなんてなかなかできませんから!これでどっこいで」

アトラス様に下ろして貰うとシルバに抱きついた。

「それにあのハゲた人捕まえたのアトラス様とヴィーラ様ですからね、私達はロブさんに協力しただけです」

「しかし…」

アトラス様が眉を下げるとロブさんがアトラス様が何か言おうとするのを止めた。

「それでいい、わしらはただ獣人の国が困っていたから少し手を貸しただけだ。それに友を助けるのに礼など要らん!」

ロブさんかっこいい!

「そうですよね!友人を助けるのに理由なんていりませんよ」

ロブさん達を見るとウンウンと頷く。

「じゃああとは、偉い人達に任せて…私達はこれで…」

見合いから退散する仲人の如く部屋からそそくさと退散しようとすると…

「待て!」

あろうことかレオンハルト様に止められた!

ちょっと流れ考えてよ!今すごくスムーズに退散できそうだったのに…

「この後少し話したい…まだ獣人の国にいるよな?」

「えっ?」

私はベイカーさんを見ると

「結構予定より居ちまったからな…あと一日くらいなら」

「だって?」

「よし!じゃあさっさと条約結ぶから夜は一緒に飯を食おう!たまには俺にも時間をくれ!」

えー…どうしよう…

私が迷っていると

「こっちはシリウスとユリウスも来るぞ」

「行きます!」

私はすぐに返答した!

レオンハルト様が自分の言ったことなのに若干傷つきながら肩を落としてアトラス様の方に向かうとアトラス様が同情したように肩を叩いていた。

「じゃあアトラス、また今度な」

ロブさんがアトラス様に手を上げるとアトラス様は仕方なさそうに微笑んで頷くと無言で頭を下げた。

私達はどうにか王宮から脱出すると…

「はぁ!よかった~ロブさんありがとう。変に関わらないですんだよ」

ロブさんに改めてお礼を言った。

「お前達に迷惑かける訳にはいかんからな。で?どうするんだ一度ギルドに帰って休むか?」

「そうだね…なんかどっと疲れたよ。ギルドで少し休んで…その夜はシリウスさん達とご飯だね!」

私が喜ぶと

「レオンハルト様とだろ」

ベイカーさんがため息をついた。

「飯が食えるならなんでもいいや」

アランさんは早速夜のご飯が何になるのか気になっているようだ。


ミヅキ達が帰ったあとでアトラス達獣人とレオンハルト王子達のウエスト国の条約は滞りなく行われた。

「本当に大丈夫なのか?反対するものは?」

レオンハルトが再度確認すると

「王宮内は満場一致です。皆あの戦いを見た後ですからね、大臣側に付いてた者達も軽く洗脳されていたようで徐々に正気を取り戻しています」

「それはよかったです。戻らない方がいるなら私も力をお貸ししますよ」

アルフノーヴァが微笑むと

「ありがとう、その時はよろしく頼む」

アトラス様が頭を軽く下げた。

「では…」

アルフノーヴァが誓約聖書を取り出す、それにレオンハルトとアトラスが手を置き条約は交わされた。

「これを使えばウエスト国内でも獣人達が住みやすくなりますね」

「よかったな」

レオンハルトはシリウスとユリウスの方を振り返る。

二人は驚いた顔をしたがミヅキにする様に嬉しそうにレオンハルト王子を見つめかえした。



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