10 / 17
3.血酒の果て
①
しおりを挟む
陽が高く上った昼過ぎの事、荘厳な山間に心地良い風が吹き抜けていく。頬を舐る優しい風を全身で感じながら、街では感じることのできない自然の匂いに気持ちを高鳴らせ、三人は一切の整備が成されてない道を往く。
「ヨハンさんが来てくれたおかげで、旅路の方も順調に終盤を迎えられました。ありがとうございます」
荒れた山道を器用に歩くルチアナは、同じように隣を歩く、槍を肩に担いたヨハンに感謝の言葉を述べた。
それを聞いたヨハンは、照れ笑いを浮かべ言葉を濁す。
「そ、そんな。これぐらいのことなら、僕はいつだってお手伝いしますよ
「ねーねー、ルチアナ! わたしは? わたしも役に立ったよね?」
自分が蚊帳の外にでもされたと思ったのか、ルチアナと手を繋いで歩いているハンナがその場でぴょんぴょんと跳ねる。
「ハンナちゃんはとっても素敵な抱き心地でした」
「わたしも! わたしも、ルチアナにぎゅーってされて気持ち良かったよ!」
「ぎゅーって……」
呆れるヨハンは周囲の警戒を強めながらも、ルチアナとハンナとの雑談を楽しんでいた。
そもそもなぜ三人が山道を歩いているのか、またこの山がどこなのかと言えば、少しばかり時間を遡らなければならない。
事の発端は、ルチアナが隣街に本を仕入れに行くと言い出したことである。
それを遠足か何かと勘違いしたハンナは、ルチアナについて行くと言い張った。とはいえ、ルチアナが目指す隣街は山を二つほど越えた先にあり、道中は相応の危険が伴う。自分の身一つならともかく、ハンナの身の安全までは保証できなかった。そこでルチアナは、警邏隊の一員であるアルベルに声を掛けたのだが、生憎とアルベルは仕事に忙殺されているらしく、手の空いていたヨハンを護衛にと宛がって来た。
アルベル曰く、ヨハンは警邏隊の一員としてはまだまだ見習いで仕事を覚えて貰っている最中だが、戦闘能力だけなら現役連中よりも秀でている、とのことだった。ちなみに、ルチアナがアルベルとどっちが強いかを問い掛けたら、「無論私の方が強いとも」と自信満々に答えられた。
そういうわけでルチアナは、ハンナとヨハンを連れて隣町へと向かったのである。途中、騎士を名乗る者と遭遇するも、行きは難なく二つの山を越え、無事に目当ての本を手に入れることが出来た。そしてルチアナ達は入手した本を片手に、帰路についているのだ。
「――にしても、仕入れた本がたったの一冊って……それは何の本なの?」
繋いだ手を前後に忙しなく動かすハンナは、ルチアナが空いた手で持っている本の包まれた布の包みに視線を送る。
「これは『魔女の涙』というタイトルの本です」
「魔女の涙?」
ハンナは鸚鵡返しに聞き返す。
「笑み一つ浮かべない冷徹な魔女が、叶わぬ恋に身をし、けれど失恋してしまい、涙を流すお話です」
「なんだか悲しそう」
「そうですね。物語自体は悲しい結末を迎える、悲恋の物語です。けれど私がこの本を欲しがった理由は、この物語を読みたいからということではなく、この物語に登場するあるお酒のことを知りたかったからです」
「お酒?」
「はい。魔女の作った、本のタイトルにもなっている不思議なお酒。お酒好きの私としては、その話を聞いた時は是非詳細を知りたいと思ってしまったのです」
ルチアナの言葉に、ハンナは意外そうな顔をする。
「あ、ルチアナってお酒好きなんだ。でも普段ってコーヒーとか紅茶ばっかり飲んでいるよね?」
「隠れて楽しんでいるんです。そもそも、店番をしながら飲酒したりはしませんよ」
苦笑するルチアナが、ハンナの手を思い切り振り回す。
「うわわあっ! ちょ、ルチアナ!?」
「とにかく今は無事に帰れるように祈っておきましょう」
「行きだって何事もなかったから、帰りもきっと大丈夫ですよ」
周囲を随時警戒しているヨハンがそう口を挟むと、ルチアナは表情を硬くし忠告する。
「ヨハンさん、何か予想外の事が起きた時は、私ではなくハンナちゃんを守って下さい。そして私の事は放っておいてくれて構わないので、ハンナちゃんを連れて先に帰っていて下さい。いいですね」
そう言いながらハンナをヨハンの横へと移動させ手を離す。されるがままのハンナは軽くよろけたが、ヨハンが空かさずハンナの手を掴み引き寄せたことにより体勢を立て直す。
「っと……それは構わないけど、ルチアナさんは大丈夫なんですか?」
ヨハンの心配を余所に、ルチアナは不敵な笑みを浮かべハンナの髪を撫でる。
「私は大丈夫です。これでも結構強いんですよ?」
「あはは……」
槍鬼霊の件でルチアナの底知れなさを知っているヨハンにとっては、渇いた笑いしか出ない言葉だった。何のことかと小首を傾げるハンナは、話題を切り替えるようにルチアナを見上げる。
「ねぇ、暇だから何か面白いお話とかないかな?」
「面白いお話ですか」
具体性に欠ける要求に、ルチアナは眉を潜める。
「いいですね。アルベルさんもルチアナさんの語る物語を聞いたことがあると言っていましたし」
「むむっ……アルベルさんは何か言っていましたか?」
「ルチアナさんはとても語り上手だ、と言っていました」
「……私は語るのは好きではないと言ったはずなのですが」
アルベルの勝手な解釈に頭を抱える。
「ルチアナ、何かないの?」
ハンナの強請るような声に、ルチアナは嘆息を漏らし折れた。
「分かりました。それでは一つ、最近読んだ物語をお話してあげます」
「わーい! やったー!」
ぴょんぴょんとその場で跳ねるハンナは、手を繋ぐヨハンに促す。
「ほら、ヨハンも!」
「え? ぼ、僕も……? や、やったー……こ、これはちょっと恥ずかしいよ!?」
赤面しながら軽く跳ねたヨハンを見て、ルチアナとハンナはくすくすと笑いを漏らす。そんな和やかな雰囲気の中、ルチアナは緩やかに唇を滑らせ始めた。
「――山に囲まれた辺鄙な村に、二人の少年が居ました」
◆◇◆
山に囲まれた辺鄙な村に、二人の少年が居ました。
その少年達は騎士になるのが夢でした。そして騎士は強くなくてはなれないと考えた二人は、日々鍛練に明け暮れます。
燦燦と陽が照りつける晴天の日も。
鬱蒼とした灰色が天を埋める曇天の日も。
肌を打つ水滴が何億と降り注ぐ豪雨の日も。
視界を純白に染め上げる豪雪の日も。
二人の少年は手を休めることなく、お互いの強さを磨く為だけに、切磋琢磨しました。
そんなある日、二人は互いの夢を誓い合う為に、血酒を交わすことにしました。
相手の盃に自分の血を垂らし、それを飲むことで己が夢を果たすと誓いを立てるのです。ですが片方の少年は、血を飲むのに抵抗を示しました。そこで少年は盃を用意するなら血だけでなく酒も一緒に飲もうと言い出し、両親が一滴も飲まずに大切に保管していた、とっておきのお酒を持ち出しました。二本あるのだから一本ぐらい構わないと考えた少年は、それで血酒を交わすことにしたのです。
自分の血を杯に垂らし、そこに酒を並々と注ぐと、それを交換し乾杯しました。
そして二人は誓いを立て、その日は極上の味の酒を惜しみなく飲み干し、朝まで騒いで楽しみました。
けれど、二人が一緒に笑い合っていられたのは、その日が最後でした。
その日を境に、二人の環境は激変していきました。
一人は順調に騎士への道を歩んでいましたが、もう一人の少年は窃盗に手を染め初めてしまい、只管に堕ちていきます。窃盗は殺人に発展し、少年の名前は村内でもタブーになるほどの悪名となり、騎士への道を順調に進んでいた少年は、今まで一緒にやってきた少年がどうしてそんなことをしたのか、まるで理解できませんでした。
二人は何度もぶつかり、言葉を交わしましたが、ただの一度も分かり合うことはありません。
騎士となり人の役に立ちたい少年と、外道に堕ちた少年とでは、分かり合えないのは道理。そうして二人の道は正反対のまま進み、やがて片方の少年は騎士となり、もう一人は村の近辺に居を構える山賊になりました。
少年――騎士は村に戻り村人を守りながら少年――山賊を何度も村から追い払いました。ライバルのような両者の関係により、騎士は名を上げ、山賊もまた名を上げ、国にその名を知られていきます。
ですが山賊の規模が年々大きくなり、騎士一人では到底駆逐することができず、また山賊がその村しか襲わない為に、国から軍が派遣されることもなく、村は国に自浄することを課されてしまいました。
結果、村人で編製された自警団と、村に唯一となった騎士の手によって、山賊との長い戦いが始まったのです。
そしてそれは今尚続き、嘗て誓いを立てた少年達は対立し、終わりの見えない殺し合いを続けているのでした。
いたわしや、いたわしや。
「ヨハンさんが来てくれたおかげで、旅路の方も順調に終盤を迎えられました。ありがとうございます」
荒れた山道を器用に歩くルチアナは、同じように隣を歩く、槍を肩に担いたヨハンに感謝の言葉を述べた。
それを聞いたヨハンは、照れ笑いを浮かべ言葉を濁す。
「そ、そんな。これぐらいのことなら、僕はいつだってお手伝いしますよ
「ねーねー、ルチアナ! わたしは? わたしも役に立ったよね?」
自分が蚊帳の外にでもされたと思ったのか、ルチアナと手を繋いで歩いているハンナがその場でぴょんぴょんと跳ねる。
「ハンナちゃんはとっても素敵な抱き心地でした」
「わたしも! わたしも、ルチアナにぎゅーってされて気持ち良かったよ!」
「ぎゅーって……」
呆れるヨハンは周囲の警戒を強めながらも、ルチアナとハンナとの雑談を楽しんでいた。
そもそもなぜ三人が山道を歩いているのか、またこの山がどこなのかと言えば、少しばかり時間を遡らなければならない。
事の発端は、ルチアナが隣街に本を仕入れに行くと言い出したことである。
それを遠足か何かと勘違いしたハンナは、ルチアナについて行くと言い張った。とはいえ、ルチアナが目指す隣街は山を二つほど越えた先にあり、道中は相応の危険が伴う。自分の身一つならともかく、ハンナの身の安全までは保証できなかった。そこでルチアナは、警邏隊の一員であるアルベルに声を掛けたのだが、生憎とアルベルは仕事に忙殺されているらしく、手の空いていたヨハンを護衛にと宛がって来た。
アルベル曰く、ヨハンは警邏隊の一員としてはまだまだ見習いで仕事を覚えて貰っている最中だが、戦闘能力だけなら現役連中よりも秀でている、とのことだった。ちなみに、ルチアナがアルベルとどっちが強いかを問い掛けたら、「無論私の方が強いとも」と自信満々に答えられた。
そういうわけでルチアナは、ハンナとヨハンを連れて隣町へと向かったのである。途中、騎士を名乗る者と遭遇するも、行きは難なく二つの山を越え、無事に目当ての本を手に入れることが出来た。そしてルチアナ達は入手した本を片手に、帰路についているのだ。
「――にしても、仕入れた本がたったの一冊って……それは何の本なの?」
繋いだ手を前後に忙しなく動かすハンナは、ルチアナが空いた手で持っている本の包まれた布の包みに視線を送る。
「これは『魔女の涙』というタイトルの本です」
「魔女の涙?」
ハンナは鸚鵡返しに聞き返す。
「笑み一つ浮かべない冷徹な魔女が、叶わぬ恋に身をし、けれど失恋してしまい、涙を流すお話です」
「なんだか悲しそう」
「そうですね。物語自体は悲しい結末を迎える、悲恋の物語です。けれど私がこの本を欲しがった理由は、この物語を読みたいからということではなく、この物語に登場するあるお酒のことを知りたかったからです」
「お酒?」
「はい。魔女の作った、本のタイトルにもなっている不思議なお酒。お酒好きの私としては、その話を聞いた時は是非詳細を知りたいと思ってしまったのです」
ルチアナの言葉に、ハンナは意外そうな顔をする。
「あ、ルチアナってお酒好きなんだ。でも普段ってコーヒーとか紅茶ばっかり飲んでいるよね?」
「隠れて楽しんでいるんです。そもそも、店番をしながら飲酒したりはしませんよ」
苦笑するルチアナが、ハンナの手を思い切り振り回す。
「うわわあっ! ちょ、ルチアナ!?」
「とにかく今は無事に帰れるように祈っておきましょう」
「行きだって何事もなかったから、帰りもきっと大丈夫ですよ」
周囲を随時警戒しているヨハンがそう口を挟むと、ルチアナは表情を硬くし忠告する。
「ヨハンさん、何か予想外の事が起きた時は、私ではなくハンナちゃんを守って下さい。そして私の事は放っておいてくれて構わないので、ハンナちゃんを連れて先に帰っていて下さい。いいですね」
そう言いながらハンナをヨハンの横へと移動させ手を離す。されるがままのハンナは軽くよろけたが、ヨハンが空かさずハンナの手を掴み引き寄せたことにより体勢を立て直す。
「っと……それは構わないけど、ルチアナさんは大丈夫なんですか?」
ヨハンの心配を余所に、ルチアナは不敵な笑みを浮かべハンナの髪を撫でる。
「私は大丈夫です。これでも結構強いんですよ?」
「あはは……」
槍鬼霊の件でルチアナの底知れなさを知っているヨハンにとっては、渇いた笑いしか出ない言葉だった。何のことかと小首を傾げるハンナは、話題を切り替えるようにルチアナを見上げる。
「ねぇ、暇だから何か面白いお話とかないかな?」
「面白いお話ですか」
具体性に欠ける要求に、ルチアナは眉を潜める。
「いいですね。アルベルさんもルチアナさんの語る物語を聞いたことがあると言っていましたし」
「むむっ……アルベルさんは何か言っていましたか?」
「ルチアナさんはとても語り上手だ、と言っていました」
「……私は語るのは好きではないと言ったはずなのですが」
アルベルの勝手な解釈に頭を抱える。
「ルチアナ、何かないの?」
ハンナの強請るような声に、ルチアナは嘆息を漏らし折れた。
「分かりました。それでは一つ、最近読んだ物語をお話してあげます」
「わーい! やったー!」
ぴょんぴょんとその場で跳ねるハンナは、手を繋ぐヨハンに促す。
「ほら、ヨハンも!」
「え? ぼ、僕も……? や、やったー……こ、これはちょっと恥ずかしいよ!?」
赤面しながら軽く跳ねたヨハンを見て、ルチアナとハンナはくすくすと笑いを漏らす。そんな和やかな雰囲気の中、ルチアナは緩やかに唇を滑らせ始めた。
「――山に囲まれた辺鄙な村に、二人の少年が居ました」
◆◇◆
山に囲まれた辺鄙な村に、二人の少年が居ました。
その少年達は騎士になるのが夢でした。そして騎士は強くなくてはなれないと考えた二人は、日々鍛練に明け暮れます。
燦燦と陽が照りつける晴天の日も。
鬱蒼とした灰色が天を埋める曇天の日も。
肌を打つ水滴が何億と降り注ぐ豪雨の日も。
視界を純白に染め上げる豪雪の日も。
二人の少年は手を休めることなく、お互いの強さを磨く為だけに、切磋琢磨しました。
そんなある日、二人は互いの夢を誓い合う為に、血酒を交わすことにしました。
相手の盃に自分の血を垂らし、それを飲むことで己が夢を果たすと誓いを立てるのです。ですが片方の少年は、血を飲むのに抵抗を示しました。そこで少年は盃を用意するなら血だけでなく酒も一緒に飲もうと言い出し、両親が一滴も飲まずに大切に保管していた、とっておきのお酒を持ち出しました。二本あるのだから一本ぐらい構わないと考えた少年は、それで血酒を交わすことにしたのです。
自分の血を杯に垂らし、そこに酒を並々と注ぐと、それを交換し乾杯しました。
そして二人は誓いを立て、その日は極上の味の酒を惜しみなく飲み干し、朝まで騒いで楽しみました。
けれど、二人が一緒に笑い合っていられたのは、その日が最後でした。
その日を境に、二人の環境は激変していきました。
一人は順調に騎士への道を歩んでいましたが、もう一人の少年は窃盗に手を染め初めてしまい、只管に堕ちていきます。窃盗は殺人に発展し、少年の名前は村内でもタブーになるほどの悪名となり、騎士への道を順調に進んでいた少年は、今まで一緒にやってきた少年がどうしてそんなことをしたのか、まるで理解できませんでした。
二人は何度もぶつかり、言葉を交わしましたが、ただの一度も分かり合うことはありません。
騎士となり人の役に立ちたい少年と、外道に堕ちた少年とでは、分かり合えないのは道理。そうして二人の道は正反対のまま進み、やがて片方の少年は騎士となり、もう一人は村の近辺に居を構える山賊になりました。
少年――騎士は村に戻り村人を守りながら少年――山賊を何度も村から追い払いました。ライバルのような両者の関係により、騎士は名を上げ、山賊もまた名を上げ、国にその名を知られていきます。
ですが山賊の規模が年々大きくなり、騎士一人では到底駆逐することができず、また山賊がその村しか襲わない為に、国から軍が派遣されることもなく、村は国に自浄することを課されてしまいました。
結果、村人で編製された自警団と、村に唯一となった騎士の手によって、山賊との長い戦いが始まったのです。
そしてそれは今尚続き、嘗て誓いを立てた少年達は対立し、終わりの見えない殺し合いを続けているのでした。
いたわしや、いたわしや。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
私たちの離婚幸福論
桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる