9 / 271
第2章 始まりは手探りで
2.イタズラ心
しおりを挟む
「ふぁ~。よく寝た!おはよー。って何これ」
「おはよ。これは盗賊だな」
私が目を覚まして寝袋から出て見たものは、結界の外の木に両手を縛り付けられた5人の男達で、ひと目で盗賊と分かるような風貌をしている。
全員気絶しているらしく、木の下に座り込んでいる身体はダラリと弛緩している。
「と、盗賊なのは分かるけど…。これ夜中に襲ってきたの?」
「そう」
「えー?!全然気付かなかった」
「奴らも寝入ってると思って静かに近付いてきたからな。そこを不意打ちで仕留めたから音も最小限だったはずだ。
護衛として合格もらえますか?ご主人様?」
何だか嫌味っぽく言われたが、からかうような顔をしているから別に不機嫌ではないらしい。
「うむ。合格点をあげよう。んで?この盗賊達どうするの?」
「一応主人の意見を聞くのがいいと思って、とりあえず木にくくりつけておいたんだが」
「そうね。じゃあ街の衛兵に引き渡しましょう」
「引き渡すってこいつら全員か?俺でも男5人は引きずって行くのは無理だぞ」
「大丈夫。自分たちで出頭してもらうから。見てて」
私は気を失っている盗賊の一人を揺さぶって、少々手荒な感じで目を覚まさせた。
「おーい、起きて!起きてー!!」
「んあ?あ!お前っ!」
「はいはい、暴れないで。悪いようにはしないからさ」
私はルクトに向かって何か言おうとした盗賊の額に指を当てて、呪文を口ずさんだ。
「あなたは、ここから一番近い町の衛兵に会いに行きたくて堪らない。
衛兵に会ったら、『俺は盗賊団の一人です、貴方のようなまっとうな人間になりたくてここまで来ました。俺を逮捕してください。俺は貴方に一目惚れしたんです。うふふ』と熱っぽく語りたくなる……はい!」
指を外すと盗賊はぼんやりとした顔になり、私が教えた言葉を延々と口ずさみ始めた。
それと同じことを残り4人の盗賊にも行えば、準備完了だ。
「これで大丈夫だよ。ルクト、この人達の縄を外してくれる?」
「あ、あぁ…」
呆気にとられていたルクトだったが、彼が縄を外すと盗賊たちは駆け足で町の方向へと向かって行った。
男達の後姿を見送ったルクトが、驚いた顔をして私に話しかけてきた。
「なんだあれ。強制催眠か?」
「そう」
強制催眠というのは、文字通り催眠術に強制的にかける白魔法の1つで、暴れる人を大人しくさせる場面でよく用いられる術だ。
解除のやり方は白魔法の授業で最初に習うから、白魔法の授業をちゃんとやっていた人ならば簡単に出来る。
「なんであんな気持ち悪いセリフを言わせたんだ?」
「だって面白いじゃない。こうやってからかうのって結構楽しくて。
あ、でも人の迷惑になるようなことはしないから安心して」
「あんた…随分な趣味してんだな」
「あんたじゃない、シェニカよ。
黒魔法がろくに使えないんだから、こういう白魔法で一矢報いた気になってるの」
「でも、あいつらだって、催眠封じの護符とか持ってるはずたろ?」
「普通はそれで対処出来るんだけど、術者の白魔法の適性の高さとか条件が揃うと、ああやって関係なくかけられるんだ。呪いと一緒で、術者の能力が高いと護符が効かなくなるの」
呪いは嫌がらせ程度のものなら護符があれば防げる。
でも、ルクトにかけられていたような、黒魔法の適性が高い人による高レベルの呪いになると、護符の有無に関わらず呪いを受けてしまう。
それと同じで、白魔法の適性がそんなに高くない人がかける強制催眠は、護符を持っていれば防げる。
でも、白魔法に適性の高い私がかける強制催眠は、護符の影響を受けずに術をかけることが出来る。
呪いと強制催眠の違いは、適性の高さに影響されるかどうかだ。
呪いは対象者の黒魔法や白魔法の適性に関係なく、誰にでもかけられる。
一方、強制催眠は術者が対象者の白魔法の適性より低いと、術をかけることが出来ない。
だから白魔法の適性が高い『白い渡り鳥』は、基本的に誰にでも強制催眠をかけられるし、強制催眠が効かない。
「そうなのか。初めて知ったよ」
ルクトに呪いとの違いなどを教えてあげると、地面に置いたままだった荷物を背負った。
「普通は護符があれば大丈夫だよ。護符に関係なくかけられるとしたら『白い渡り鳥』くらいだから。私がルクトにかけるつもりもないし」
「言うこと聞かせたきゃ押さえ込めばいいもんな」
ルクトは肩を竦めて悔しそうな顔をしたのを見て、私は思わずプッと吹き出して笑った。
そして私たちは盗賊達が向かった方向へと歩み始めた。
「おはよ。これは盗賊だな」
私が目を覚まして寝袋から出て見たものは、結界の外の木に両手を縛り付けられた5人の男達で、ひと目で盗賊と分かるような風貌をしている。
全員気絶しているらしく、木の下に座り込んでいる身体はダラリと弛緩している。
「と、盗賊なのは分かるけど…。これ夜中に襲ってきたの?」
「そう」
「えー?!全然気付かなかった」
「奴らも寝入ってると思って静かに近付いてきたからな。そこを不意打ちで仕留めたから音も最小限だったはずだ。
護衛として合格もらえますか?ご主人様?」
何だか嫌味っぽく言われたが、からかうような顔をしているから別に不機嫌ではないらしい。
「うむ。合格点をあげよう。んで?この盗賊達どうするの?」
「一応主人の意見を聞くのがいいと思って、とりあえず木にくくりつけておいたんだが」
「そうね。じゃあ街の衛兵に引き渡しましょう」
「引き渡すってこいつら全員か?俺でも男5人は引きずって行くのは無理だぞ」
「大丈夫。自分たちで出頭してもらうから。見てて」
私は気を失っている盗賊の一人を揺さぶって、少々手荒な感じで目を覚まさせた。
「おーい、起きて!起きてー!!」
「んあ?あ!お前っ!」
「はいはい、暴れないで。悪いようにはしないからさ」
私はルクトに向かって何か言おうとした盗賊の額に指を当てて、呪文を口ずさんだ。
「あなたは、ここから一番近い町の衛兵に会いに行きたくて堪らない。
衛兵に会ったら、『俺は盗賊団の一人です、貴方のようなまっとうな人間になりたくてここまで来ました。俺を逮捕してください。俺は貴方に一目惚れしたんです。うふふ』と熱っぽく語りたくなる……はい!」
指を外すと盗賊はぼんやりとした顔になり、私が教えた言葉を延々と口ずさみ始めた。
それと同じことを残り4人の盗賊にも行えば、準備完了だ。
「これで大丈夫だよ。ルクト、この人達の縄を外してくれる?」
「あ、あぁ…」
呆気にとられていたルクトだったが、彼が縄を外すと盗賊たちは駆け足で町の方向へと向かって行った。
男達の後姿を見送ったルクトが、驚いた顔をして私に話しかけてきた。
「なんだあれ。強制催眠か?」
「そう」
強制催眠というのは、文字通り催眠術に強制的にかける白魔法の1つで、暴れる人を大人しくさせる場面でよく用いられる術だ。
解除のやり方は白魔法の授業で最初に習うから、白魔法の授業をちゃんとやっていた人ならば簡単に出来る。
「なんであんな気持ち悪いセリフを言わせたんだ?」
「だって面白いじゃない。こうやってからかうのって結構楽しくて。
あ、でも人の迷惑になるようなことはしないから安心して」
「あんた…随分な趣味してんだな」
「あんたじゃない、シェニカよ。
黒魔法がろくに使えないんだから、こういう白魔法で一矢報いた気になってるの」
「でも、あいつらだって、催眠封じの護符とか持ってるはずたろ?」
「普通はそれで対処出来るんだけど、術者の白魔法の適性の高さとか条件が揃うと、ああやって関係なくかけられるんだ。呪いと一緒で、術者の能力が高いと護符が効かなくなるの」
呪いは嫌がらせ程度のものなら護符があれば防げる。
でも、ルクトにかけられていたような、黒魔法の適性が高い人による高レベルの呪いになると、護符の有無に関わらず呪いを受けてしまう。
それと同じで、白魔法の適性がそんなに高くない人がかける強制催眠は、護符を持っていれば防げる。
でも、白魔法に適性の高い私がかける強制催眠は、護符の影響を受けずに術をかけることが出来る。
呪いと強制催眠の違いは、適性の高さに影響されるかどうかだ。
呪いは対象者の黒魔法や白魔法の適性に関係なく、誰にでもかけられる。
一方、強制催眠は術者が対象者の白魔法の適性より低いと、術をかけることが出来ない。
だから白魔法の適性が高い『白い渡り鳥』は、基本的に誰にでも強制催眠をかけられるし、強制催眠が効かない。
「そうなのか。初めて知ったよ」
ルクトに呪いとの違いなどを教えてあげると、地面に置いたままだった荷物を背負った。
「普通は護符があれば大丈夫だよ。護符に関係なくかけられるとしたら『白い渡り鳥』くらいだから。私がルクトにかけるつもりもないし」
「言うこと聞かせたきゃ押さえ込めばいいもんな」
ルクトは肩を竦めて悔しそうな顔をしたのを見て、私は思わずプッと吹き出して笑った。
そして私たちは盗賊達が向かった方向へと歩み始めた。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる