貧乏領主の娘は王都でみんなを幸せにします

三園 七詩

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281.ジュリア

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「い、い…やだ…」

ジョロロ…

ジュリアはカタカタと震えて尿を垂らした…

「凄い!すぐ漏らすのも親と同じだ!」

ジロジロとジュリアが垂らした尿を興味深く見つめていると

「や、やめて…みな…いで…」

ジュリアが泣きながら慌てて隠そうとする。

スカートで必死に拭いていると

パシンッ!

乾いた音が地下牢の廊下に響いた。

「いった…」

スミスは叩かれた頬を押さえると、ローズを見つめる。

「どういう事かな?」

スミスが笑ってなんで叩いたのかローズに問いかける…

「いくら罪人だからといって今のはどうかと思います!しかも今は尋問とかじゃないですよね?それならただの囚人いびりですよ!」

ローズがムッと顔を顰めてスミスを睨みつけた。

「へー!君はこの子を庇うんだ!?あんな目にあったのに?」

「それとこれとは違います!今の行為は女として許せない!」

「ローズ…」

ジュリアは涙でぐちゃぐちゃの顔で庇うように前に立つローズを見上げた。

「彼女の罰はちゃんと決まってからにしてください!」

「はーい…でも今の事…僕は本気だから」

スミスはローズの後ろで見えないジュリアに声をかけた。

ジュリアはビクッと肩を震わせると

「もう行きますよ!ほら!スミスさん歩いて!」

ローズはスミスを歩かせようと背中を押すと

「えーもうかい?」

スミスは不貞腐れながらも歩き出す。

ローズはほっとすると持っていたハンカチを取り出して黙ってジュリアに渡した。

「なんで…庇ったのよ…」

精一杯強がってジュリアはローズを見た。

「あれは…さすがに許せないよ!別にジュリアさんだからとかじゃないからね」

まだ怒っているローズにジュリアは信じられないものを見るように見つめる。

「何となく…王子達があなたになぜ惹かれるのかわかった気がするわ…」

「えっ?なんですか?」

ローズが聞き返すと…

「なんでもないわ…でも助けられたのは癪だわ…ねぇローズ、あなたなんで王子達が自分に興味ないって思ってるの?」

「え?何急に?」

ローズが戸惑うと

「これがあなたと話す最後よ…ちゃんと答えて」

なんで…だったっけ…

ローズはロイ王子やカイル様との会話を思い出す。

「それは…王子達が女の人に興味無いって…それに私には釣り合わない」

「釣り合うって何よ?なら私も駄目って事よね?誰なら釣り合うの?」

「それは…」

「それにあの人達がそういう事で人を選ぶの?なら私を選んでくれたはずよ…」

「違う…」

「あんた…少し自分の胸に手を当てて考えなさいよ…ロイ王子がカイル様が誰を見ているのか?彼らの言葉のどれが真実なのか…」

「ジュリア…さん?」

「ふん、コレで借りは返したわ!あとは自分で考えなさい!まぁわからなくて後悔してもいいけどね!私はそれで一向に構わないわ」

「後悔…」

「あんた領地に帰るのよね?それってもうあの二人とは会わないって事だからね。ああーもういつまでいるのよ!さっさと帰りなさいよ!」

ジュリアはシッシッとローズを追い返すと

「わかった…ちゃんと考えて見る…私、ここに来るのすごく迷ったんだけど来てよかった。ジュリアさんとも、もっと本音さらけ出して話してみればよかった…」

ローズが眉を下げると

「ふん…」

ジュリアは顔を背ける…

きっと前にそんな事を言われても素直には受け取れなかっただろう…全てを無くした今だから受け取れる言葉がある。

ジュリアはローズの階段を上がる音をじっと聞いていた。


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