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第17章|正しい結果
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警告音が、止まらなかった。
端末の表示が赤いまま揺れる。
《接近:是正執行官 LAZAR》
《Δ:是正執行(CORRECTION STRIKE)》
《到達予測:00:02:31》
セイルが舌打ちした。
「早い……」
ユウが肩を回す。
「速いんじゃねえ」
「“到達が正しい結果になってる”だけだ」
アルトが低く笑った。
「そうだな」
「是正執行は」
「到達する、当たる、壊れる、止まる――」
「その結果を“正しい”として成立させる」
シオンは喉が鳴った。
正しい結果。
それはこの世界で、最も強い。
GENESISの理念そのものだ。
合理。
最適。
誤差の排除。
その正しさを、剣にした存在。
それがラザル。
遠くで、音がした。
重い金属が地面を踏む音。
鎧じゃない。
機械でもない。
人間の足音なのに、戦車みたいに重い。
現れた。
黒い装甲の上に、赤いライン。
GENESISの紋章が胸にある。
顔は覆われていない。
若くはない。
老いてもいない。
ただ、“執行”の顔だった。
ラザルは一歩進み、静かに言った。
「回収対象を確認」
「例外切除官は下がれ」
背後の空間が揺れた。
そこにヴェルナーがいる気配がする。
だが姿は見えない。
存在しない追跡。
存在しない監視。
それでも命令系統だけは成立している。
最悪だった。
ラザルの視線が、シオンを射抜く。
「観測監査官」
次にアルトを見る。
「評価管制官」
最後にユウを見る。
「回収者」
一人ずつ、分類した。
そして断言する。
「――異常現象Δ適合者」
「処理を開始する」
ユウが吐き捨てる。
「処理ってのは、殴ることかよ」
ラザルは首を振らない。
怒りもしない。
ただ言う。
「正しい結果を成立させる」
その言葉が、もう攻撃だった。
ラザルが腕を上げる。
銃じゃない。
剣でもない。
装甲の腕そのものが“執行器”だ。
次の瞬間。
空気が裂けた。
ユウの頬の横を、何かが通った。
遅れて壁が砕ける。
衝撃だけが来る。
見えない攻撃。
いや、見えないんじゃない。
“当たる結果”が成立している。
当たるという結果が確定しているから、途中が省略される。
シオンは息を吸い、短く宣言した。
「……Δ:希望収束(セイヴ・ライン)」
その瞬間。
衝撃がずれた。
数センチだけずれる。
それだけでユウは死なない。
だが、壁が崩れたせいで通路が塞がる。
逃げ道が消えた。
救えた代わりに、選択肢が減る。
シオンの胸に、冷たい罪が積もる。
レムが叫ぶ。
「こわい……!」
セイルがレムを庇う。
「動くな!」
ラザルの視線が、レムに移る。
一瞬で判断する。
「……不確定個体」
「危険度高」
その言葉が、シオンの怒りを引き出した。
危険度じゃない。
子供だ。
でもGENESISは人を数値でしか見ない。
アルトの声が低くなる。
「……来るぞ」
ラザルが一歩踏み込んだ。
早い。
だが速いのは足じゃない。
距離が消えている。
“詰める結果”が成立したから。
ユウが歯を食いしばり、前に出る。
「来いよ」
ラザルが腕を振る。
ユウが避ける。
避けた。
はずなのに――
ユウの肩が裂けた。
血が飛ぶ。
シオンの目が開く。
避けたのに当たる。
これが是正執行だ。
避けたという結果を、認めない。
当たるのが正しい。
だから当たる。
ユウが膝をつく。
「……くそ……!」
ユウのΔは、勝ち筋を拾う力じゃない。
死なない未来を拾う力。
でも、ラザルは“死ぬ結果”を正しいとして押し込む。
この相性は最悪だ。
アルトが息を吸った。
視界が揺れる。
判断が鈍る。
それでも、ここで崩すしかない。
アルトは短く宣言した。
「……Δ:評価崩壊(ゼロ・ジャッジ)」
空間が軋む。
ラザルの端末が一瞬だけノイズを吐く。
装甲のラインが揺れた。
“正しい”が揺らぐ。
ラザルの動きが止まった。
ほんの一秒。
だがその一秒は致命的だ。
ユウが立ち上がり、セイルが遺物片を構える。
シオンが叫びたくなるのを抑え、短く指示する。
「今!」
セイルが短く宣言した。
「……Δ:軌道同期(オービット・シンク)」
遺物片が光る。
撃つ。
外さない。
当たる。
――はずだった。
だがラザルの体が、僅かに傾く。
弾道が逸れる。
逸れた弾が、後方の壁を貫き、爆ぜた。
爆風。
破片。
レムが吹き飛びそうになる。
シオンは反射で宣言する。
「……Δ:希望収束(セイヴ・ライン)」
レムの体が倒れず、壁の崩れ方が変わる。
助かった。
しかしその瞬間、シオンは悟った。
ラザルは“当たる結果”を強制する存在。
しかし同時に。
外れる結果をも強制できる。
つまり――
敵の攻撃だけじゃない。
味方の攻撃すら、“正しい形”に変えられる。
ラザルは戦闘の支配者だ。
ラザルがゆっくり歩いてくる。
焦らない。
正しい結果が成立するなら、急ぐ必要がない。
ラザルは言った。
「評価崩壊を確認」
「記録」
アルトが一歩下がる。
息が乱れる。
判断がさらに崩れる。
自分で自分が分からなくなる。
――これが代償。
だがアルトは笑った。
「分かったか」
「正しさは壊れる」
ラザルは淡々と返した。
「壊れた正しさは」
「是正する」
次の瞬間。
ラザルの拳が、アルトへ向かう。
当たる結果が成立する。
アルトが避けられない。
シオンが息を吸い、短く宣言する。
「……Δ:希望収束(セイヴ・ライン)」
弾道が逸れるように、拳の軌道がずれる。
だが――
ずれた拳が、床を砕いた。
床が割れ、穴が開く。
ORBITの裂け目が、さらに裂けた。
深い暗黒が覗く。
セイルが顔を歪める。
「……やめろ」
「穴が広がる」
ユウが叫ぶ。
「広がったらどうなる!」
セイルの声が震える。
「落ちたら――」
「戻れない!」
シオンの背中が冷たくなる。
SAVE LINEで守るたびに、穴が裂ける。
救うたびに、世界が割れる。
これは救済じゃない。
“代償の位置”がここだ。
ORBITに歪みが集中している。
そしてラザルは、それを利用する。
わざと歪みを増やしている。
ユウが歯を食いしばる。
「……こいつ」
「俺らを殺すんじゃねえ」
「ここごと消すつもりだ」
アルトが頷く。
「そうだ」
「死体すら残さない」
「記録も残らない」
ヴェルナーと同じ発想だ。
違うのは、ラザルが力で押すこと。
ヴェルナーが削除で消すこと。
二人が揃うと最悪になる。
“正しい結果で消して、存在しない扱いにする”。
ユウの背中がざわついた。
拾える感覚。
来る。
来てしまう。
ユウは唾を飲み、短く宣言する。
「……Δ:拾遺干渉(リクレイム)」
床の割れ目の縁。
そこに落ちているはずのないものがあった。
一本のワイヤー。
古い吊り具。
引っ掛ける金具。
ユウはそれを拾う。
拾った瞬間。
倒れていた鉄骨が、起き上がった。
傾いていた板が、橋になる。
裂け目に渡る“一本道”が生まれる。
シオンの目が開く。
逃げ道だ。
救える未来が一本、戻った。
ユウが叫ぶ。
「走れ!」
セイルがレムを抱えて走る。
アルトがフラつきながらも走る。
シオンが最後に走る。
だがその瞬間、ラザルが笑った。
初めての笑み。
それは人間の笑みじゃない。
“正しい勝利”の笑みだった。
ラザルが拳を、橋へ叩きつける。
「是正執行」
橋が――折れる。
折れるのが正しい結果として、確定する。
シオンの瞳が開く。
落ちる。
落ちたら終わる。
レムが消える。
ユウが死ぬ。
アルトが壊れる。
セイルが折れる。
シオンは短く宣言する。
「……Δ:希望収束(セイヴ・ライン)」
橋が折れる角度が変わる。
落ちる順番が変わる。
生き残る隙間が生まれる。
だが、全員は救えない。
救える未来は一本。
その一本に乗れない者が出る。
シオンの心臓が締まる。
誰だ。
誰が落ちる。
その瞬間。
アルトが、足を止めた。
そして、笑った。
「……俺が残す」
シオンが叫ぶ。
「アルト!」
アルトは振り返らない。
ただ短く宣言した。
「……Δ:評価崩壊(ゼロ・ジャッジ)」
ラザルの動きが止まる。
拳が止まる。
正しい結果が揺れる。
世界が一瞬だけ、“正しくなくなる”。
その隙に。
ユウがセイルとレムを押し出す。
シオンが飛び込む。
全員が向こう側へ渡る。
橋が完全に崩れる。
落下。
そしてアルトの姿が、裂け目の向こうへ消えた。
シオンの喉が裂けるように痛い。
救えなかった。
救えない未来が確定した。
SAVE LINEが選んだ一本の未来に、アルトはいなかった。
シオンは膝をつく。
涙が出そうになる。
でも出ない。
感情すら、削られそうだった。
ユウが歯を食いしばる。
「……クソが」
セイルが震える手で、レムを抱き直す。
レムが小さく呟いた。
「……アルトさん」
「どこ……?」
シオンは答えられない。
答えたら、世界が壊れる気がした。
そして、背後から聞こえた。
ラザルの声。
遠いのに、確かに届く。
「――処理対象の一体」
「回収優先」
「生存を確認」
シオンの目が開く。
生存?
アルトは生きている?
でもどこに?
その瞬間。
ヴェルナーの声が重なる。
「例外切除を準備」
「回収後、削除する」
シオンの胸が凍る。
生きている。
だからこそ狩られる。
アルトは“餌”にされた。
そしてそれは、BORDER REMAINSを分断するための手だ。
ユウが低く言った。
「……アルトを取り返す」
セイルが頷く。
「でも今は無理だ」
「穴が裂けすぎた」
シオンは拳を握り、短く呟く。
「……残す」
残すために。
今は退く。
今は耐える。
そして次は。
救えない未来を、救える形に変えるために戦う。
シオンの胸に、罪が積もる。
積もっていく。
その重さが、物語を進める。
端末の表示が赤いまま揺れる。
《接近:是正執行官 LAZAR》
《Δ:是正執行(CORRECTION STRIKE)》
《到達予測:00:02:31》
セイルが舌打ちした。
「早い……」
ユウが肩を回す。
「速いんじゃねえ」
「“到達が正しい結果になってる”だけだ」
アルトが低く笑った。
「そうだな」
「是正執行は」
「到達する、当たる、壊れる、止まる――」
「その結果を“正しい”として成立させる」
シオンは喉が鳴った。
正しい結果。
それはこの世界で、最も強い。
GENESISの理念そのものだ。
合理。
最適。
誤差の排除。
その正しさを、剣にした存在。
それがラザル。
遠くで、音がした。
重い金属が地面を踏む音。
鎧じゃない。
機械でもない。
人間の足音なのに、戦車みたいに重い。
現れた。
黒い装甲の上に、赤いライン。
GENESISの紋章が胸にある。
顔は覆われていない。
若くはない。
老いてもいない。
ただ、“執行”の顔だった。
ラザルは一歩進み、静かに言った。
「回収対象を確認」
「例外切除官は下がれ」
背後の空間が揺れた。
そこにヴェルナーがいる気配がする。
だが姿は見えない。
存在しない追跡。
存在しない監視。
それでも命令系統だけは成立している。
最悪だった。
ラザルの視線が、シオンを射抜く。
「観測監査官」
次にアルトを見る。
「評価管制官」
最後にユウを見る。
「回収者」
一人ずつ、分類した。
そして断言する。
「――異常現象Δ適合者」
「処理を開始する」
ユウが吐き捨てる。
「処理ってのは、殴ることかよ」
ラザルは首を振らない。
怒りもしない。
ただ言う。
「正しい結果を成立させる」
その言葉が、もう攻撃だった。
ラザルが腕を上げる。
銃じゃない。
剣でもない。
装甲の腕そのものが“執行器”だ。
次の瞬間。
空気が裂けた。
ユウの頬の横を、何かが通った。
遅れて壁が砕ける。
衝撃だけが来る。
見えない攻撃。
いや、見えないんじゃない。
“当たる結果”が成立している。
当たるという結果が確定しているから、途中が省略される。
シオンは息を吸い、短く宣言した。
「……Δ:希望収束(セイヴ・ライン)」
その瞬間。
衝撃がずれた。
数センチだけずれる。
それだけでユウは死なない。
だが、壁が崩れたせいで通路が塞がる。
逃げ道が消えた。
救えた代わりに、選択肢が減る。
シオンの胸に、冷たい罪が積もる。
レムが叫ぶ。
「こわい……!」
セイルがレムを庇う。
「動くな!」
ラザルの視線が、レムに移る。
一瞬で判断する。
「……不確定個体」
「危険度高」
その言葉が、シオンの怒りを引き出した。
危険度じゃない。
子供だ。
でもGENESISは人を数値でしか見ない。
アルトの声が低くなる。
「……来るぞ」
ラザルが一歩踏み込んだ。
早い。
だが速いのは足じゃない。
距離が消えている。
“詰める結果”が成立したから。
ユウが歯を食いしばり、前に出る。
「来いよ」
ラザルが腕を振る。
ユウが避ける。
避けた。
はずなのに――
ユウの肩が裂けた。
血が飛ぶ。
シオンの目が開く。
避けたのに当たる。
これが是正執行だ。
避けたという結果を、認めない。
当たるのが正しい。
だから当たる。
ユウが膝をつく。
「……くそ……!」
ユウのΔは、勝ち筋を拾う力じゃない。
死なない未来を拾う力。
でも、ラザルは“死ぬ結果”を正しいとして押し込む。
この相性は最悪だ。
アルトが息を吸った。
視界が揺れる。
判断が鈍る。
それでも、ここで崩すしかない。
アルトは短く宣言した。
「……Δ:評価崩壊(ゼロ・ジャッジ)」
空間が軋む。
ラザルの端末が一瞬だけノイズを吐く。
装甲のラインが揺れた。
“正しい”が揺らぐ。
ラザルの動きが止まった。
ほんの一秒。
だがその一秒は致命的だ。
ユウが立ち上がり、セイルが遺物片を構える。
シオンが叫びたくなるのを抑え、短く指示する。
「今!」
セイルが短く宣言した。
「……Δ:軌道同期(オービット・シンク)」
遺物片が光る。
撃つ。
外さない。
当たる。
――はずだった。
だがラザルの体が、僅かに傾く。
弾道が逸れる。
逸れた弾が、後方の壁を貫き、爆ぜた。
爆風。
破片。
レムが吹き飛びそうになる。
シオンは反射で宣言する。
「……Δ:希望収束(セイヴ・ライン)」
レムの体が倒れず、壁の崩れ方が変わる。
助かった。
しかしその瞬間、シオンは悟った。
ラザルは“当たる結果”を強制する存在。
しかし同時に。
外れる結果をも強制できる。
つまり――
敵の攻撃だけじゃない。
味方の攻撃すら、“正しい形”に変えられる。
ラザルは戦闘の支配者だ。
ラザルがゆっくり歩いてくる。
焦らない。
正しい結果が成立するなら、急ぐ必要がない。
ラザルは言った。
「評価崩壊を確認」
「記録」
アルトが一歩下がる。
息が乱れる。
判断がさらに崩れる。
自分で自分が分からなくなる。
――これが代償。
だがアルトは笑った。
「分かったか」
「正しさは壊れる」
ラザルは淡々と返した。
「壊れた正しさは」
「是正する」
次の瞬間。
ラザルの拳が、アルトへ向かう。
当たる結果が成立する。
アルトが避けられない。
シオンが息を吸い、短く宣言する。
「……Δ:希望収束(セイヴ・ライン)」
弾道が逸れるように、拳の軌道がずれる。
だが――
ずれた拳が、床を砕いた。
床が割れ、穴が開く。
ORBITの裂け目が、さらに裂けた。
深い暗黒が覗く。
セイルが顔を歪める。
「……やめろ」
「穴が広がる」
ユウが叫ぶ。
「広がったらどうなる!」
セイルの声が震える。
「落ちたら――」
「戻れない!」
シオンの背中が冷たくなる。
SAVE LINEで守るたびに、穴が裂ける。
救うたびに、世界が割れる。
これは救済じゃない。
“代償の位置”がここだ。
ORBITに歪みが集中している。
そしてラザルは、それを利用する。
わざと歪みを増やしている。
ユウが歯を食いしばる。
「……こいつ」
「俺らを殺すんじゃねえ」
「ここごと消すつもりだ」
アルトが頷く。
「そうだ」
「死体すら残さない」
「記録も残らない」
ヴェルナーと同じ発想だ。
違うのは、ラザルが力で押すこと。
ヴェルナーが削除で消すこと。
二人が揃うと最悪になる。
“正しい結果で消して、存在しない扱いにする”。
ユウの背中がざわついた。
拾える感覚。
来る。
来てしまう。
ユウは唾を飲み、短く宣言する。
「……Δ:拾遺干渉(リクレイム)」
床の割れ目の縁。
そこに落ちているはずのないものがあった。
一本のワイヤー。
古い吊り具。
引っ掛ける金具。
ユウはそれを拾う。
拾った瞬間。
倒れていた鉄骨が、起き上がった。
傾いていた板が、橋になる。
裂け目に渡る“一本道”が生まれる。
シオンの目が開く。
逃げ道だ。
救える未来が一本、戻った。
ユウが叫ぶ。
「走れ!」
セイルがレムを抱えて走る。
アルトがフラつきながらも走る。
シオンが最後に走る。
だがその瞬間、ラザルが笑った。
初めての笑み。
それは人間の笑みじゃない。
“正しい勝利”の笑みだった。
ラザルが拳を、橋へ叩きつける。
「是正執行」
橋が――折れる。
折れるのが正しい結果として、確定する。
シオンの瞳が開く。
落ちる。
落ちたら終わる。
レムが消える。
ユウが死ぬ。
アルトが壊れる。
セイルが折れる。
シオンは短く宣言する。
「……Δ:希望収束(セイヴ・ライン)」
橋が折れる角度が変わる。
落ちる順番が変わる。
生き残る隙間が生まれる。
だが、全員は救えない。
救える未来は一本。
その一本に乗れない者が出る。
シオンの心臓が締まる。
誰だ。
誰が落ちる。
その瞬間。
アルトが、足を止めた。
そして、笑った。
「……俺が残す」
シオンが叫ぶ。
「アルト!」
アルトは振り返らない。
ただ短く宣言した。
「……Δ:評価崩壊(ゼロ・ジャッジ)」
ラザルの動きが止まる。
拳が止まる。
正しい結果が揺れる。
世界が一瞬だけ、“正しくなくなる”。
その隙に。
ユウがセイルとレムを押し出す。
シオンが飛び込む。
全員が向こう側へ渡る。
橋が完全に崩れる。
落下。
そしてアルトの姿が、裂け目の向こうへ消えた。
シオンの喉が裂けるように痛い。
救えなかった。
救えない未来が確定した。
SAVE LINEが選んだ一本の未来に、アルトはいなかった。
シオンは膝をつく。
涙が出そうになる。
でも出ない。
感情すら、削られそうだった。
ユウが歯を食いしばる。
「……クソが」
セイルが震える手で、レムを抱き直す。
レムが小さく呟いた。
「……アルトさん」
「どこ……?」
シオンは答えられない。
答えたら、世界が壊れる気がした。
そして、背後から聞こえた。
ラザルの声。
遠いのに、確かに届く。
「――処理対象の一体」
「回収優先」
「生存を確認」
シオンの目が開く。
生存?
アルトは生きている?
でもどこに?
その瞬間。
ヴェルナーの声が重なる。
「例外切除を準備」
「回収後、削除する」
シオンの胸が凍る。
生きている。
だからこそ狩られる。
アルトは“餌”にされた。
そしてそれは、BORDER REMAINSを分断するための手だ。
ユウが低く言った。
「……アルトを取り返す」
セイルが頷く。
「でも今は無理だ」
「穴が裂けすぎた」
シオンは拳を握り、短く呟く。
「……残す」
残すために。
今は退く。
今は耐える。
そして次は。
救えない未来を、救える形に変えるために戦う。
シオンの胸に、罪が積もる。
積もっていく。
その重さが、物語を進める。
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ファンタジー
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https://ci-en.net/creator/11836
敗戦後に放棄されていた日本の農地が、魔物の瘴気によって再び脅かされていた。
その魔物は土地を「魔族の地」へと変質させる危険な存在で、放置すれば農地だけでなく村や民までもが穢れ、飢餓が広がる可能性がある。
巫女は主への忠誠心と民を守る覚悟を胸に、命をかけて妖魔退治に赴く決意を示す。
だが、戦力は各地に分散しており、彼女一人に任せるのは危険と判断される。
それでも彼女は「自分は神に捧げた存在。消耗品として使ってほしい」と冷静に言い放ち、命令を待つ。
物語は、主が彼女をどう扱うかという重要な選択肢へと分岐していく――。
【信じて送り出すか】
【一緒にいくか】
※複数ルートありますが、ここの掲載媒体の仕様上、複数ルート、複数形式を一つの作品にまとめています見づらいと思いますがご了承ください
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