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329.到着

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クリス達はすぐに用意を整えて町を出た、そして今度こそタウンゼントを目指した。

クリスを先頭に後ろにロイ王子とキャシー様そして最後尾にドリー一家の馬車がついてくる。

「何かあったらすぐに声をかけてください」

クリスが最後尾まで聞こえるように声をかける。

「分かりました!」

「お…ロイ様もよろしくお願いしますよ」

「はい、はい」

ロイは頷くと…

「キャシーは大丈夫?」

キャシーを心配して顔を覗き込んだ。

「大丈夫です、馬にも慣れてきましたから」

キャシー様が頷くのを確認してからクリスは馬を走らせた。

まぁあそこは王子がどうにかするだろう…

クリスが駆け出すとロイとドリー達の馬の蹄の音が着いてくるのが聞こえてきた。



「それにしても何処の貴族の方かしら…あんなに見目が良くて若い方なら噂になりそうなのに…」

リナリーは前を走るどこぞの貴族だと言うロイ様の背中を見つめた。

「奥様も若くて綺麗な方だったな!お姫様と言われても納得だ」

「お忍びだと言ってたし…もしかしたら言えない関係なのかもしれないわね…」

「まさか!」

リナリーの言葉にドリーは笑い飛ばすがリナリーの顔は真剣そのものだった。

「変な検索はやめましょう…ロイ様にはキャシー様がいる…それだけは本当のようだもの」

イブが笑うと

「あなたはどうなの?クリス様とは少しは話せたの?」

リナリーがイブに聞くと

「それが…あんまり話せなくて…」

残念そうに顔を曇らせた。

「今は護衛があるから仕事に集中してるのね!そんな真面目なところも好印象だわ…」

「タウンゼントに着いてからが勝負よね!」

コク!

イブは言われるまでもないと力強く頷いた。



やっと着いた…

見覚えのある懐かしい風景にクリスの顔に笑みがこぼれる。

いつもならこの半分程の時間で着くはずなのに…と嫌な事も思い出しだがまぁそれはいい。

体の疲れよりも精神的疲れの方が大きい気がする。

すると前から人が歩いてくる音が聞こえてきてクリスは警戒していると…

「あれ?クリス様?」

草をかき分け顔を出したのはちょうど町の警備に出てた町民だった!クリスは知った顔に笑って手を上げると駆け寄った!

「ハンズさん!久しぶりです!」

「おお!やっぱりクリス様だ!なんか男らしくなったなぁ~」

ハンズと呼ばれたおじさんが笑顔で近づくと…後ろの馬に乗る人と馬車に気がついた。

「あれ?連れがいるのかい?」

そっと様子を伺うと…

「それなんだけど…ハンズさん急いで町に言伝頼めるかい?実はあの人達……」

クリスはサッと今回の王子の視察の件を伝えると…

「みんなには騒がないように言っといて貰えるかな?」

「わかりました!はぁーあれが王子様か…確かにクリス様のようにいい男だな」

ニヤッと笑ってクリスの顔を見てくる。

「何言ってるんですか、僕なんて王子には足元にも及びませんよ」

冗談だと思い苦笑いするクリスにハンズは…

「クリスの事だから本気で言ってるんだよな…」

クリスらしいと笑い呟いた。

「そりゃそうですよ!向こうは王子ですよ!」

ハンズの囁くような声を拾うクリスにハンズは懐かしそうにクリスの癖を思い出した。

「ああ、耳がいいのも健在だな!ところでそのさらに後ろの馬車は?」

「あー…あれは旅商人の家族ですよ、途中で盗賊に襲われてて、助けた縁でここまで送って来たんですよ…あっ!そうだついでに町に連れててって貰えます?」

「ああ、了解!」

ハンズが快く了承するとクリスはその事を伝えに王子達の元に向かった。
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