244 / 383
下−169 冒険者たち
しおりを挟む魔物の森の宿
できてからそこそこの年月が経っている。
最初の頃はこの森も、中堅でもベテラン寄り以上のパーティでなければ危険と言われていた。
なので、あまり来る冒険者はいなかった。
けど、そこそこ良い肉や毛皮が取れるんで、一度入ってそれなりに狩れれば、結構な収入になっていた。
で、イサムがこの世界に召喚されてここに住み着くために宿を作ったら、それは冒険者には超便利な宿になった。
ここに滞在し、森に入る冒険者が増え、狩り放題されたので魔獣が少なくなってきたから、イサムは手下の魔人メフィの指導の元、ダンジョンを作った。
大当たりだった。
浅い層では訓練を受けた新人程度なら問題なく成果をあげ、生きて帰ってこられる。
しかも1階層にはイサムが新たに作った超便利な宿がある。現場までの送り迎え付きである!深層まで行っても、なんどか叫んでりゃ迎えに来てくれ、翌朝同じ場所に送り届けてくれるのだ。
もちろん森の宿と同じく、獲物を預かってくれ、王都のギルドまで配送してくれるサービスもある。
他のダンジョンなんか面倒くさくっていけなくなる。
このダンジョンで稼げない者がいたら、よほど冒険者に向いていないので転職するほうが幸せに成れるだろう。
ってなくらいだ。
がらがらがらがら・・
「ただいまー」
ダンジョン地下一階の宿。入り口はなぜか引き戸だ。
なぜか、皆帰ってきた時はただいまーって言ってしまう。
「おかえりー、お疲れ様ー、飯さきですかー?風呂先ですかー?」
一階の食堂の者が訊いてくる。
このやりとりも、なんか、冒険者達にとって結構心にしみるのだ。
「お腹減ったから先に飯くださーい」
「はーい、すぐ出すから座って待っててねー」
常連たちの好みとか大盛りとかだいたい把握されているので、おなじ晩定食でもそれぞれちょいと違ったりする。
そこもなんかこそばゆい感じで嬉しい。
飯を食い終わり、
「ごちしーさまー」
「おそまつさまー」
で、冒険者は部屋に戻る。
狩った得物は、迎えに来てもらった時点で預けてあるので、さばいてから保管してくれる。ストレージ内なので問題はない。
部屋に戻った冒険者は、着替える。風呂の後は寝るか、いっぱい引っ掛けて寝るか、だけなので、寝間着だ。
この簡易服は便利だ。寝る用意のまま外に出られる。
今までそんなもの見たことなかったが、この宿に泊まると貸してくれる。長期利用者は上下の3着貰える。ある日名前書いて部屋に置かれているのだ。
その時、「ああ、俺もここの常連になったんだなぁ、、」と、感じる者も多いという。
この宿に併設してある雑貨屋には服も多い。値段も安いし。
なので、今まで着たきりすずめだった冒険者も、作業着の着替えをするようになった。
寝間着に着替えた冒険者は、今日使って血や泥にまみれた服を部屋番号の付いたカゴにいれ、着替えの下着を持って、かごを風呂場の入り口に持っていく。
風呂に行くと、入り口に畳まれた小さめのタオルが山積み。奥には風呂上がり用のデカイタオルが同じように。
その小さめのタオルを手にとって、中に入る。
中はすのこが引いてある。むわっと暑い。
壁際に棚が在り、かごが入っているので、空いているカゴをとり、自分の寝間着と新しい下着を入れ、使った下着を自分の部屋から持ってきた汚れた作業着の入っているカゴに入れ、そこの壁際に開いてあるカゴより少し大きめの窓につっこむ
「おねがいしまーっす!」
その窓の中から
「はーい、預かりましたー」と返答。
預かり証とか札とか無い。
洗濯物は翌日の夕方あたりか、翌々日には部屋に戻っている。
部屋には洗濯かごは幾つかあるのだ。
風呂から上がった冒険者は、大概その時になって、今日は飲むかどうか、を決める。
風呂上がりでその日の体調がもろわかりになる。眠たいと、かなり疲れているのだ。
そーでなきゃ、少し位飲んでも大丈夫、というわけだ。
常連は部屋にツケなので、財布もいらない。
なので、食堂には結構寝間着姿が見える。
この宿はダンジョン地下一階にある。なので外の時間はわからない。
が、
なぜか、この食堂の窓は地上の景色になっている。地上が夜になると、窓から夜空が見えるし月も出るときにはでている。
だから地上と合わせた生活をしたい短期のものなどには便利だ。
今から潜る者達もいる。今から寝る者達もいる。
おおしろいもので、大体夜か朝にそれが集まる。皆意識していないのに。
ここの常連になるようにな冒険者は大体ベテランだ。講習を一回二回は受けているくらいだ。
森の宿の方でやっている冒険者向けの講習だ。王都のギルドでもやっているが、こっちの教官のほうがいい。
超ベテラン冒険者の教官がいる。3度めになると、ほぼ確実にその教官にあたる。二度目で当たる者もいる。
確実に強く、そして安全になる。
そこまで行った者達は、ざっくばらんだ。寡黙な者達が多いが、それでも見知った顔がいると、その席に行き、一緒に飲む。余り話さないが、それでもいい。
パーティーになっていても、宿に帰ったらもう各自適当に、、というのばかりだ。
余程の者でなければ相席を拒否はされない。そして、その余程の者、は、一度来たらなぜか二度と来ないようだ。
なので、この宿はものすごく居心地が良い。皆そう思っている。
ただ、こもりっぱなしだと肌がまっちろけ、になってしまう。
そうなったら、訓練に出るか、地上の宿に移り、半月ほど森の方で狩りをするか、、と成るものは多い。
たまに、金が溜まったら「旅に出る」と、出ていく者もいる。半年、1年後くらいに帰ってくる。
で
「やっぱり、ここが一番落ち着く、、」
と。
引退した者も、少ないが、いる。
上の、森の宿は村だ。その端に新しく引退した冒険者向けの村ができている。いつの間にか。
で、畑をやる土地も使って良いらしく、言えばそれなりの区画を貰える。農作業が上手くなれば増やしてもらえるとのこと。他に栽培とか木工とかもできるらしい。商売もできるようになっているとの話だ。
安定しだした元冒険者を狙って、女性たちがその村で食堂を開いているらしい。酒を飲む店は別だという。
「もう、この村で一生おわるんじゃね?」
まぁ、、冒険者やるまで、生まれ育った村や街じゃ、そこの連中は一生そこから一度も出ずに終えるので、、それに比べりゃまだ動いた方だな、とは言えるが。
イサムの村も、いつの間にか少しづつ、大きくならざるを得ない、ということだ。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
{完結保証}規格外の最強皇子、自由に生きて無双する〜どこへ行っても、後世まで語られる偉業を残していく、常識外れの皇子〜
Saioonji
ファンタジー
母に殴られ、命を奪われた――そのはずだった。
だが目を覚ました先は、白く豪奢な王城の一室。
赤子の身体、仕えるメイド、そして“皇子”という立場。
前世では愛されず、名前すら価値を持たなかった少年が、
今度は世界の中心に生まれ落ちてしまった。
記憶を失ったふりをしながら、
静かに、冷静に、この世界を観察する皇子。
しかし彼の中には、すでに常識外れの思考と力が芽生えていた。
――これは復讐でも、救済でもない。
自由を求めただけの少年が、
やがて国を、歴史を、価値観そのものを揺るがしていく物語。
最強であることすら、彼にとってはただの前提条件だった。
重複投稿作品です
小説家になろうとカクヨムにも投稿しています。
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる