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2.槍鬼霊は振るわれない
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久方振りにアルベルがスパイルを訪れたのは、陽が高く昇った正午のことである。
扉を開き、店内に一歩足を踏み入れた途端、トン、という音が耳元で響いた。
「……!?」
そして音に遅れて、アルベルは己の目が捉えた光景に足を竦ませる。
「ル、ルルル、ルチアナさん……こ、これはいったいどういうつもりなんだい……?」
そう言うアルベルの耳元に程近い、扉のすぐ傍に、一本のナイフが突き立っていた。否、正確には何本ものナイフが木の的に突き刺さっている。
的とは言うが、どう見てもただの木片だ。
「暇なので練習していました」
カウンターの向こうで椅子に座るルチアナは、本を読みながら再びナイフを投げた。
ナイフは綺麗な軌跡を描き、的へと吸い込まれていく。トン、と耳元で音が鳴り、アルベルはたまらず出入り口から逃げ出し、本棚を迂回してカウンターへ向かった。
その後何度か、トン、という音が聞こえたが、アルベルはあえて無視し、ルチアナの正面ではなく二つ左の席に座った。
「お久しぶりです、アルベルさん」
「ああ、久しぶりだね」
「忙しかったんですか?」
「まぁね。……ん、ひょっとして私が来なくて寂しかったのかな?」
へらへらと笑うアルベルが問うと、ルチアナはそれをバッサリと切り捨てる。
「いえ、ハンナちゃんが居るのでアルベルさんが来なくても寂しくないですよ?」
「そ、そうか……」
「そんなハンナちゃんも今は外出中です」
「なんだかんだで上手くやっているみたいだね」
「人を子供か何かと勘違いしているんですか?」
「結構子供っぽい所があるとは思うけどね」
「アルベルさんの方がよっぽど子供っぽいですよ」
肩を竦めてそっぽ向くルチアナは、本を閉じると椅子から立ち上がる。
「コーヒーでいいですか?」
「もちろん」
すぐさまコーヒーを用意して戻って来たルチアナに、アルベルは今まで顔を出せなかった理由を話し始める。
「実はね、エクティリアで指名手配されている罪人が、このヘイブンに入国したという情報が入ってきているんだ」
穏やかでないその内容に、ルチアナはアルベルの前にカップを置きながら眉を潜めた。
「エクティリアからの罪人と言うだけでゾッとするというのに、それがヘイブンに来ているというのは非常に好ましくない」
「どの国の罪人であろうと、指名手配されている人が自分達の国へとやってくるのは怖いものです」
定位置に戻ったルチアナは、カップを持ち上げコーヒーを口に含む。淡々としている反応の薄いルチアナに、アルベルは悪戯を思い付いた子供のような顔をした。
「ここまでなら別に私達警邏の人間も、そこまで取り合わなかったさ。指名手配なんて意味あるものではないからね。だが、指名手配されている人物の素性が問題だったのだよ」
「素性?」
ルチアナは小首を傾げる。
「ああ。この罪人は公には殺人犯としか公表されていないが、カルネルの密偵が調べた情報によると、この罪人は第十三人間牧場の出身らしい」
カルネルの密偵の情報が、どうしてヘイブンに伝わっているかと言えば、ヘイブンの密偵がカルネルに潜伏しているからである。戦火の絶えないこのご時世、どの国も各国に密偵を放つのは自然なことである。とはいえ、それがこうして一般的な場にまで漏れているのは、ルチアナも如何なものかとは思った。
だからルチアナは情報の信憑性にまでは言及せず、語られる情報だけを受け止める。
「第十三人間牧場というのは?」
人間牧場という存在自体は知っているルチアナだが、その細部までは把握していない。それでも仮説ぐらいは立ててはいるが、確定していない以上それは邪推以外の何者でもない。
「身寄りのない子供を一人前の兵士にする為の施設ってことらしい。どこまでが本当かは知らないが、人間牧場と一口に言っても、役割はいろいろあるみたいだね」
「子供を、ですか……嫌な時代です」
中立であり比較的に平和なヘイブンに居ると忘れてしまいそうだが、この大陸のどこかでは、今日も人と人が殺し合っているのだ。だからどうということはないが、その事実だけは忘れてはいけないと、ルチアナは考えている。
「それと、第十三人間牧場は兵士育成以外にも、武器開発も行っていたらしい」
「そこで開発した武器を子供達に使わせるんですか?」
「たぶんね。で、話は戻って指名手配された人物についてなんだが」
「子供、ですか」
流石に察することができたが、その事実にルチアナは心底うんざりした。そしてアルベルはそれを否定することなく、肯定する。
「ああ。指名手配されているのは、ケンプファーという名の少年だ。エクティリアから来た情報は名前と容姿だけだが、密偵からの情報によるとまだ十六歳で、透き通るような銀色の髪を持っているらしい。そして彼は第十三人間牧場を潰したエクティリアの重罪人であり、殺人鬼だそうだ」
透き通るような銀色の髪とはどのようなものかとルチアナは思案したが、詮無いとすぐに判断し、次に気になった所を鸚鵡返しに聞き返す。
「人間牧場を潰した……というのは?」
「この辺りの情報はかなり不鮮明になってしまうのだが、どうやらこのケンプファーという少年は、第十三人間牧場の施設や人間を全て破壊、殺害したそうだ」
「十六の少年にそんなことができるんですか?」
幾ら兵士として育てられていたからと言って、一人でそんなことができるとは、ルチアナには到底思えなかった。
「普通は無理だろうね。だが、この少年はそれをなした。どういう方法を取ったかまでは分からないが、とんでもない数の人間を虐殺したんだ。だからその狂暴性故にエクティリアで指名手配され、エクティリアはそれを他国にも知らせたんだろうね」
「で、その少年を警戒していたから忙しかった、ということですか?」
「そういうことだね。この街はエクティリアの国境に近いから余計にね。お陰で警邏の連中は殺気立っているよ」
やれやれと言った調子のアルベルは、腰に吊っていた剣をカウンターの上に置くと、肩の力を抜き溜息を漏らす。
「まぁ、折角来てくれたことですし、ゆっくりして行って下さいね」
そう言うルチアナは、カウンターの下からナイフを取り出すと、再び扉の横に設置された的に向って投げ始めた。カウンターの下からなんて物騒なものを、と思ったアルベルだったが、興味はそっちよりもルチアナの投擲技術へ向けられた。
「ルチアナさんはナイフを投げるのが得意なのかい?」
「得意と言う程ではないです。でも、強盗対策として日々鍛えているんですよ?」
それを聞いたアルベルは破顔し大笑いする。
「くはははは! この前の強盗犯の時は何も出来ていなかったじゃないか!」
「それはアルベルさんが乱入して事態が拗れちゃったからですよ! 人の店がぐっちゃぐちゃになる原因を作ったのは、間違いなくアルベルさんですからね!」
呆れた視線をアルベルに送るルチアナは、手の中でナイフを弄びながら嘆息する。
「後片付け、すっごい大変だったんですからね」
「いやぁ、すまない。あの時は私も必死でね。だがその分、良い店を紹介しただろう?」
「確かにファミーユは良い店ですけど」
けれどルチアナはアルベルと一緒に行ったきり、ファミーユへは足を運んでいない。元々外食をあまりしない性質で、またハンナが居ることにより自然と足が遠退いたのである。
「また食べに行こう。今度はハンナちゃんも連れて。どうだい? 実はもう一つ、話したいこ――」
アルベルがルチアナを誘った時だった。
「――ただいまー!」
元気のよい声と共に、入口の扉が開いた。
瞬間、ルチアナとアルベルの視線がそちらに向く。
入って来たのは、裾のヨレていない新品の黒いワンピースを着ているハンナと、透き通るような銀色の髪の少年だった。
そして布に巻かれた長い棒を手に持っているハンナは、それを掲げながらルチアナに話し掛ける。
「物干し竿、手に入れてきたよ! あと、お友達が出来たの!」
それを見たアルベルは苦笑した。
「この前とは随分と印象が違うじゃないか」
「仲良くなりましたからね。これからもっと仲良くなる予定です」
笑顔で答えるルチアナは、ハンナが連れてきたお友達を見遣り、目を細めた。
そこに立っているのは、ボロ布かと錯覚しそうな服を少年である。銀色の髪は腰に届きそうなほど長く、されど手入れは一切されていない為、ボサボサだ。パッと見は細身だが、華奢という印象は無く、むしろ妙にがっちりとした印象を受ける。身長もそこそこに高く、アルベル程とはいかないが、ルチアナよりも高い。
そしてルチアナとアルベルを警戒するように、眉間に皺を寄せる少年の瞳は、燃えるような赤色だった。
「紹介するね! この人はさっき私の友達になった……」
そこで言葉を切り、隣の少年に続きを促す。
ルチアナ達を睨んでいるかのようだった少年は、すぐに表情を緩めるとぎこちない笑顔を浮かべ、礼儀正しく名乗った。
「はっ、初めまして! 僕はヨハンと申します! ヨハン・ケンプファーと申します! よっ、よろしくおねが、お願い致します!」
無茶苦茶な言葉遣いだったが、どこか無邪気さを感じさせる覇気のある元気な声だったが、ルチアナとアルベルは顔を顰め、同時に呟いた。
「「……ケンプファー?」」
◆◇◆
ケンプファーと名乗った少年の素性について、すぐに仮説を立てたルチアナとアルベルだったが、その話を継続することはできなかった。
アルベルは壁に掛けられている時計を確認すると、そっと席を立つ。自己紹介直後に席を立たれ、ヨハンは何事かと身構える。
けれどアルベルの口から出た言葉は、そんな緊張とは無縁のものだった。
「……もう少し話を聞きたい所だが、これから外せない用事があってね。また今度来るよ」
本音を言えば、ケンプファーという少年から事情を聴きたかったアルベルだが、仕事を蔑ろにするわけにもいかず、結果として後ろ髪引かれながら店を後にした。
唐突の退場に戸惑うヨハンを余所に、ルチアナはマイペースに椅子から立ち上がった。
「ヨハンさん、とりあえず座って下さい。ハンナちゃんのお友達というのなら、私はあなたを歓迎します」
「あ、ありがとうございます」
礼儀正しく頭を下げたヨハンは、おずおずとカウンターの椅子に座る。
「コーヒーと紅茶、どちらが良いですか?」
ルチアナがそう問うと、今まで傍観に徹していたハンナが手を上げた。
「あ! わたしも手伝う!」
「ハンナちゃんは先に、買ってきた物干し竿をベランダに置いて来て下さい」
「あ、はーい!」
二つ返事で答えたハンナは、布捲かれた長い棒を手にしたまま店の奥へと消えていく。
「で、ヨハンさん、どちらにします?」
「ど、どっちでも構いませ……です」
どこかぎこちなさが残る口調に、ルチアナは苦笑する。
「それじゃあ紅茶にしておきますね。それから慣れてない言葉遣いはいっそやらない方がいいですよ。畏まるような場所でもありませんので、自然体で居て下さい」
「あ……はい」
ハッとなったヨハンは、はにかみながら髪を掻く。
すぐに紅茶を用意したルチアナは、それをヨハンの前のカウンターにそっと置いた。そして元の椅子に戻ると、単刀直入に問う。
「ところでヨハンさん。あなたはエクティリアから指名手配されている人物で正しいんですか?」
「指名手配?」
キョトンとするヨハンに、ルチアナは眉を潜めた。
「ご存知ないんですか?」
「僕が指名手配されているんですか?」
「だと思ったんですけど……なんだか噛み合いませんね」
どうにも認識に違いが認められている現状に、ルチアナは困った様に小首を傾げた。そして仕方なく先程アルベルから聞いた話の要点だけをヨハンに告げた。
すると、ヨハンは表情を強張らせながら肯定する。
「うん……それは間違いなく僕です。でもまさか指名手配されてるだなんて……」
その事実に少なからず動揺したルチアナだが、それを表には出さず続ける。
「どうしてヘイブンに来たんですか?」
「理由は特にはないです。ただ、一刻も早くあの国から出たくて、そこから先は何も考えていませんでした」
「ではどうして、あなたは人間牧場の人々を殺したんですか?」
「…………」
単刀直入過ぎるその問いに、ヨハンは沈黙と言う答えを返す。
「言いたくないのなら、それでいいです。私としては、今のあなたがハンナちゃんに害を与えさえしなければ、警邏の人達に突き出したりするつもりもありませんので」
「え……?」
ルチアナの言葉が信じられなかったのか、ヨハンは戸惑いの声を漏らす。
「私は正義感溢れる人間ではありませんので、自分にとって、また自分に近しい存在にとってプラスかマイナスか、それだけが物事の判断基準になっています。だから、嬉しそうにあなたを友達だと言って連れてきたハンナちゃんのことを想い、私はあなたのことを否定しません」
「……初対面でそこまで言うのは、僕が指名手配犯だからですか?」
「もちろん。これでも指名手配されているあなたのことは警戒しているんです。けどそれは全て、ハンナちゃんの身を案じての事。私個人があなたに抱いている興味なんてこれっぽちもありませんし、現状ではプラスやマイナスといった損得勘定すら湧きません」
「そう……ですか」
凍るような遠慮のない冷たい言葉に、ヨハンの気持ちは一気に沈んだ。幾ら初対面とはいえ、興味がないと面と向かって言われるのは胸にくるものがあった。けれど、その沈んだ気持ちは、次に放たれるルチアナの言葉によって霧散する。
「なんといっても初対面ですから。これから私があなたのことをプラスに感じられる人間だと判断すれば、私は全力であなたの味方になりますよ」
と、笑顔で言われ、ヨハンは椅子から立ち上がり声を張り叫ぶ。
「は、はい! 頑張ります!」
「ちょ、ちょっと! わたしの居ない間に何があったの!?」
部屋の奥からようやく戻って来たハンナが、叫んだヨハンを見て目を丸くしていた。ヨハンはそれに気付き、顔を赤くしながらヘナヘナと椅子に座った。
「あは、あはははー……なんでもないよ、ハンナ」
「随分時間が掛かりましたね」
話し込んでいた時間を思い返したルチアナが言うと、ハンナは苦笑いを浮かべながらヨハンの隣に座る。
「竿を持ったまま家の中を移動するが大変だったの。外からベランダに直接投げ込むなりすれば良かったかな」
「あらら、ご苦労様です」
「でもちゃんとベランダに置いて来たよ! しかもちゃんと固定してきた!」
「はい、偉い偉い」
そう言ってルチアナはハンナの頭に手を伸ばし撫でる。
それを見ていたヨハンが、ぽつりと呟く。
「二人は親子なんですか?」
「違うよ。身寄りのないわたしをルチアナが引き取ってくれたの」
さらりと答えるハンナに、ヨハンは少しだけばつが悪そうにする。
「気にしなくていいですよ。私とハンナちゃんは血の繋がった家族ではないですけど、それでも間違いなく家族なんですから」
「……そっか」
くすりと笑うヨハンは、カップに残っていた紅茶を一気に飲み干すと、立ち上がる。
「それじゃあ、僕はこれで失礼しますね」
「今はどこに住んでいるんですか?」
ルチアナが透かさず問う。
「どこにも住んでいません。僕はそういう立場の人間で、これからもそれは変わらないと思います」
悟ったような言葉に、ルチアナは小さく、そう、と呟くだけだった。
けれどそれを黙って見過ごせなかったハンナは、ルチアナに抗議する。
「ル、ルチアナ、なんとかヨハンを住まわせてあげることってできない?」
しかし、
「それは無理です」
ルチアナは即答する。だがハンナは一歩も引かず、食って掛かった。
「なんで!? わたしの時はすぐに引き取ったじゃない!」
「ハンナちゃんとヨハンさんでは事情が違うんです」
「だけどっ……!」
そんな二人のやり取りを見て、ヨハンは困った様に笑う。
「僕のことは気にしなくていいよ。元々誰かのお世話になるつもりはなかったし、今回はただハンナに誘われて遊びに来ただけだから」
「だそうですよ、ハンナちゃん」
「でも……でも、ヨハンはわたしの初めての友達で……」
納得できないハンナは、ブツブツと文句を言いながらルチアナを恨めしそうに睨んだ。けれど、ルチアナの真意が分からないほど子供ではなく、また我儘な性格ではないハンナは、渋々ながらもその決定に従った。
そして、すぐにヨハンの手を握った。
「……分かった。一緒に住むのは諦める。でも、まだ全然遊んでない! だから、もっともっと! たくさん遊ぼう!」
切り替えの早いハンナの言葉に、ヨハンは嬉しそうに頷いた。
それを微笑ましそうに見ていたルチアナは、ハンナに声を掛け小さな財布を差し出した。
「まずはヨハンさんに服でも買ってあげて下さい。そんなボロ布のまま街を歩いたら、街の人達に嫌な顔をされてしまいます」
「ありがとう! ルチアナ大好き! それじゃ、行こうヨハン!」
「う、うん……」
ころっと態度が変わったハンナは、嬉しそうにヨハンの手を引いて歩き出す。勢いに負けたヨハンは、戸惑いながらもそれについて行く。
そして店に出る間際、ヨハンは大声でルチアナに告げる。
「ルチアナさん、ありがとうございます!」
心地良い感謝の言葉を聞き届けたルチアナは、小さく手を振って二人を送り出した。
扉を開き、店内に一歩足を踏み入れた途端、トン、という音が耳元で響いた。
「……!?」
そして音に遅れて、アルベルは己の目が捉えた光景に足を竦ませる。
「ル、ルルル、ルチアナさん……こ、これはいったいどういうつもりなんだい……?」
そう言うアルベルの耳元に程近い、扉のすぐ傍に、一本のナイフが突き立っていた。否、正確には何本ものナイフが木の的に突き刺さっている。
的とは言うが、どう見てもただの木片だ。
「暇なので練習していました」
カウンターの向こうで椅子に座るルチアナは、本を読みながら再びナイフを投げた。
ナイフは綺麗な軌跡を描き、的へと吸い込まれていく。トン、と耳元で音が鳴り、アルベルはたまらず出入り口から逃げ出し、本棚を迂回してカウンターへ向かった。
その後何度か、トン、という音が聞こえたが、アルベルはあえて無視し、ルチアナの正面ではなく二つ左の席に座った。
「お久しぶりです、アルベルさん」
「ああ、久しぶりだね」
「忙しかったんですか?」
「まぁね。……ん、ひょっとして私が来なくて寂しかったのかな?」
へらへらと笑うアルベルが問うと、ルチアナはそれをバッサリと切り捨てる。
「いえ、ハンナちゃんが居るのでアルベルさんが来なくても寂しくないですよ?」
「そ、そうか……」
「そんなハンナちゃんも今は外出中です」
「なんだかんだで上手くやっているみたいだね」
「人を子供か何かと勘違いしているんですか?」
「結構子供っぽい所があるとは思うけどね」
「アルベルさんの方がよっぽど子供っぽいですよ」
肩を竦めてそっぽ向くルチアナは、本を閉じると椅子から立ち上がる。
「コーヒーでいいですか?」
「もちろん」
すぐさまコーヒーを用意して戻って来たルチアナに、アルベルは今まで顔を出せなかった理由を話し始める。
「実はね、エクティリアで指名手配されている罪人が、このヘイブンに入国したという情報が入ってきているんだ」
穏やかでないその内容に、ルチアナはアルベルの前にカップを置きながら眉を潜めた。
「エクティリアからの罪人と言うだけでゾッとするというのに、それがヘイブンに来ているというのは非常に好ましくない」
「どの国の罪人であろうと、指名手配されている人が自分達の国へとやってくるのは怖いものです」
定位置に戻ったルチアナは、カップを持ち上げコーヒーを口に含む。淡々としている反応の薄いルチアナに、アルベルは悪戯を思い付いた子供のような顔をした。
「ここまでなら別に私達警邏の人間も、そこまで取り合わなかったさ。指名手配なんて意味あるものではないからね。だが、指名手配されている人物の素性が問題だったのだよ」
「素性?」
ルチアナは小首を傾げる。
「ああ。この罪人は公には殺人犯としか公表されていないが、カルネルの密偵が調べた情報によると、この罪人は第十三人間牧場の出身らしい」
カルネルの密偵の情報が、どうしてヘイブンに伝わっているかと言えば、ヘイブンの密偵がカルネルに潜伏しているからである。戦火の絶えないこのご時世、どの国も各国に密偵を放つのは自然なことである。とはいえ、それがこうして一般的な場にまで漏れているのは、ルチアナも如何なものかとは思った。
だからルチアナは情報の信憑性にまでは言及せず、語られる情報だけを受け止める。
「第十三人間牧場というのは?」
人間牧場という存在自体は知っているルチアナだが、その細部までは把握していない。それでも仮説ぐらいは立ててはいるが、確定していない以上それは邪推以外の何者でもない。
「身寄りのない子供を一人前の兵士にする為の施設ってことらしい。どこまでが本当かは知らないが、人間牧場と一口に言っても、役割はいろいろあるみたいだね」
「子供を、ですか……嫌な時代です」
中立であり比較的に平和なヘイブンに居ると忘れてしまいそうだが、この大陸のどこかでは、今日も人と人が殺し合っているのだ。だからどうということはないが、その事実だけは忘れてはいけないと、ルチアナは考えている。
「それと、第十三人間牧場は兵士育成以外にも、武器開発も行っていたらしい」
「そこで開発した武器を子供達に使わせるんですか?」
「たぶんね。で、話は戻って指名手配された人物についてなんだが」
「子供、ですか」
流石に察することができたが、その事実にルチアナは心底うんざりした。そしてアルベルはそれを否定することなく、肯定する。
「ああ。指名手配されているのは、ケンプファーという名の少年だ。エクティリアから来た情報は名前と容姿だけだが、密偵からの情報によるとまだ十六歳で、透き通るような銀色の髪を持っているらしい。そして彼は第十三人間牧場を潰したエクティリアの重罪人であり、殺人鬼だそうだ」
透き通るような銀色の髪とはどのようなものかとルチアナは思案したが、詮無いとすぐに判断し、次に気になった所を鸚鵡返しに聞き返す。
「人間牧場を潰した……というのは?」
「この辺りの情報はかなり不鮮明になってしまうのだが、どうやらこのケンプファーという少年は、第十三人間牧場の施設や人間を全て破壊、殺害したそうだ」
「十六の少年にそんなことができるんですか?」
幾ら兵士として育てられていたからと言って、一人でそんなことができるとは、ルチアナには到底思えなかった。
「普通は無理だろうね。だが、この少年はそれをなした。どういう方法を取ったかまでは分からないが、とんでもない数の人間を虐殺したんだ。だからその狂暴性故にエクティリアで指名手配され、エクティリアはそれを他国にも知らせたんだろうね」
「で、その少年を警戒していたから忙しかった、ということですか?」
「そういうことだね。この街はエクティリアの国境に近いから余計にね。お陰で警邏の連中は殺気立っているよ」
やれやれと言った調子のアルベルは、腰に吊っていた剣をカウンターの上に置くと、肩の力を抜き溜息を漏らす。
「まぁ、折角来てくれたことですし、ゆっくりして行って下さいね」
そう言うルチアナは、カウンターの下からナイフを取り出すと、再び扉の横に設置された的に向って投げ始めた。カウンターの下からなんて物騒なものを、と思ったアルベルだったが、興味はそっちよりもルチアナの投擲技術へ向けられた。
「ルチアナさんはナイフを投げるのが得意なのかい?」
「得意と言う程ではないです。でも、強盗対策として日々鍛えているんですよ?」
それを聞いたアルベルは破顔し大笑いする。
「くはははは! この前の強盗犯の時は何も出来ていなかったじゃないか!」
「それはアルベルさんが乱入して事態が拗れちゃったからですよ! 人の店がぐっちゃぐちゃになる原因を作ったのは、間違いなくアルベルさんですからね!」
呆れた視線をアルベルに送るルチアナは、手の中でナイフを弄びながら嘆息する。
「後片付け、すっごい大変だったんですからね」
「いやぁ、すまない。あの時は私も必死でね。だがその分、良い店を紹介しただろう?」
「確かにファミーユは良い店ですけど」
けれどルチアナはアルベルと一緒に行ったきり、ファミーユへは足を運んでいない。元々外食をあまりしない性質で、またハンナが居ることにより自然と足が遠退いたのである。
「また食べに行こう。今度はハンナちゃんも連れて。どうだい? 実はもう一つ、話したいこ――」
アルベルがルチアナを誘った時だった。
「――ただいまー!」
元気のよい声と共に、入口の扉が開いた。
瞬間、ルチアナとアルベルの視線がそちらに向く。
入って来たのは、裾のヨレていない新品の黒いワンピースを着ているハンナと、透き通るような銀色の髪の少年だった。
そして布に巻かれた長い棒を手に持っているハンナは、それを掲げながらルチアナに話し掛ける。
「物干し竿、手に入れてきたよ! あと、お友達が出来たの!」
それを見たアルベルは苦笑した。
「この前とは随分と印象が違うじゃないか」
「仲良くなりましたからね。これからもっと仲良くなる予定です」
笑顔で答えるルチアナは、ハンナが連れてきたお友達を見遣り、目を細めた。
そこに立っているのは、ボロ布かと錯覚しそうな服を少年である。銀色の髪は腰に届きそうなほど長く、されど手入れは一切されていない為、ボサボサだ。パッと見は細身だが、華奢という印象は無く、むしろ妙にがっちりとした印象を受ける。身長もそこそこに高く、アルベル程とはいかないが、ルチアナよりも高い。
そしてルチアナとアルベルを警戒するように、眉間に皺を寄せる少年の瞳は、燃えるような赤色だった。
「紹介するね! この人はさっき私の友達になった……」
そこで言葉を切り、隣の少年に続きを促す。
ルチアナ達を睨んでいるかのようだった少年は、すぐに表情を緩めるとぎこちない笑顔を浮かべ、礼儀正しく名乗った。
「はっ、初めまして! 僕はヨハンと申します! ヨハン・ケンプファーと申します! よっ、よろしくおねが、お願い致します!」
無茶苦茶な言葉遣いだったが、どこか無邪気さを感じさせる覇気のある元気な声だったが、ルチアナとアルベルは顔を顰め、同時に呟いた。
「「……ケンプファー?」」
◆◇◆
ケンプファーと名乗った少年の素性について、すぐに仮説を立てたルチアナとアルベルだったが、その話を継続することはできなかった。
アルベルは壁に掛けられている時計を確認すると、そっと席を立つ。自己紹介直後に席を立たれ、ヨハンは何事かと身構える。
けれどアルベルの口から出た言葉は、そんな緊張とは無縁のものだった。
「……もう少し話を聞きたい所だが、これから外せない用事があってね。また今度来るよ」
本音を言えば、ケンプファーという少年から事情を聴きたかったアルベルだが、仕事を蔑ろにするわけにもいかず、結果として後ろ髪引かれながら店を後にした。
唐突の退場に戸惑うヨハンを余所に、ルチアナはマイペースに椅子から立ち上がった。
「ヨハンさん、とりあえず座って下さい。ハンナちゃんのお友達というのなら、私はあなたを歓迎します」
「あ、ありがとうございます」
礼儀正しく頭を下げたヨハンは、おずおずとカウンターの椅子に座る。
「コーヒーと紅茶、どちらが良いですか?」
ルチアナがそう問うと、今まで傍観に徹していたハンナが手を上げた。
「あ! わたしも手伝う!」
「ハンナちゃんは先に、買ってきた物干し竿をベランダに置いて来て下さい」
「あ、はーい!」
二つ返事で答えたハンナは、布捲かれた長い棒を手にしたまま店の奥へと消えていく。
「で、ヨハンさん、どちらにします?」
「ど、どっちでも構いませ……です」
どこかぎこちなさが残る口調に、ルチアナは苦笑する。
「それじゃあ紅茶にしておきますね。それから慣れてない言葉遣いはいっそやらない方がいいですよ。畏まるような場所でもありませんので、自然体で居て下さい」
「あ……はい」
ハッとなったヨハンは、はにかみながら髪を掻く。
すぐに紅茶を用意したルチアナは、それをヨハンの前のカウンターにそっと置いた。そして元の椅子に戻ると、単刀直入に問う。
「ところでヨハンさん。あなたはエクティリアから指名手配されている人物で正しいんですか?」
「指名手配?」
キョトンとするヨハンに、ルチアナは眉を潜めた。
「ご存知ないんですか?」
「僕が指名手配されているんですか?」
「だと思ったんですけど……なんだか噛み合いませんね」
どうにも認識に違いが認められている現状に、ルチアナは困った様に小首を傾げた。そして仕方なく先程アルベルから聞いた話の要点だけをヨハンに告げた。
すると、ヨハンは表情を強張らせながら肯定する。
「うん……それは間違いなく僕です。でもまさか指名手配されてるだなんて……」
その事実に少なからず動揺したルチアナだが、それを表には出さず続ける。
「どうしてヘイブンに来たんですか?」
「理由は特にはないです。ただ、一刻も早くあの国から出たくて、そこから先は何も考えていませんでした」
「ではどうして、あなたは人間牧場の人々を殺したんですか?」
「…………」
単刀直入過ぎるその問いに、ヨハンは沈黙と言う答えを返す。
「言いたくないのなら、それでいいです。私としては、今のあなたがハンナちゃんに害を与えさえしなければ、警邏の人達に突き出したりするつもりもありませんので」
「え……?」
ルチアナの言葉が信じられなかったのか、ヨハンは戸惑いの声を漏らす。
「私は正義感溢れる人間ではありませんので、自分にとって、また自分に近しい存在にとってプラスかマイナスか、それだけが物事の判断基準になっています。だから、嬉しそうにあなたを友達だと言って連れてきたハンナちゃんのことを想い、私はあなたのことを否定しません」
「……初対面でそこまで言うのは、僕が指名手配犯だからですか?」
「もちろん。これでも指名手配されているあなたのことは警戒しているんです。けどそれは全て、ハンナちゃんの身を案じての事。私個人があなたに抱いている興味なんてこれっぽちもありませんし、現状ではプラスやマイナスといった損得勘定すら湧きません」
「そう……ですか」
凍るような遠慮のない冷たい言葉に、ヨハンの気持ちは一気に沈んだ。幾ら初対面とはいえ、興味がないと面と向かって言われるのは胸にくるものがあった。けれど、その沈んだ気持ちは、次に放たれるルチアナの言葉によって霧散する。
「なんといっても初対面ですから。これから私があなたのことをプラスに感じられる人間だと判断すれば、私は全力であなたの味方になりますよ」
と、笑顔で言われ、ヨハンは椅子から立ち上がり声を張り叫ぶ。
「は、はい! 頑張ります!」
「ちょ、ちょっと! わたしの居ない間に何があったの!?」
部屋の奥からようやく戻って来たハンナが、叫んだヨハンを見て目を丸くしていた。ヨハンはそれに気付き、顔を赤くしながらヘナヘナと椅子に座った。
「あは、あはははー……なんでもないよ、ハンナ」
「随分時間が掛かりましたね」
話し込んでいた時間を思い返したルチアナが言うと、ハンナは苦笑いを浮かべながらヨハンの隣に座る。
「竿を持ったまま家の中を移動するが大変だったの。外からベランダに直接投げ込むなりすれば良かったかな」
「あらら、ご苦労様です」
「でもちゃんとベランダに置いて来たよ! しかもちゃんと固定してきた!」
「はい、偉い偉い」
そう言ってルチアナはハンナの頭に手を伸ばし撫でる。
それを見ていたヨハンが、ぽつりと呟く。
「二人は親子なんですか?」
「違うよ。身寄りのないわたしをルチアナが引き取ってくれたの」
さらりと答えるハンナに、ヨハンは少しだけばつが悪そうにする。
「気にしなくていいですよ。私とハンナちゃんは血の繋がった家族ではないですけど、それでも間違いなく家族なんですから」
「……そっか」
くすりと笑うヨハンは、カップに残っていた紅茶を一気に飲み干すと、立ち上がる。
「それじゃあ、僕はこれで失礼しますね」
「今はどこに住んでいるんですか?」
ルチアナが透かさず問う。
「どこにも住んでいません。僕はそういう立場の人間で、これからもそれは変わらないと思います」
悟ったような言葉に、ルチアナは小さく、そう、と呟くだけだった。
けれどそれを黙って見過ごせなかったハンナは、ルチアナに抗議する。
「ル、ルチアナ、なんとかヨハンを住まわせてあげることってできない?」
しかし、
「それは無理です」
ルチアナは即答する。だがハンナは一歩も引かず、食って掛かった。
「なんで!? わたしの時はすぐに引き取ったじゃない!」
「ハンナちゃんとヨハンさんでは事情が違うんです」
「だけどっ……!」
そんな二人のやり取りを見て、ヨハンは困った様に笑う。
「僕のことは気にしなくていいよ。元々誰かのお世話になるつもりはなかったし、今回はただハンナに誘われて遊びに来ただけだから」
「だそうですよ、ハンナちゃん」
「でも……でも、ヨハンはわたしの初めての友達で……」
納得できないハンナは、ブツブツと文句を言いながらルチアナを恨めしそうに睨んだ。けれど、ルチアナの真意が分からないほど子供ではなく、また我儘な性格ではないハンナは、渋々ながらもその決定に従った。
そして、すぐにヨハンの手を握った。
「……分かった。一緒に住むのは諦める。でも、まだ全然遊んでない! だから、もっともっと! たくさん遊ぼう!」
切り替えの早いハンナの言葉に、ヨハンは嬉しそうに頷いた。
それを微笑ましそうに見ていたルチアナは、ハンナに声を掛け小さな財布を差し出した。
「まずはヨハンさんに服でも買ってあげて下さい。そんなボロ布のまま街を歩いたら、街の人達に嫌な顔をされてしまいます」
「ありがとう! ルチアナ大好き! それじゃ、行こうヨハン!」
「う、うん……」
ころっと態度が変わったハンナは、嬉しそうにヨハンの手を引いて歩き出す。勢いに負けたヨハンは、戸惑いながらもそれについて行く。
そして店に出る間際、ヨハンは大声でルチアナに告げる。
「ルチアナさん、ありがとうございます!」
心地良い感謝の言葉を聞き届けたルチアナは、小さく手を振って二人を送り出した。
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