放課後はダンジョンに行って憂さ晴らしのつもりがいつの間にか学園最強になってたことに気が付かなかった

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第九十九話 クドノワール

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クドノワールはいつものように北から来る客達を相手にくどくど注意をしていた。
北からの客どもの多くはこうなのだ。
我儘。
お前らの国とは違うんだと言っても、ピンとこないらしい。
だから、言われるのが嫌で、そういう我儘をしなくなるまで言う。
多分、俺がいないとこではやってるんだろうけど、そんでも、一箇所ででもしなくなれば見込みがあるってもんだ。

単独でしかもかなりのベテラン、そう見える奴等は、賢いのだろう、俺の一言でだいたいわかってくれる、”ここはそういうところなのだ”と。

ここはゴンザール・ゴーミ国境、ゴンザール側の国境から少し南に行った、国境最初の町。
国境から一時期人が来なくなったときがある。向こう側は緊張していたようだ、こっち側に攻め込む、と。
俺達はどうしていいかわからなかった。多くの者達は逃げ出す準備だけはしていた。
が、
いきなり国境の向こうに、山よりでかいドラゴンが現れて、飛んで行った。後から訊くとゴーミ王都をひと踏みで潰したと。
そして、また戻ってきたと思ったら、向こう側でドスン!となんかを踏み潰した音を立てたと思ったら、飛んで行ってしまった。
これも後から聞いたことだが、ゴンザールへ侵攻するための砦があり、それをひとふみでつぶしたらしい。2万人はいたんじゃないか?との噂だった。

それからまた人がこっちに入り始めたが、碌でもない者達も増えていた。国境の兵士たちはクズは追っ払っていたが、大量に押し寄せていた。
ほどなく、またまたあのドラゴン、、でも大きさが幾分小さいように見えたがそれでも山だ。ずーっと向こうにいるのに、そのデカさで恐怖するほどだ。それが指先で国境を掘っていった。でっかい谷ができた。橋も掛けない。国境は閉じられたわけだ。
俺らの宿は、仕事がなくなった。
が、

少し前から、南の、森から荒れ地に抜ける街道が新しくなり、荒れ地に街が出来、他国への通路が開通したという。
もうここに居ても仕方がないので、持てるものだけ持って、移ることにした。
元々冒険者だったんだ、そう物に執着はない。
残ったものは、今まで仲良かった近隣の者達に分けてきた。

南へ、王都への駅馬車も本数が少なくなっていた。
多くの馬車が南の森の向こう側に向かったとのことだ。
こっちは、王都などへ入れる農作物や酪農品を作る農家などが残るだけだろう。
あとは、海辺の漁師達。

街道は主街道なので整っている。2日で王都に着く。そこで一泊し、翌早朝の馬車で森の街に向かう。
・・・通常2泊なはずなのだが、、街道が以前より広くなりとても道が良くなり、、1泊で着いてしまった。いつのまに、そうなっていたのだろう?そう言えば、何年も街を出ていなかった。

森の入り口は以前より少し南寄りになり、以前の入り口を通り過ぎてほどなく、でかい街道の入り口になる。
それは、何かが掘ったのか、というほど綺麗に浅い谷間になり、まっすぐに、、ずっと向こうの先に荒れ地が見える気がするほど真っ直ぐに通っていた。

途中の泊まった宿で聞くと、デカイドラゴンのブレスでできた街道だという。ここでもまた。あのドラゴンだろう。
その宿の親父も詳しくは知らないようだが、同盟国の王だとかいう話もある、とのことだ。
やっと、ゴンザールに同盟国ができたのか、、。
でも
「荒れ地のずっと向こうの国」だそうだ。
意味あるのか?

森の中の街に2-3日滞在したが、ここではない、とわかった。とにかく荒地の砦まで行ってみるのがいいだろうと。
いろいろ聞いても、なんか埒が明かなかったのだ。

馬車に乗ったが、この新街道を通る馬車は速い。道が広く、とても良いので飛ばしても危険じゃないのだ。
普段なら2泊程度なのだろうが、、夜が明ける前の馬車だったので、夜遅くなったが、当日中に着いてしまった。
砦は、外にも宿などができていた。
そこに泊まる。

宿の亭主は北西のダンジョンから来たという。意味がわからなかったが、ここら一体の取り仕切り役をやっているんだ、それだけの能力があり、人望もあるものなのだろう。ここの領主が選ぶのはそういう者だ。
亭主は、荒地のダンジョンの船に乗り、北の森の街、中間の街、もしくは終点のダンジョン側の街に行くといい、と言っていた。
新しく興っている街だ。特に中間の街と北の森の街は冒険者の街で、それ相手の宿はまだ足りていないとのこと。
建物はドラゴニアの者達とゴンザールの職人たちの組がさっと立ててくれるだろう、資金もさほど心配するほどでもない、と言った。船とかみんなわけわからなかったが、「行けばわかる」と。
宿の亭主は一通の手形をくれた。「コレがあれば、北の森の街、中間の街、ダンジョン側の街、に入れます」と。
思った以上に大物なようだ、この亭主。

北の森の街の方が新しいというので、そっちに行く。

ーー

「・・・まぁ、、、すげーな?」

まだ小さい街だ。広く開拓はされている。が、建物がまだ少ないので街はまだ小さい。
ギルドは、俺が居た街のとは違う。ゴンザールとドラゴニアで運営しているギルトだという。
手数料がやすいので、冒険者たちがゆとりを持てているとのことだ。

とりあえずギルドで手形を見せて、話を聞かせてもらう。
宿をやりたい、と言うと、職員の一人が「街に出ましょう」と連れて行かれ、空いているところならどこでもいい、と言われ、、なるべく森に近く、街の中心にも遠くない場所を希望した。
部屋数は50くらいでいいか?と言われたので、以前は20だった、というと、、ここの街にはまだ部屋が少ないのでなるべく多めにしてもらいたい、と言われ、使用人も用意できますから、とまで言われたので、50にした。
5日ほどでできます。と職員。
????一ヶ月と5日?半端だな?
「いえ、5日です。いつか、です。」職員

「・・・からかっているのか?」クドノワール
「いえ、ここではそれがふつーです。ここのフツーというのも、少しずつ知っていってくださいね」職員
カネは、というと、いくら持っているのか聞かれた。全額を言うと、
「・・・運営費にも少し足りないくらいですね、、、最初の一ヶ月の食材はうちから援助します。」

「使用人達は厨房2人、雑用1人でいいですか?」職員
「いいけど、、そこまで稼げるのか?」
「大丈夫ですよ。宿は足りないので。わからないことがあれば、使用人達に聞いてください」

まったくわけわからねぇ、、
「あ、そうそう、その手形、大切にしてくださいね。」職員
・・・そういうこと、なのか?あの亭主、、、

ーー

「だんなぁ!!だんなああああ!!!」雑用係の男子。
「あ、朝からなんか魚取りに行く、とか言って釣竿持って出ていったよ」厨房の女子
「またかよ、、、」

ドラゴニアから来た子達3人に任せきりで、自分は暇を見つけちゃ魚釣り、森に狩り、と出歩いている。
森の狩りの時は、雑用掛かりの男子と一緒に行く。危険だから。もちろんドラゴニアの子のほうが護衛代わりだ。

女の子達はテイナ・ニヤ組卒業生だ。厨房・食材調達・魔法はかなりいける。男子含め3人で宿一つを客ごと守ることなど容易だろう。

宿は街の中心から森の入り口への道の、森の入り口に寄った方にある。
ギルドも同じ並びの街の中心方向にある。風呂屋もそう遠くもない。
喧騒から少し離れているので、静かにのんびり過ごしたい者には良いらしく、長期滞在の者ばかりになっている。

中には昔の顔見知りも居たらしく、たまに一階の食堂で一緒に飲んでいる。

「あのクドクド言っていたおっさんが、ここまで丸くなるとは、、」冒険者
「おめーらが我儘すぎたんだろーが、普通程度な奴には何も言ってないんだからな、俺は」
「ああ、まぁ、、今からすりゃ、そうだよな、、何も知らなかったからなぁ、、、悪かったなぁ、、いや、でも、後から、そ~言えばあーいわれたことあったっけなぁ、、とか、思い返すこと、度々あったんだよ、、」

「一応覚えていてくれたんか」
「くどくどくどくど忘れられないよーに染み付けたのは誰だよ」
あっはっはっはっは!!

クドノワールは、3人の使用人達に文句つけたり叱ったりしたことは無い。必要なかったから。
彼らは最初からよくやってくれていた。人間だ、間違えることはある。本人が気づいている場合、それを叱る必要はない。なので何も言う必要はなかった。だから、安心して任せて、自分は念願の自由に好きなことをする時間を結構多く手に入れている。

ここに、この街に「税」というものは無かった。
ただ、祭りの時に寄付とか、街の資金が不足気味のときに寄付とか募られる。その時に会計掛かりの女の子が「このくらいなら余裕出そうです」と額を示してくる。それを容認するだけだ。その額はどうみても妥当な額だった。

儲けも出、そこそこ貯金もできると、そこから1割とか、ドラゴニア孤児院の院長が運営する基金に寄付する。
病気や怪我の者達の費用・生活費、新参者達への資金、などに使われたりしているようだ。
同盟各国内では、似たようなものができはじめ、自国内は国王や領主を始め、自分達で面倒をみられるようにする、となってきてるようだ、ここのように。

王が居るけど貴族が居ない。いろいろ妙な国だが悪くはないどころか、どんな人間の国よりもマシだろう。ドラゴンの国だ、人間とは違うんだろう。と思うだけのクドノワールだった。
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