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336.巡回

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「それ…僕も行っていいですか?」

と言うクリスの余計な一言のおかげでローズとの楽しい午後の巡回が無くなった…

そしてため息をつくと今度はロイの方を向いて頭を下げた。

同じようにキャシーと居たかったであろうロイ王子が自分と同じような顔で傾げている。

「ロイ…様、お久しぶりです」

「やめろ!お前からロイ様なんて言われて敬語を使われると鳥肌が立つ」

「ああ、じゃあロイ…元気だったか?」

「ああ、ここ最近は生きてるって感じてたよ。特にさっきまではね」

ロイは苦笑して楽しそうにローズと話すキャシーを愛おしげに見つめた。

そんな幸せそうなロイを見てカイルは安心する。

「そういや警備兵がいないけど何処だ?まさか驚かせる為だけにどっかに隠してるのか?」

カイルがキョロキョロと窓を覗いて屋敷の外周りを探るが他に人がいるようには見えなかった。

「いや、今回は俺達とクリスだけの三人で来たんだ」

「三人!?キャシー様とか本当に大丈夫だったか?」

驚いてキャシーを心配する…ローズと違い一人で旅など出来そうには見えなかった。

「え、ええ。私も驚いたけど国王からはちゃんと書類を貰ってるみたいなの」

「それ本当ですか?」

カイルが疑うようにロイを睨むと

「僕も一応書類は見ましたが…」

クリスが自信なさげに答えた。

「ロイ、それ見せてみろ」

「えっと…どこだったかな?」

ロイは探す振りをすると…

「あれ?落としたかな?」

書類がないとあっさりと諦めて肩をすぼめた。

「「えっ?」」

「盗賊に襲われた時に紛失したのかな?」

「「盗賊!?え?本当に?」」

カイルとローズが物騒な話に声をあげた。

「ロイ様その時居ませんね?」

クリスがじろりと疑うようにロイを見つめる。

「あれ?そうだっけ?」

ロイはとぼけながら目を逸らした…

「まさか…黙ってここに?」

クリスが顔を青くしながら聞くと

「あー…一応書き置きは残してきた。まぁ大丈夫だろ」

ロイが目を逸らした。

「それって…誰に残してきたんですか?」

何となく誰かはわかったが一応聞いてみる。

「そりゃもちろんレスター達にね」

「はぁ…」

クリスは頭を抱える。

きっと今頃誤魔化すために色々と手を回してくれているであろう、レスター様とスピア様を思い…王都の方角に向かって手を合わせた。


     ◆

王都では…

「あんの王子!!こんな紙切れ一枚で令嬢のキャシー様と王都を抜け出しやがって!!」

スピアがロイの残した書き置きを握りつぶした。

「紙にはなんて?」

レスター様が苦笑しながらスピアに聞くと

【キャシー様とタウンゼントに行ってくる。上手く誤魔化しといて!クリスの事は任せてくれ!】

「あはは…」

さすがのレスター様も苦笑いする。

「王子とキャシー様に何かあればクリスのせいにもなってしまいます…」

「それは不味いね…クリスくんは頑張ってくれているし真面目だから」

「はい!王子が怒られようとどうでもいいですがキャシー様とクリスの事は内密にしておかないと…」

「そうだな…ちょうど娘に会いに行こうと思っていたからその視察に二人を連れて行く…って事にしておくのはどうかな?」

「娘…ジュリア…さんのですか?」

「ああ…」

眉を顰めたスピアにレスターは笑うと

「あの子も反省しているんだよ」

「それならいいですが…」

「じゃ早速行く用意するから二人の同行の書類を作成しといてくれ」

「はい!王子は…どうでもいいですね」

「そうだね」

怒るスピアを残してレスターはそそくさと用意に向かっていった。
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