故に彼女は人を読む

四十宮くるふ

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2.槍鬼霊は振るわれない

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 二人が帰って来たのは、日が沈み始めた頃だった。
 長かった銀髪を結ったヨハンは、どういうわけか燕尾服を着ていた。そしてその隣でニコニコと笑顔を浮かべるハンナは、手に持っていた大きな紙袋を床に置くと、開口一番こう言った。

「ヨハンってば凄く似合ってるよね?」
「は、はい……確かに似合っています」

 とりあえず頷いたルチアナは、どうしてそんな格好をしているのかを必死に考える。少なくとも、与えた小遣い程度で買える代物でないのは明白だった。

「でも、少し窮屈だよ」

 そう言って首を動かすヨハンは、妙な気品を放っていた。珍しい銀色の髪に赤色の瞳が他人の目を惹き、さらにスラッとした体形なのが相俟ってどこかの貴族の執事かと錯覚させられる。

「実は街でヨハンのことを気に入った人がいて、その人がくれたの!」

 喜々として報告してくるハンナだが、燕尾服をくれる人がというのがルチアナには想像できなかった。だがそんな心配も、ハンナの次の言葉で吹き飛ばされる。

「でね、お金が余ったからルチアナの服を買って来たの!」
「え……?」

 ちょっと意味の分からないルチアナは、キョトンと小首を傾げる。
 しかしそんなルチアナの困惑を余所に、ハンナは床に置いた紙袋からバッと服を取り出した。
 その服を見た瞬間、ルチアナは顔を引き攣らせる。

「そ、それを……私に……ですか……?」
「うん! ルチアナってばどちらかと言えば男物の似たような服しか着ないよね? でも本当はこういう服とかも凄く似合うと思うの!」

 ハンナが取り出したのは、白のブラウスにパステルカラーのカーディガン、そして少しだけフリルの入ったロングスカートだった。
 ファッションに毛ほどの興味もないルチアナは言葉に困る。

「そ、そうですか……? そういうのは私よりもハンナちゃんの方が」
「そんなことないよ! ルチアナだって絶対に似合うよ! だいたいルチアナはわたしの服を買う時はあんなに嬉しそうに選んでたのに、どうしてその意識を自分に向けられないの!?」
「いえ、その……私はそういう服を着ても似合いませんから」

 それはルチアナの本心だった。
 しかしハンナは、その言葉をバッサリと切り捨てる。

「そんなことない! ルチアナにだってこういう服が似合うよ! だから明日はそれを着てね!」

 そう言ったハンナは服を紙袋に戻すと、それをルチアナに押し付けた。受け取らざるを得なかったルチアナは、紙袋を抱えたまま呆然とする。
 そんなルチアナに追撃を掛けるように、ハンナは矢継き早に告げる。

「あ、それから今日は友達を家に泊めるけどいいよね!?」
「はい、どうぞ……ってちょっと待って下さい!」

 とはいえ見過ごせない言葉を聞いたルチアナは、椅子から跳び起きヨハンの手を引いているハンナを見遣る。するとハンナも無茶だと悟ったのか、立ち止りばつが悪そうに視線を逸らす。
 そしてルチアナが何か言う前に、先に愚痴る。

「だって友達だもん。野宿させたくないんだもん」

 それは拒絶されることに対する不満を素直に吐いた我儘だったが、ルチアナはハンナの予想を裏切った。

「……はぁ、しょうがないですね。住まわせるのは無理ですけど、友達を泊めるぐらいなら許します。でも、ヨハンさんはハンナちゃんの部屋で。ハンナちゃんは私の部屋で寝ること。決して同じ部屋で寝ちゃいけませんからね」

 ハンナは驚愕に目を見開いた後、その場でぴょんぴょんと跳び跳ねた。

「やった! ありがとう、ありがとう! 良かったね、ヨハン! 今日はベッドで寝られるよ!」
「あ、ありがとう……」

 状況が飲み込めていないヨハンは、状況を静観しっ放しだったが、どちらかと言えば世話になるのを申し訳なさそうにしていた。
 だからルチアナは最後にこう付け加えた。

「それからヨハンさん、寝る時はその服を脱いで下さいね。サイズが少し小さいかもしれませんけど、私の服を貸してあげますから」


◆◇◆


 翌朝、ハンナとヨハンは何処かへ出掛けて行った。
 それを笑顔で見送ったルチアナは、カウンターに腰掛けたまま天井を見上げる。本を読むわけでもなく、ただ何かを考え込むように天井を仰ぐ。

「……これは……想像以上、です」

 何が、とまでは語られなかった。
 その代りにルチアナは、上を向いたままカウンターの下からナイフを取り出し、入口近くの的に向って投げ始める。的である木片に何本ものナイフが吸い込まれていく。その精度は目を張るものがあるが、それを観測するものは誰もない。
 やがて手持ちのナイフが無くなると、投げるフリだけをして時間を潰した。

 そうやって無為にも思える時間の使い方をしていると、アルベルが来店した。
 とはいえ、アルベルは本を買いに来るわけでもなく、タダでコーヒーを飲みに来て駄弁るだけなので、客かと言われると怪しい存在である。単純にルチアナが飲食代を請求しないというのもあるのだが。

「今日はナイフが飛んで来なくて安心したよ……っ! くふっ」
「もう少し早く来てくれれば、ナイフは飛んでいましたよ」
「これでも早く来たつもりだったんだけれどね。あぁ、そうそう、来る時に露天商にこんなものを押し付けられてしまったよ」

 苦笑するアルベルがルチアナの向いに座ると、カウンターに立てかけるようにデッキブラシを、そしてカウンターの上には剣を置いた。

「数日来ないと思ったら、今度は連続で来るんですね。それにデッキブラシって……くれるんですか?」
「ああ、私には必要ないからね。だいたい私がいつ来たって構わないだろう? ここは仮にも書店なのだから」

 そういうアルベルはジロジロとルチアナを見遣る。

「仰るとおりです。はい、追い返したりはしないですよ」

 ようやくアルベルを見据えたルチアナは、そんな視線から逃げるように頬杖をついて嘆息する。

「どうしたんだい? なんだかいつものルチアナさんらしくないね」
「いろいろとあるんです。アルベルさんみたいに頭の中を空っぽにできたら、どれだけ幸せか……」

 呆れ顔で言われたアルベルは、顔を引き攣らせる。

「まるで私が考えなしのバカみたいじゃないか」
「違うんですか? アルベルさんは考え無しの刹那的な生き方をしていると思いますけど」
「否定はしないが……」
「それより、いつもは昼過ぎにならないと来ないのに、どうして今日に限って朝から? ひょっとして、昨日突然帰ったことと何か関係があるんですか?」

 この時間帯は大抵警邏の仕事で店には来ないアルベルが、今日に限って来たことに疑問を覚えていた。無論、ルチアナには心当たりはあったので、これはあくまで確認的なものである。

「やっぱりルチアナさんは相変わらずだ。お察しの通り、ヨハン・ケンプファーのことで話があってね。でもその前に聞いてもいいかい?」
「嫌です! 絶対に聞かないで下さい!」

 手でバッテンを作りピシャリと即答する。けれどアルベルはそれを無視して思ったことを口にした。

「今日は随分と可愛らしい格好をしているね」
「や、ややややや、やっぱり似合いませんよね!?」

 そういって椅子から勢い良く立ち上がるルチアナの動きに合わせて、フリルの入ったロングスカートがゆらゆらと揺れる。そして上半身は、ハンナからプレゼントされた白のブラウスとパステルカラーのカーディガンに包まれていた。
 男っぽい格好しか見ていなかったアルベルには、その姿がとても物珍しかったのだ。

「いやいや、今までのも凛々しくて素敵だったが、やはり女性であるルチアナさんにはそういう格好の方が似合うね。いやあ、素晴らしい!」

 絶賛するアルベルを尻目に、ルチアナは頬を朱に染めながらもそっぽを向き、どかっと椅子に腰掛けた。

「……知りませんっ」
「はっはっは、いつも余裕のあるルチアナさんがそういう態度を取ると、なんだか新鮮でいいなぁ!」
「本題に入りましょう! あの時さっさと帰ってしまったのは、ヨハンさんに話を聞かれたくなかったからなのでしょう? はい、それじゃあ続きをどうぞ!」

 ドン、とカウンターを叩いたルチアナに、アルベルは方を大きく竦めた。そしてようやく本題に入る。

「やれやれ、やっぱりお見通しか。実はね、ここ数日で強盗が頻発しているんだ」
「強盗?」

 その単語を聞いたルチアナは、ふとザックのことを思い出した。

「実は昨夜も発生してね、パトリオット家で被害が出た」
「珍しいですね。資産家のパトリオット家の警備は厳重で有名なのに」

 パトリオット家は、ヘイブンでも有数の資産家である。町の外れに巨大な屋敷があり、そこに住んでいるパトリオット家の人間は頻繁に街中に姿を現し、街の人達と深く交流している。その為、人々からの人望がとても厚い。そしてその屋敷には資産を狙う不届き者から主や資産を守るべく、一流の護衛が配備されているのは、周知の事実であった。

「そのパトリオット家の警備を突破する程の強盗、というわけだから、警邏の人間もピリピリしている。でも、問題はそこじゃないんだ」
「ヨハンさん、ですか」

 透かさずルチアナが補足すると、アルベルは驚き目を丸くする。

「良く分かったね。そう、この強盗が押し入る場所は、全てヨハン・ケンプファーが関係しているんだ。銀色の髪という目撃情報があった場所の近くで強盗が起きているらしくて、ということはつまり、その人物は銀色の髪の人物――ヨハン・ケンプファーを捜していると私は見ている。警邏全体としてはまだ様子見をするみたいなのだが、それでは遅過ぎる。確信がなくとも、可能性がそこにあればそれは真実になり得るのだから。それにどうやら、ヨハン・ケンプファーはパトリオット家の人間とも接触していたみたいだからね」

 アルベルからもたらされた情報を加味したルチアナは、一つの仮説に至る。

「それじゃあ次は、ここにその強盗が来るってことですか」
「その可能性は高いと見ているよ。少なくとも昨日、ヨハン・ケンプファーはここに居たのだから。それで聞きたいのだけれど、昨日ヨハン・ケンプファーはどこで一夜を過ごして、今はどこに居るんだい?」
「昨日はこの店に泊まりました。今はハンナちゃんと一緒に居ると思います」
「そうなると、やはり次はこの店に来る可能性が高いだろうね。でもそれ以上に……」
「二人が危ないですね」

 即答するルチアナの言葉に、アルベルは剣を手に立ち上がる。

「探してこよう」
「分かりました、お願いします。けど、最低でも夕方までには一度、店に寄って下さい。もしかしたら先に二人が帰ってくるかもしれません」
「承知した!」

 真剣な顔で返事をしたアルベルは、店から出ていこうとする。だが出ていく寸前で振り返り、

「私の推理を信じてくれてありがとう。警邏の連中には安直過ぎるとバカにされたものだよ」

 そう言い苦笑すると、アルベルは朝の街へと消えていった。

 一人になったルチアナは、店の出入り口に移動すると、設置されていた的――木片からナイフを何本も引き抜いていく。抜き終わったナイフはその場に捨てられ、柄を下にして床に落ちる。
 甲高い金属音を響かせながら、大量のナイフが床に散っていく。

「……本当に、想像以上です」

 ぽつりと呟き、最後の一本を引き抜いたルチアナは、手の中でナイフを弄びながら店内を移動し、とある本棚から一冊の本を取り出す。その本が収められていた棚は、背表紙にタイトルの描かれていない、とても分厚い本がずらりと並んでいた。

 取り出したその本を小脇に抱えたルチアナは、一度カウンターに戻りそっと置いた。それから散らばったナイフを手早く拾い集め、定位置である椅子へと座ると、ナイフをカウンターの下へと仕舞っていく。
 その後ペンを取り出し、カウンターに置かれた本を広げた。
 広げられたその本のページはまっさらで、インクの滲みのない空っぽな本だった。

「…………っ」

 ペンを握ったまま白紙の本を見下ろしながら、ルチアナは顔を顰める。
 硬直したように動きた止まり、まるで葛藤するかのように表情を歪めていく。つう、と額から汗が伝い、それが形の良い顎を流れ、ぽた、と落ちた。
 白いページに滴る汗を見たルチアナは、ハッとなり首を左右に振った。そしてペンをそっとカウンターに置き、本をパタンと閉じる。
 そしてぐったりと背凭れに背を預け、天井を仰ぐ。

「彼が来なくなったら、きっとあの子は悲しんでしまいますよね」

 自嘲するように言うルチアナの言葉は、やがて視線を落とし閉じられた本をカウンターの隅へ移した。そしてカウンターの下から紙を一枚取り出し、ペンを走らせ始める。
 数分間、ペンが紙の上を通り、紙一面に文字が書き綴られていく。
 やがてそれが紙の端に到達し、紙が文字に埋め尽くされると、その紙を手に椅子から腰を上げる。その際、カウンターの下からナイフを一本取り出す。

 落ち着いた足取りで入り口脇にある木片の的に近付くと、ナイフで的に紙を固定した。紙の上部を貫通したナイフは、その先にある木片に深々と刺さる。
 些か不格好だが、掲示板のようなものが出来あがった。それを見ながら、ルチアナは独り言つ。

「……これが無駄になれば良いのですが」
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