天使な狼、悪魔な羊

駿馬

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第20章 渦紋を描く

13.副官達の訴え

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■■■前書き■■■
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更新大変お待たせ致しました。m(_ _)m
今回はディスコーニ視点でのお話です。
■■■■■■■■■

空に茜色の気配が漂う頃、フェアニーブまであと街を3つ経由すれば到着できる、スーラン領の地方都市ドシェまでやってきた。馬を降り、このあとはシェニカと一緒に過ごすと、ファズに伝えに行こうとしたら、バルジアラ様に肩を掴まれた。

「お前、このあとの会議には必ず出席しろよ」

「決定事項を後で聞く形では足りませんか? 私がいなくても大丈夫だと思いますが」

「お前なぁ。あんまりベッタリしてると飽きられるぞ。適度に距離を変える駆け引きも時には必要なんだよ」

「今は一緒にいることが多くても、その時間は限られているので、そんなことをする必要はないと思いますが」

「フェアニーブに来ている連中は、どいつもこいつもお前より容姿が良い奴ばっかりなんだぞ。今はお前が一番気に入られていても、目移りされてもしょうがない状況なんだ。番犬のごとく張り付くだけじゃなく、捨てられないように少しは駆け引きしろよ」

「そのような駆け引きなどしたことはありませんので、具体的にどのようにすれば良いのか教えてください」

「それは自分で考えろ」

「バルジアラ様は恋愛初心者の私にありがたい助言を与えてやると言ったのに、今まで有益な助言を頂けておりません。今まで貴方様に散々揶揄われてきましたが、バルジアラ様も童貞だからこそ、これまで具体的な助言が出来ていないのではないですか?」

「はぁ?そんなわけないだろ。俺が助言をすると、お前がすぐ退役したいとか言い出しそうだから言わないんだよ。エニアス!お前が教えてやれ」

エニアスは自分に話が振られるとはまったく思っていなかったようで、驚いた顔をしたのだが、すぐに暗い空気を背負って俯いた。

「駆け引きなんてしなくて良いと思います。会える時に会って、感謝や労わる言葉とか、ありのままの気持ちを素直に伝えておけば良いと思います。日頃から良い関係を築き上げておけば、きっと…」

「とりあえずだな」

『しまった』という顔をしたバルジアラ様は話題を変えようとしたのだが、エニアスはキッ!とバルジアラ様を睨みつけた。


「バルジアラ様が人の恋愛を邪魔するようなマネをしているのは、僻みなのでしょうか」

「俺が僻むわけねぇだろ。こいつは少々浮かれ過ぎて」
「私の時には許されても、ディスコーニ様の邪魔をするようなマネは陛下がお許しになりませんよ」

「俺はお前の邪魔なんかして」
「私がフラれてしまったのは、私自身にも原因があると思いますが、急な残業が何度も入り、彼女との約束が守れなかったことも大きな原因です。これは、バルジアラ様のせいだと言っても良いと思います。
そもそも。平時の場合はちゃんと定時を守るべきですし、休日もちゃんと自由を与えて下さい。残業が必要な場合もありますが、バルジアラ様がちゃんと期日を守ってくれれば問題ないことが多いのです。
独身者には良縁が恵まれて家庭を持てるように、既婚者は円満な家庭が築けるように、ちゃんと定時帰宅、休日の自由を約束してください」

「忙しいんだから仕方な」
「ディスコーニ様の部隊は、バルジアラ様の部隊と同じくらいの忙しさなのに、残業があっても許容できる範囲の時間ですし、休日や連休もきちんと取れています。ディスコーニ様がバルジアラ様の仕事をしているせいで、直接指導の時間は少なくなっていますが、その分、自主鍛錬の時間に見て頂いています。バルジアラ様もそのようにしてはいかがでしょうか」

「でもファズ達には相手が出来てないだろ」
「それはディスコーニ様の分まで時間外に部下達を指導しているからです。バルジアラ様がディスコーニ様に仕事を押し付けるせいで、ファズ達にまで影響が出ています。いい加減、自分の仕事は自分でして、ちゃんと働く時間を守って頂けないでしょうか」

エニアスの言葉に呼応するように、周囲に集まってきたバルジアラ様と自分の副官達がウンウンと頷いた。部下達にも影響が出ないようにと、バルジアラ様の仕事を手伝っていた部分もあったが、どうやら色々と迷惑をかけていたようだ。


「お、俺には俺のやり方っていうものが」
「私たちが楽しみにしている休日も、バルジアラ様から『鍛錬に付き合え』と言われて半日潰れてしまっています。ちゃんと休日は自分の自由に出来る1日であることを保証して下さい」

「わかった、わかった。お前は今疲れているんだ。帰国したら失恋休暇をやるから、とりあえず」
「失恋休暇も必要ですが、婚活休暇、デート休暇、結婚打ち合わせ休暇、ハネムーン休暇、出産直前休暇、育児休暇、家族団欒休暇なども作って下さい!」

「お前、そんな休暇ばっかり!俺だって休みが欲しいんだよ!」
「じゃあバルジアラ様もお付き合いしてくれる人を作れば良いじゃないですか!」

「そんなこと言ったって」
「バルジアラ様にもしも良い人が出来たら!自分の時みたいに、ドタキャン続きになってフラれれば良いんだ!」

バルジアラ様への不満が相当溜まっていたのか、エニアスはそう言うと、近くにいた馬の首に抱きついて動かなくなってしまった。馬は急に抱きつかれて驚いた様子だったものの、エニアスの尋常ならざる様子が気になるのか、心配そうな目をして小さく鼻を鳴らしている。
そんなエニアスの必死の訴えに突き動かされたのか、自分と上官の副官達全員がバルジアラ様の周囲を取り囲んだ。

「エニアスの言ったことは我々の総意でもあります。残業なしの日を作って下さい」
「休日は自由に過ごしたいです」
「彼女欲しいです」
「未来の奥さんを探しに行かせて下さい」
「ニドニアーゼルと休日を合わせて一緒に釣りに行きたいです」
「ディスコーニ様にシェニカ様と過ごす時間を与えて下さい」
「そんな風にしていると、いつかしっぺ返しが来ますよ、というディスコーニ様の助言が現実になってしまいます」
「バルジアラ様の恋愛も応援したいです」
「ディスコーニ様とシェニカ様の関係が上手くいくよう、ご配慮をお願い致します」

バルジアラ様は一言ずつ発言する部下達に反論したい様子であったものの、少し離れた場所でシェニカ達がひそひそ話しながら様子を窺っていたため、黙って聞き続けたようだ。従順な彼らの訴えということと、体裁の悪さもあって、バルジアラ様はバツの悪そうな表情で自分を見た。


「と、とりあえず。尋問に向けて綿密な打ち合わせが必要だ。毎日の会議には出席するように。これは命令だ。
あと。ユーリを貸せ」

バルジアラ様にユーリを預けると、上官は「エニアスの機嫌を直してくれ。頼んだぞ」と木の実を渡しながら小声で頼んでいた。ユーリはエニアスの肩に乗せられると、すりすりと頬擦りして慰めていたが、エニアスの表情は憔悴したままだった。
彼の失恋の傷が癒えていないのは非常に可哀想だが、彼の助言を生かし、自分もシェニカに捨てられないようにしなければ。

■■■後書き■■■
今後、スムーズに更新できるか分からないのですが、気長にお待ち頂けましたら幸いです。m(_ _)m
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