狂犬を手なずけたら溺愛されました

三園 七詩

文字の大きさ
4 / 35

4.父クロード視点

しおりを挟む
私はこの国の侯爵家に生まれ、美しく優しい妻と初めての子供を授かった。

子はラーミアといい、可愛らしい女の子だった。見た目は妻に似て愛らしく髪の毛は私と同じ色だった。

初めてその子を見た時は壊してしまうのではないかと怖くて抱くことが出来なかった。
それを今では激しく後悔している。

あの時抱いていればこんなにも嫌われる事はなかったのかもしれない。

赤子が生まれ数日後、王宮での仕事が立て込み我が家に帰れない日が続いた。

そんな時でも毎日思うのは妻と可愛い我が子のことだった。

帰ったら今度こそ抱きしめようと思い仕事を終わらせて帰宅すると待っていたのは絶望だった。

ラーミアは私を見るなり大きな瞳に涙を溢れさせ手が付けられないほどに泣き出した。

聞けばそんな事はこれまで一度もなかったらしい。ラーミアは普通の子よりも大人しく滅多に泣かないと聞いていたのに私が帰ってきた事で変わってしまったのだ。

最初は違うかもしれないと思ったが私が近づくとそうなるので原因は私で間違えないようだ。

きっと生まれてすぐに私が抱きしめるのを拒んだせいだ。

「大丈夫、すぐに慣れますわ。だってあなたはこんなにもあの子の事を思っていますもの」

リリアは傷つく私を優しく抱きしめてくれる。

その日から私は少しずつラーミアに慣れて貰う努力をした。
顔を見せないようにするのは簡単だが、慣れて貰うには毎日顔を少しでも見せた方がいいと言われたので部屋には入らずに顔が認識できる距離を保って優しく声をかけることにした。

最初は顔も向けてくれなかったが朝昼晩とやっていくうちに少しだけ顔を見せてくれるようになった。

しかしまだ泣き出すのは変わらない。

すると突然メイドがどこか悪いのではないかと心配しだした。こんなにも父を怖がるのには理由があるのではないかと・・・

そして医者に見せたことで事態が変わった。

ラーミアは医者が来ると私と同じよう、いやそれ以上にパニックになったのだ。

しまいには泣き過ぎて熱をだしてしまい、いつもの部屋で安静にしていた。

今はそっとしておくのがいいとメイドをつけて休ませている。

「あっ、旦那様」

メイドが水を変えようと席を立った時に私が丁度様子を見に来た。

「ラーミアは?」

「ラーミア様は・・・熱がまだあり、泣いた事で目が腫れてしまって今は何も見えない状況かと、鼻水のせいで呼吸も苦しそうです。水を替えてきますのでラーミア様のことを見ていただけますでしょうか?」

「私がいたらさらに悪くなるだろう」

自分で言ってて悲しくなるが本当のことだった。

「今は目も見えていないので静かに近づけばわからないと思いますが・・・何かあったらすぐにお呼びください」

メイドは頭を下げて急いで水を替えに向かった。

私はいつもの扉の前で様子をみていた。
するとラーミアが苦しそうに手を上げて何か掴もうとしている。

思わずその手を掴んであげたくてそばに一歩近づいた。

メイドの言う通り目が腫れて開いておらずラーミアは私が近くにいることに気がついていないようだった。

私はそっとラーミアのそばの椅子に腰掛けてラーミアを見つめた。

ラーミアは空を何度も掴みながら悲しそうに泣き出した。

「くっ!」

私は思わずその手に指を絡ませた。するとラーミアは私の指をギュッと握りしめたのだ。

そして掴んだ事で安心したのか呼吸が穏やかになった・・・と思ったら気を失ってしまった。

「だ、誰か!」

私は扉に向かって声をかける。

すると先程のメイドがすぐそばに控えていたようで異変に気が付き別部屋で待機していた医者を呼びにいった。
しおりを挟む
感想 35

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました

もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

【完結】神から貰ったスキルが強すぎなので、異世界で楽しく生活します!

桜もふ
恋愛
神の『ある行動』のせいで死んだらしい。私の人生を奪った神様に便利なスキルを貰い、転生した異世界で使えるチートの魔法が強すぎて楽しくて便利なの。でもね、ここは異世界。地球のように安全で自由な世界ではない、魔物やモンスターが襲って来る危険な世界……。 「生きたければ魔物やモンスターを倒せ!!」倒さなければ自分が死ぬ世界だからだ。 異世界で過ごす中で仲間ができ、時には可愛がられながら魔物を倒し、食料確保をし、この世界での生活を楽しく生き抜いて行こうと思います。 初めはファンタジー要素が多いが、中盤あたりから恋愛に入ります!!

兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした

鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、 幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。 アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。 すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。 ☆他投稿サイトにも掲載しています。 ☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。

処理中です...