妖精巫女と海の国

もも野はち助

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47.姉が守りたかったもの

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「珍しいですね。姉妹喧嘩をなさっているなんて」

 そう口にしたオルクティスは、何故かいつものような穏やかさが感じられない。
 一応、笑みは浮かべてはいるが、どこか皮肉る様な意地の悪い雰囲気をまとっている。

「オルク……いつからそこにいたの?」
「いつからかな? でも……ユリアエール嬢が僕らの婚約解消を望んでいるという話は、しっかり耳にしたよ?」

 そう言って穏やかな笑みを向けてきたオルクティスにアズリエールは、ますます顔色を悪くした。先程のユリアエールとの会話は、どう捉えても王族であるオルクティスに対して姉の不敬罪と見なされる……。
 だが、ユリアエールの方は何故か先程よりも冷静になっていた。

「殿下がいらっしゃるとは知らず、大変無礼な事を口にしてしまい、誠に申し訳ございません……」
「こちらも立ち聞きするような形になってしまって、申し訳ない。ですが、姉妹間の問題……というには収まらない内容で揉めていらっしゃったので、つい口を挟んでしまいました」

 あくまでも口調は穏やかだが……ユリアエールに向き合った途端、オルクティスの瞳から穏やかさが消える。
 そのオルクティスの見た事もない冷たい視線にアズリエールが背筋をゾクリとさせた。
 対して姉の方は、何故か真っ直ぐにオルクティスを見据えている。

「申し訳ございません……。確かにこの内容は、オルクティス殿下にご相談させて頂くのが、道理というものですよね。では、改めましてご相談させて頂きます。先程の妹との会話をお聞きになられたのなら、お分かり頂けるかとは思いますが、わたくしは7年前のある事件により心に深い傷を受けてしまい、その傷を癒す為には妹の支えが必要なのです……」

 そこで一度言葉を切ったユリアエールは、今度は哀願するような表情でオルクティスを見上げた。

「その為、誠に申し上げにくいのですが……妹をわたくしにお返し頂けないでしょうか? もちろん、そちらの希望されている風巫女としての協力に関しては、サンライズ王家に進言し、マリンパール王家がご満足頂ける期間まで、わたくしと妹が共に無償で提供させて頂きます」
「ユリー!!」

 アズリエールにはもちろん、自国のサンライズ王家にすら相談していない状態で、勝手に婚約解消への賠償案を提案し出した姉にアズリエールが焦り出す。
 だが、姉は本気の様で、いつものおっとりした雰囲気を消し去り、射貫くようにオルクティスを見据え、対等な立場で交渉しようとしている。
 今まで内向的な部分しか見せて来なかった姉のその様子に一瞬だけ、オルクティスが目を見張る。
 だが、すぐに柔和な笑みを浮かべ直した。

「なるほど……。先程もその件で妹君を説得されてましたね。ですが……それはあくまでもユリアエール嬢のご要望のみで提案されているように思えるのですが、そこには妹君の意志は尊重されていらっしゃいますか?」
「今はまだ妹の方では、心の整理が出来ていない様で……。妹にとってこちらで過ごした期間は、大変有意義で楽しい時間だった為、なかなか承諾をして貰えない状態です。ですがこの7年間、妹はずっとわたくしの心の傷を癒す為に尽力してくれていたので、すぐに気持ちを切り替えてくれると思います」
「妹君はこちらに来てからも姉であるあなたを気遣い、とても大切にされていますからね」
「ええ。とても優しい子なので……」

 ふわりと微笑む姉に対して、オルクティスが一瞬だけ片眉を動かす。
 だがすぐに取り繕ったような笑みを浮かべ直した。

「ですが、先程されていた会話では、どうも7年前の事件を理由に強制的に妹君に私との婚約解消を迫っていた様に聞こえたのですが?」
「確かに……殿下がおっしゃる通り、先程は例の事件を理由に妹を脅す様な口ぶりで、婚約解消をお願いするような言い方をしてしまいました……。ですが、今のわたくしの心の安定には、妹の支えが必要不可欠なのです。妹が殿下と婚約を交わすお話を頂いた際、わたくしは父にその事で相談をしたのですが、聞き入れて頂けず、そのまま妹がこちらに発ってから、わたくしは体調を崩す事が増えてしまって……」
「ちょうどその時に母が、あなたをこちらにお招きしたと……」
「ええ! お陰で妹と再会出来た事で、すぐに体調も回復しまして。やはり隣に妹がいると安心感からか、7年前の忌まわしい記憶がかなり薄れるようです。姉としては大変情けない限りでございますが……それでも次期エアリズム家の風巫女を絶やさず継続させる事が出来るのは、長女であるわたくししかおりません。ですから、妹にはどうしても、そのわたくしを支えて貰いたいのです。ですので……」

 そこでユリアエールは、懇願するようにオルクティスを見つめる。

「妹をわたくしにお返し頂けないでしょうか……」

 あくまでも引かない姿勢を貫く姉にアズリエールが焦り出す。だが、懇願されたオルクティスの方は、やけに落ち着いた様子で小さく息を吐いた。

「申し訳ないのですが……そのご要望は受けかねますね」
「何故……でしょうか? そもそも殿下との婚約は、妹の風巫女の力を婚約者特権で派遣費用を免除される為に交わされたのですよね? でしたら、婚約を解消して頂いた方が無償で……しかも二人の風巫女をこちらにご提供出来るので、その方が出費が抑えられるかと思うのですが……」
「確かに当初の目的としては、妹君との婚約は風巫女の力を無償でお借りする為に交わしたものになります。ですが、現状では彼女が私の伴侶になって頂く事の方がメリットが多い為、特に風巫女の力の確保には拘っていないのですよ」

 そのオルクティスの言い分にアズリエールは首を傾げ、ユリアエールは顔を強張らせた。その様子にオルクティスが、満足そうな笑みを浮かべる。
 そんなオルクティスに姉が警戒心を深める。

「殿下……それはどういう事でしょうか?」
「我々マリンパール王家としては妹君には風巫女としてではなく、後に私が臣籍降下した際にその隣で公爵夫人として振舞って頂く方が、メリットが多いと考えております」
「アズが……公爵夫人?」

 すると、何故か先程まで真っ直ぐな視線を放っていた姉の瞳が揺らぎ出す。
 今のオルクティスの話のどこで姉が動揺したのか、アズリエールには全く分からない。
 だが、オルクティスの方はすでに何かを確信しているのか、穏やかな笑みの中にどこか勝ち誇るような印象を潜ませている。
 すると、姉が恐る恐るオルクティスにある質問を投げかけた。

「それは……将来的に妹が、公爵夫人としての重大な役割を果たす事も考慮されてのご判断でしょうか……」
「ええ、もちろん」

 そのオルクティスの返答に姉が、ますます怯えるよう反応を見せた。
 だがアズリエールは、何が姉を怯えさせているのか全く見当が付かない……。

「ですが! 殿下は妹との婚約条件として巫女力を奪わないと、固くお約束してくださったと伺っております!!」

 珍しく自分以外の人間に感情的になった姉の訴えにアズリエールが、驚きから目を見開く。
 だがオルクティスの方は、先程から冷静なままだ。

「ええ。当初の風巫女としてのご協力に重点を置いていた際は、確かにその条件を守ると固くお約束致しました。ですが、現状は風巫女の力ではなく、妹君を妻として迎える事の方が将来的に考えた際、メリットが多いのです」
「風巫女の力の無償提供よりもアズを……妹を娶る方がメリットがあるとおっしゃるのですか?」
「はい」

 ハッキリと答えるオルクティスに姉の顔色が、分かりやすいくらい変わった。

「お言葉を返すようで申し訳ございませんが、風巫女の派遣費用は、かなり高額です。それ以上の価値が、将来的に巫女力を失う可能性がある妹にあるとは思えません」
「いえ? むしろ彼女には公爵夫人になって頂いた方が、我が国としてはメリットは多いですよ? 第一に今回妹君にわざわざこちらへ滞在して頂いているのは、巫女力によって入港管理を円滑にして頂く事ではなく、港内で効率よく船を誘導出来る経路を検討する為です。恐らくそちらは、2年もあればすぐに絞り込みが出来るので、彼女の風巫女の力に長期間頼る必要はありません」

 姉の反論を簡単にオルクティスが覆す。
 だが、姉は全く引かなかった。

「ですが……いくら効率の良い誘導経路を確保されても、肝心の船を素早く移動させる力が無ければ……」
「その部分も彼女が私の妻となってくれる事で生まれるメリットで解決出来ます。サンライズの巫女を娶った場合、その巫女の三親等までは通常の巫女派遣費用よりも抑えた金額で、お願い出来ますよね? すなわち、現状ではあなたと、その妹であるリエル嬢とティエル嬢が。そして将来的にはあなたのお子さんまでを通常より抑えた派遣費用で風巫女としてこちらに招く事が出来るので、その方が長い目で見た場合、出費が抑えられるのです」

 いつの間にか、アズリエールとの婚約メリットを説明するオルクティスと、逆に婚約解消を推し進めようとする姉の討論会のようになってきた状況にアズリエールだけが、一人取り残される。
 しかし、二人はそんな事にはお構い無しに更に会話を白熱させていった。

「確かに……。ですが、港内の船の誘導経路の検討は二年程で終了出来るのですよね? ならばわたくしの提案させて頂いた婚約解消の方が、そちらのお好きな期間だけ、わたくし達二人分の巫女派遣費用が一切かからない状態を維持出来るので、予算を抑えられるのではありませんか?」
「いいえ。確実に妹君を妻に迎えた方がメリットが多いです。一つは彼女が成人するまでの婚約期間中は、巫女派遣費用が免除出来る。二つ目は将来的に割り引かれた金額で風巫女を長いスパンで利用出来る。そして三つ目がポイントなのですが……対人スキルの高い彼女が私の妻となった場合、私が担当している外交面では、かなりの戦力となります。そして最後の四つ目はオマケのようなものですが……将来的に私は母の強い要望に応える事が出来る」

 そう一気に捲し立てるように姉の提案を受け入れない理由を述べたオルクティスにアズリエールが、唖然とした表情を浮かべる。流石、貿易国の外交を任されているだけあって、交渉中のメリットを割り出す考察力は見事だ。
 そんなオルクティスは、更に先程の姉の提案した内容の綻びを指摘し出す。

「ですが、ユリアエール嬢のご提案では、風巫女の無償派遣は妹君が巫女力を維持出来ている間だけ。将来的に彼女が他の男性と結婚をした場合は、巫女力を失う可能性が高まります。同じく長女であるあなたは、早々にご結婚されなければならないので、風巫女として動けるのは精々三年程度なはず。長いスパンで見た場合、お二人の風巫女の力を無償でお借り出来る期間は短くなりますよね?」
「それ、は……」

 すると、ついに姉が押し黙ってしまった。
 それを狙っていたかのようにオルクティスが、ゾクリとするような穏やかな笑みを浮かべる。

「何よりも私と妹君が夫婦となる事で、マリンパール王家の人間とサンライズ国自慢の風巫女の血を受け継ぐ存在が、将来的に誕生するかもしれない可能性は、我が国にとってかなり箔が付く魅力的な婚姻となります」

 その瞬間、オルクティスの言葉の意味を悟ったアズリエールは、顔を真っ赤にした。しかし、姉のユリアエールの方は、何故かこの世の終わりのような表情で、真っ青になっている。その異常な様子に気付いたアズリエールが、すぐに怪訝な表情を浮かべた。

「ユリー……?」

 様子がおかしい姉にアズリエールが声をかける。
 しかし、それを遮るようにオルクティスが更に言葉を続けた。

「あなたが将来的に継がれるエアリズム家にとっても隣国の王族との血縁者が生まれる事は、喜ばしい事になるのではありませんか?」

 アズリエールにとっては、赤面してしまうような冗談にもとれる内容を何故かオルクティスは、姉を追い詰めるような雰囲気で口にする。
 対して姉の方も冗談とは受け取らず、ますます顔色を悪くしていった。
 そのよく分からない緊張感漂う状況を全く呑み込めないアズリエールは、一人だけ呆然としてしまう。
 すると、その様子に気付いたオルクティスが、アズリエールに困ったような笑みを向けてきた。

「アズリル、君は婚約を妨害されてた理由が、7年前の事件で姉君が君の事を許せないからだと思っているよね?」
「う、うん……」
「それは違うよ」
「え……?」

 オルクティスの言葉の意味が未だに理解出来ないアズリエールは、更に呆然とした表情でオルクティスを見つめ返す。
 するとオルクティスが、くしゃりと困り顔を作りながら更に笑みを深めた。

「ユリアエール嬢は、君の幸せを妬んで婚約を妨害していた訳じゃない。君が自分と同じような恐ろしい体験をしないように……君を守る為に婚約を妨害していたんだ」
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