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後後156 春の新離宮
しおりを挟む冬を超え、春も終わりかけた頃
日のいずる国の離宮ができあがったそうな。
熊が、引き渡し前に見せてやる、というので泉さんとシューレと一緒に見に行った。
「あ、」俺
「おう」泉さん
「これは、農国っぽいなぁ」シューレ
シューレ、、農国にも行って居たのか、、、
洋風建築、ただし木造。
木造の伝統的洋式建築は元の世界では目にしたことがないガクと泉。
でも、農国では多かった。特に教会は、小さいけどかなり古いものも少なくなかった。
華美な装飾はなかった。が、洋風建築でも極たまにある、質素な美しさを感じさせる、、なんというか、自然な美、だった。陽の光、風のきらめき、水のせせらぎ、目に見えないようで見えるようで、、曖昧な、、美しさ、、
を、
この熊公は表現してやがった。しかも本家以上に!
俺と泉さんは、なんと言っていいのかわからず、、
「・・芸術、な、、、この大工の熊は、芸術家なのか?」
俺に問うシューレ
訊くなよー
「いや、、フツーじゃないとは思っていたが、、ここまでフツーじゃないとは思わなかった。」俺
「ふむ、、、開花したのか、、」
そーゆーもんですか?
熊は外でタバコをフカシている。迎賓館建築中から煙管を吹かすようになったらしい。
小一時間、じっくり見て回った。
「ここまで、できるもんなんだなぁ、、」泉さん
そう、そう言われるほど細部にまで目を配っている。
しかも凝り過ぎては居ない。多分、使っていって、10年20年経ち、どんどん深みが出てくるようなものだろう。
これ、作るのに1年かかってないんだぜ?
外に出た。川の辺りの東屋に熊が見えた。
3人で近づく。
「素晴らしかったぞ」シューレ
「ああ、何も言えんわ、、」泉さん
「俺も。そして、30年後くらいに、また見てみたい」俺
熊はニカッとした。
其の数日後、熊は邸を日のいずる国王に引き渡した。
ーー
で、
「なんでこうなってるのでしょうかね?王様?」俺は日のいずる国の王様に訊く。
「しかたないじゃないかー、自慢したら皆みたいって勝手に来るんだからー」王
西の大陸のドラゴニア連邦の連中、つまり日のいずる国の王様の親戚達が順番に見に来ている。
プッチーニ?王様の奥さんの父さん母さんはもう離宮に住み込んでいる。「特に食事がいい!」とか言って。
当然3食ともシューレの店に来ている。
ドラゴンだからフットワークいいからね。つまらんこだわり無いので街の食堂でも入るし。
日のいずる国王の親戚だから匂いが近いのか、ドラゴンでも獣人達が皆怖がらなかったのが助かった。
じゃないと、強さの桁違いな知性のあるドラゴン獣人だと、獣人達皆ぱにくっちゃうからね!
今回俺は全く何もしていない。が、村はこーなっちゃってる。
俺のせいじゃないじゃん、、
と、食堂でドラゴニアの王達を見ながら思っていたら
「相方だろ?おまえ」泉さん。とすかさず心を読まれてらー俺w
「・・・・・・」
そう、日のいずる国王に相方認定されている俺。
うーむ、、よし、仕方がないので認めよう!
で、昼飯後、またモフ小屋に戻りトリミング再開!
幸福なのはこの時間だ。これさえあればいいのさっつ!!
「ガクイルカー」
と入ってきたのはそんちょー。
生きていたのか、、最近みなかったからてっきりぽっくりかもとか、、
しかも今度はイルカ扱いか、、なかなかよいよな?イルカ。
「王様がお呼びだと」
ーー
一人じゃいやなんで、泉さんを連れてきた。
王都はほら、農国から出店してきた食い物屋があるから!
で、領主様が転移門使っていいよ、っていうので使わせてもらった。
ワクワクしながら使ったが、、あんなもんだったっけ?なんもない。つまらんかった。
「帰る時は駅馬車で帰ろうな、、門は、つまらん」
と泉さんも同じだったようだ。
で、
将軍様。
「頼むよ、助けてくれよ、、、もうわけわからん、、」
泣きそうな将軍様。一体誰が?!!事件だ!!
一通りを泣き顔な将軍と執事に聞いた。
ついでに福田さんにも話を聞いたら知っていて、しかもちゃんと理解しており、
「んじゃ、なんでアドバイスとかしてあげなかったのか?」
と訊くと、、、いいにくそうに、、、、訊かれなかったので、、そこまで気が付きませんでした、、と。
泉さんは、憮然とするより、唖然としてしまった。
後で他の側近たちに言って、もすこし教育してもらわんと、、と思った。
「んじゃ、今から小館に行きましょう。これから将軍様の離宮に住みます。お仕事は全て向こうでしてください。あれ?宰相は??」
「彼はいまちょっとこっちに居なくってな、、だから、、、抑える者がいなくって好き放題なんだよあいつら、、シクシクシク」
かなりできる人みたいだからなー、、
宰相は、外交する国一挙に増えたから、一国一国を丁寧にまわっていた。一番最初にうまくやっておくのが重要。
それを知ったら、東の国で友好国を作らなくて(ろくでもないとこなので)よかった、と思ったことだろう。東の大陸の国々がまともでそこでも交誼を結んだら、もう宰相一生外国まわりに近いことに。
執事だけを連れて小館に居を移した。
もちろん華子達には言っていない。
「将軍様はお仕事で少しの間国外にでております」と、言うようにしておいた。
「なんじゃ、こんなんでよかったのか、、、負け戦から遠ざかっていたので肝心なことを忘れていたようだ、、」
と将軍。
門でもよかったのだが、泉さんが馬車でいきたいつーんで、将軍も久しぶりに、と馬車で王都を出た。
今回は爆走せず、小気味よい振動が出る程度の速さで、途中数泊して小館に向かう。
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