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プロローグ
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しおりを挟むまた今日も夢を見た。昨日と同じ夢だ。
でも、今回の夢は少し違っていた。時がたっていたんだ。
赤ん坊だった子は僕と同じ8歳くらいの子供成長して、男は20歳くらいの大人の男になっていた。
「お兄ちゃん!おかえりなさい!」
男が家に帰ると、その子供が手を広げて男に走り寄ってきた。
「ただいまぁぁぁ!体調はどう?元気になったの!?怖いことなかった?欲しいものある?会いたかった、愛してるよ」
「うぅ、苦しいよお兄ちゃん」
抱きしめた子供の体は小さくて、男は慌てて腕を離した。
「ごめん、ごめんね大丈夫!?」
頬に手を優しく添えながら、上から下を確認して子供に異変がないかを確認する。
「玄関で何やってるのー。寒いから早く入りなさい」
「はっ、そうだよな!寒いよな!ごめんね!すぐ行こう今すぐ行こう!」
男は急いで靴を脱ぎ、子供を抱き上げて早足で部屋に入って行った。
「まぁた、あんたは。少しは落ち着きなさい。ただ風邪を引いただけよ、病院にも行ったし治ったから」
「そうだよ。お兄ちゃん、もう治ったから元気だよ」
男は両腕で握り拳を作っている子供をじっとみて、頬にキスを落とした。
そのまま子供を膝に乗せたままソファーに座る。
小さなおでこに手のひらを乗せて「うん、熱はないみたい」と確認した後やっと、息を吐き出した。
「過保護もいい加減にしないと由紀に嫌われちゃうわよ~」
「え、由紀はお兄ちゃんのこと嫌いになるの!?」
「ならない!ならないよ!もぅ、ママも変なこと言わないで」
涙目になった男を見て、由紀と呼ばれた子供は慌てて反論する。
「僕、お兄ちゃんのことずっとずっっっと大好きだよ!」
「わぁ、お兄ちゃんも由紀のことずっとずーーーーっと大好き!ずっっっと、俺が守ってやるからな!」
「はいはい、分かったから、あんたは彼女の1人や2人作ってきなさいよ。せっかく顔だけは綺麗に産んであげたのに、もったいない」
「由紀との時間が減るから無理」
「ブラコンもほどほどにしなさい」
弟が大好きだと言う感情とともに、男の過去が僕に流れ込んでくる。
「由紀、由紀!!しっかりしろ!由紀!」
赤い顔をして苦しんでいる由紀が、大勢の大人に囲まれて運ばれていく。
その中で男は由紀に声をかけ続けていた。
「大丈夫だぞ、由紀。お兄ちゃんがずっとそばにいるから。元気になったら、またお絵描きしような。絵本もたくさん読んであげる。だから、頑張れ。頑張るんだ。由紀」
「ここから先は」と青い服を着た人に止められて、男はゆっくりと足を止める。
由紀が運ばれた部屋の扉が閉まるとその上で、手術中と言う赤いランプがついた。
男はフラフラと、そばにある椅子に座り。父親と母親もその隣の椅子へ腰をかける。
由紀は体が弱かった。
こんな風に運ばれるのはこれが初めてじゃなかった。
「神様、お願いします。何でもします、弟を助けてください。僕の命の代わりに、弟を助けてくれるなら喜んで差し出します。どうか、どうか、俺の弟を由紀を助けて……」
由紀の体調は5歳になるまで安定せず、生死を彷徨う場面が何度かあったようだ。
その度、男は握り合わせた手が真っ白になるまで、何度も何度も神に願った。
医者も言った、奇跡だと。
弟が生還するたび、奇跡だと。良かったと。
そうして、医者から「もう大丈夫でしょう」と言われた時、男は膝を崩して咽び泣いた。
喜び泣く3人の前で、由紀はただ笑っていた。
それぞれに抱きしめられ喜んでいた。
彼の記憶の全てが僕に流れ込んでくる。
君は由紀とずっと一緒にいたかったんだね。守ってあげたかったんだね。
弟が幸せに微笑む姿をもっともっと見たかったよね。
でも、君は……君は見届けることができなかった。
由紀が8歳、祈と同い年の時に、君は交通事故で亡くなった。
離れたくなかった。そうだよね。
もっと遊んであげたかったし、勉強だって教えてあげたかった。由紀の恋人に嫉妬したり、由紀をよろしくお願いしますとか、そう言うセリフ言ってみたかった。由紀の悩みを一緒に悩んであげたかったし、優しい由紀が怒りをぶつけられる場所でありたかったよね。
ずっとずっと味方でいたかったよね。
君の名前は、羽琉(はる)。君は僕だったんだ。前世の僕だったんだ。
君は弟を大事にしない僕に怒って、夢にまで現れたの?
それなら、君の勝ちだよ。
君の記憶を思い出して、僕はもう祈が愛しくてたまらないんだから。
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