[完]異世界銭湯

三園 七詩

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リザちゃんに首を振られて拒否されたエミリアさんは眉を下げて一瞬悲しい顔をする。

悲しそうに微笑んで「しょうがないわね…」と囁くとリザちゃんが慌てて顔をあげた。

「ち、違うよ!教えたくない訳じゃ無くて交換日記で順番に教えたいって思ったの、それに私もお母様の好きなものを知りたいわ」

「リザ…」

エミリアさんはあまりの嬉しさに目にうっすらと涙を溜めながら笑うとリザちゃんをぎゅっと抱きしめた。

そしてゆっくりと離れると顔を見て微笑む。

「ありがとう、そうね、そうしましょ」

「じゃあ早速今日から始めてもいいですか?」

「ええ、リザの日記今から楽しみだわ」

笑い合う二人の間にもう壁は感じなかった。


「あらあら良かったわね。誤解は解けたみたい」

お母さんはそんな二人をみてニコニコと笑いながら漬物をボリボリとかじった。

「エミリア様嬉しそうです、それにリザ様も…良かったー」

侍女の方もハンカチを取り出してうっすらと目に涙を溜めていた。

「マキさん、本当にありがとうございます」

エミリアさんが私にお礼を言うと顔が子供らしいく戻ったリザちゃんが私達に向き合った。

「ここは本当に素晴らしいところでした。私からお父様にちゃんとお話しておくわ!」

「本当に?ありがとうー」

これでここで銭湯を続けて行くもの大丈夫そうだ。

「でもちゃんと決めるのはお父様だから…」

リザちゃんがそう言いと、後ろから声がかかった。

「それなら大丈夫、ここは素晴らしかっただろ?」

ほんのりと頬を赤らめたジムさん達がお父さん達と戻ってきた。

「お父様!」

「よくわからないけど楽しそうだね」

ジムさんがリザちゃんを見た後にエミリアさんに目を向ける。
エミリアさんは泣きそうな顔で何度も頷いていた。

「君達には家族みんなで世話になってしまったな、私達で出来ることはなんでも協力しよう。ここで銭湯を続けてくれると私達も町の人達も喜ぶと思うんだがどうだろう?」

「よろしくお願いします!」

私は食い気味に返事をした。

その後お父さん達はうちでお酒を飲みながら今後の話をジムさんやライリーさんを交えてしていた。

リザちゃんもまだ居たいと言っていたが、疲れただろうからと日記の事もあるのでエミリアさんと自宅の屋敷に帰ることになった。

「また来ていいかしら?」

リザちゃんがしおらしくそんな事を言うのでいつでもどうぞと頭を撫でてあげる。

リザちゃんは一瞬驚いたが怒ることなく嬉しそうなまた来るとエミリアさんと馬車に乗って帰っていった。

「はぁ、色々あって疲れた」

リザちゃん達を見送るとうーんと伸びをする。

「もう一回お風呂入って来ようかなー」

「いいんじゃない、お父さん達はまだまだ話が終わらなそうだからついでに掃除してきてよ」

「えー!疲れてるのにー」

「あら、なら私の代わりにご飯作る?」

そう言われたら掃除の方がマシだ。

私はわかりましたとお風呂に向かった。

掃除の前にしっかりとお湯につかって疲れをとりたい!

暖簾を下げて入り口に鍵をかける。

私は一人だけのお風呂を楽しむ事にした。
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